第24話 名刺代わりに
会議室を出たタイミングで、
「よろしければ、こちらの展示ブースをご覧になっていってください
終わりましたら受付の者に声をかけていただければと思いますので」
と飯塚マネージャーに案内される
「ありがとうございます!
ぜひ見させていただきますね!」
オレと課長は展示ブースに入って見学をしていく、今まで販売してきたグッズが時系列順に並んでいたり、
所属VTuberのデビュー年表なんかが飾られている
「あ、新井くん、ちょっと緊張しすぎて、、トイレ、
先に出てるから、ゆっくり見てていいよ、、」
「あ、わかりました」
いいながら課長はそそくさと出ていった
そっか、そうだよな、課長も緊張するよな
夢みたいなことだもんな
オレはボーっと展示品を眺めていた
ちょんちょんと肩を触られる
「キミぃ、ファンのくせに会社に入るなんて、ダ・メ・だ・ぞ⭐︎」
「えっ!?
いや!私は打ち合わせで!!」
あわてて振り返る
「やっほ⭐︎」
ひまちゃんがそこにいた
ニヒヒといたずらっぽい笑みを浮かべている
「ひまちゃん!?
どうしてここに!?
あぁ!いや、ディメコネ本社なんだから、いるのはあたりまえか!?」
「シー!
バレたらマズいから!」
ひまちゃんに人差し指を立てて注意される
「あ、ご、ごめん
で、でもなんで?」
「いやー?今日たまたまサイン書くのに会社に来てたから?
もしかして、キミがくるかなー?
って思って」
「そ、そうなんだ」
「打合せどうだった?」
「うん、オレができることは全部やったと思うよ
あとは、ディメコネの上の人がどう判断するかだね」
「そっかそっか
お疲れ様でした」
「うん、ありがとう」
「あっ!キミの名刺ちょうだいよ!」
「え?もちろんいいけど、、」
いいながら、名刺入れを取り出して、ひまちゃんに渡す
「あ、
夢味製菓の新井と申します」
いつもの調子でかしこまって、名刺を渡す
「あはは
お仕事のときってそんな感じなんだね!
なんかおもしろ〜い」
ひまちゃんは嬉しそうに名刺を受け取る
「あっ!
名刺って交換するものだよね!
でも、ひま、持ってないんだよなぁ、、
、、ちょっと待ってて!!」
たたたっと小走りで走っていく
すぐに戻ってきた
「これ、さっき練習のために使ったサインのやつだけど
花咲ひまわりと申します♪
よろしくお願いします♪」
なんだか、楽しそうにカードを渡してくれる
なんだろう
受け取るとそれはヴァイスシュヴァルツのサイン入りカードだった
すでに発売済みのノーマルカードであったが、そこにひまちゃんの直筆サインが入っている
「こ、こここ、こんな貴重なものダメだよ!」
「いらないの??」
しゅんと悲しい顔をする
「いります!!」
「はい、どうぞ♪」
「あっ、、」
またこのパターンでやられてしまった
「来月、またコラボカードが出るから、いまサイン書いてるんだー」
「そ、そうなんだ
ちょ、ちょっと待って」
オレはカバンから手帳を取り出し、カードを大事にそこに挟んでしまった
「大事にするように!」
「うん!帰ったら祭壇に飾るから!」
「あははっ
オタクだなぁー」
「そ、そうだね
はは」
「、、一応言っておくけど、悪い意味じゃないよ?」
「うん、大丈夫、わかってる」
「なら、よし!」
「ひま先輩?なにしてるんですか?」
「あっ!ことちゃん!?
えへへ、バレちゃった」
「はぁ、そういうことですか
今日打合せだったんですね」
「うん
お邪魔してます」
「どうだったんですか?」
「一応、前向きに考えてくれるって」
「そうですか
もしコラボになったらよろしくお願いします
ひま先輩、そろそろ戻らないとマネージャーさんにバレますよ」
「え!それはマズいよ!
ことちゃん、教えてくれてありがと!
それじゃ、またね!」
「うん!またね!」
ひまちゃんが手を振りながら駆けていくので、オレも手を振りかえす
こと様はまだ残っていた
「、、、
私も名刺もらっていいですか?」
「え?もちろんいいですけど、、」
オレは、こと様に名刺を渡す
アレ?ひまちゃんに渡したの見られてたんだっけ?
「じゃあ、これ、、」
そういって、こと様は片手でカードを渡してくれる
「えっ!?
こと様もくれるんですか!」
こと様のノーマルカード、サイン入りである
「しー!
おじさん!静かに!」
「ご、ごめんなさい
えっと、家宝にします」
「もういいですから、、
ほら!いってください!」
「うん、それじゃあ、ありがとうございます」
オレはこと様に見送られてディメコネ本社の扉を出た
「、、ちゅぱっ
ふ〜ん、あれがひま先輩と、ことのねぇ〜」
・
・
・
「おっ!新井くん!楽しんできたようだね!
帰ろうか!」
「あ、はい、お待たせしてすみません」
「いいよいいよ!
気持ちはよくわかるからね!」
さっきまで緊張でぶるってた課長だが、すっかり元気になっていた
すみません、課長
課長のこと、忘れてました
と心の中で謝って、オレたちは会社への帰路についた
・
・
・
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夢味製菓株式会社
新井様
お世話になっております。
ディメンションコネクトの二宮です。
先日は、弊社での打合せありがとうございました。
弊社内で貴社とのコラボ企画について検討したところ、技術指導兼ゲーム実況コラボという形で是非受けさせていただきたい、ということになりました。
費用面については、ご提示いただいたものの中から、弊社で動員できる人数に応じて選ばせていただければと存じます。
また具体的な内容につきましては、打合せさせていただければと思いますので、日程調整させていただけるでしょうか。
それでは、返信をお待ちしております。
宜しくお願い致します。
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打合せから1週間後、
ディメコネからコラボ受諾のメールが届いた
オレと課長は大騒ぎして、それはもう大騒ぎして喜んだ
課長は泣いていた
オレもそれにつられて嬉し泣きをした
のんちゃんだけは、冷静だったが、今回ばかりは空気を呼んで、うるさいとは言われなかった
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2章まで読んでいただきありがとうございます。
皆さんの力で本作をアニメ化させてもらえませんか?
できればレビューで応援していただけると嬉しいです。
真心 糸
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