第23話 推しの事務所とコラボ提案
ディメコネ本社前
オレは課長と2人でそこに赴いていた
オレとしては、ひまちゃんにファンレターを渡しに来て以来である
まぁそのときは、中に入れなかったけどね
「そ、それじゃあ、いこうか」
「は、はい」
オレたちはビルの中に足を踏み入れた
中に入り、エレベーターにのる
ディメコネの本社は5階だ
エレベーターを降りて左を向くと、すぐにそこがディメコネ本社だということがわかる
壁の中央にディメコネの社名とロゴ、そしてその周りには、ひまちゃんたち所属するVTuberがずらりと描かれている
「ほ、ほんとに来たんだね、、
入れるのかな?」
「課長、オレたちは仕事に来たんです、、
きっと、大丈夫です」
きっともなにも、アポを取ってきたのだから、入れないわけがない
しかし、1オタクが入ってはいけない神聖な場所に感じていた
きっと結木課長も同じなのだろう
壁の方に近づくと右手に電話機がのった台座と、その隣に扉を見つけることができた
ご来客の方はこちらの受話器をお取りください
と書いてある
カチャリと受話器をとって耳にあてる
トゥルルル
「はい、ディメンションコネクトでございます
お約束のあるお客さまでしょうか?」
「はい、夢味製菓から参りました新井と申します
本日の14時に二宮様とお約束をしており、伺いました」
「承知しました
少々お待ち下さい」
すぐに扉がガチャリと開けられる
「新井様、お待ちしておりました
どうぞお入りください」
「失礼します」
「二宮を呼んでいるところですので、会議室へご案内します」
「はい、お願い致します」
中に入ると、そこは今どきのIT企業という内装であった
なんというか、スマートでオシャレな感じだ
しかし、それよりも、ここがディメコネだと実感させてくれるものがたくさん目に映る
まず、扉をくぐってすぐに、ひまちゃんや、こと様の等身大パネルがズラッと並んでいた
所属している全員分あるだろう
そして、壁には配信画面のスクショがオシャレに埋め込まれていたり、
ところどころに今まで販売してきたグッズが並んでいる
うわぁー!すげー!
と心の中で叫んで静かに受付の人についていった
「こちらでお待ちください」
と会議室へ案内され
すぐに受付の方が2人分のコーヒーを運んできてくれる
「新井くん」
「はい」
「ホントに来ちゃったね」
「はい」
課長も緊張しているようだ
会話もそこそこに会議室の扉が開く、女性が2人入ってきた
「お待たせしました
ディメンションコネクトの二宮です」
「あ!お世話になります!」
オレと課長は立ち上がって挨拶する
「わざわざご足労いただき、ありがとうございました」
「いえいえ!こちらこそお時間をいただきありがとうございます!」
いいながら、みんなして名刺交換だ
二宮さんは事前情報通り、広報担当の方だ
もう1人の方は、なんだか見覚えのあるような?
「花咲ひまわりのマネージャーを担当しております
飯塚と申します」
「よろしくお願いします
新井です」
あ、そうか、ひまちゃんとのトークイベントのとき、タイムキーパーをやっていた女性だ
つまり、、オレが倒れたところを見られているということになる
なんなら、救護室の手配をしてくれたかもしれない
「、、、」
飯塚さんは、少しオレの方を確認したような素振りを見せたが、とくに何も言わなかった
気付いていないのか、
気付かないふりをしてくれているのか、どっちだろうか
名刺交換がおわったら、それぞれ着席する
「改めまして、この度はお時間をいただきありがとうございます」
オレの方から話し出す
「いえいえ、こちらこそ」
「それでは、さっそくですが、このたび弊社からご提案させていただく、コラボ企画について説明させていただいてもよろしいでしょうか?」
まずはコピーしてきた資料を二宮さんと飯塚さんに渡す
「では、1ページ目から〜〜」
オレが、みんなで議論してきた内容をまとめたプレゼンをはじめる
内容はゲームでのコラボ企画についてだ
ゲームの内容はいくか候補があり、それぞれでどのような企画をやるのかを話していく
ただ、問題はここからだ
うちの会社がディメコネにどんなメリットをもたらせるのか
ディメコネとコラボすれば、Kanonの知名度は一気に上がるだろう
しかし、それだけではディメコネ側にメリットがない
なぜならKanonは新人VTuberで、登録者数は数千人だ
コラボしたディメコネのVTuberにはメリットがないのだ
「ここからのご提案は、正直に申しますと、、
正式に決まったことではないのですが、
このコラボをキッカケに、弊社のお菓子のパッケージに御社のVTuberの皆様を起用させていただくなどを私どもでは考えているところです」
「なるほど、ご説明ありがとうございます」
二宮さんが言う
「そうですね
やはり、弊社としても御社とコラボさせていただいた場合の知名度の向上面や単純にお仕事としてお受けさせていただく場合の受注金額の方が実現するかどうかのポイントだと思っております」
「そうですよね
お菓子のパッケージとして店舗に並ぶのなら知名度向上に繋がりますが、
Kanonはまだ新人ですので、ゲーム企画だけではそうはいかない、というのは重々承知しております
そこで、今回考えているのは、
弊社のVTuber企画部門への技術指導という形で、お仕事をお受けできないかと思っております
例えば、動画撮影、編集、企画の作り方、など私どもはまだ素人です
そのため、御社からその点をご指導いただきつつ、Kanonとコラボしていただく、
そういう形をとれば、弊社としてもお仕事としてある程度の費用をお支払いできるかと考えています
こちらが御社から受けていただいた場合の人員の数と拘束時間のリストになります
そして、それぞれで、こちらほどの費用はお支払いできると考えています」
「なるほど、、」
しかし、この提案も通るかどうか怪しいものだ
仕事にしては大した金額ではない、と判断されるかもしれないし
そもそも技術指導なんてやらない、と言われてしまうかもしれない
「弊社はVTuber事務所としては古参の分類に入りますので、技術指導というのは実績もありますし、不可能ではありません
ただ、金額面に関しては社内で議論が必要になりますね
この件については、持ち帰って議論させていただきます」
「わかりました
なにとぞよろしくお願いします」
「ただ、」
と飯塚マネージャーが話し始める
「弊社としては、御社のような老舗お菓子メーカー様との繋がりは大切にしていきたいと考えております
ですので、この件については私の方からも前向きに進めるように上司を説得したいと思っております」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「いえ、実はですね
うちの花咲が以前から御社のお菓子が大好きだと言っていまして、コラボするなら是非受けて欲しいと言われていたんですよ」
ひまちゃんが、、
こんなところでも、助けてくれるなんて、、
オレは目に涙が溜まりそうになるが、グッと堪える
「そ、そうなんですね!
それはとても光栄です!」
「ところで、お二人はVTuberのことはどれくらいご存知なのでしょうか?」
「自分はまだ1年足らずなのですが、御社の花咲さんをずっと推してまして、なのでこの度の仕事は気合を入れて取り組んでいます!」
「そうですか
そうですよね、存じております」
飯塚さんは少し笑っている
あ、やっぱりオレが倒れて運ばれたやつだって気づいてるみたいだ
まぁあんなことになるやつ、ほとんどいないだろうし、印象に残ってるよね
「私は、甘梨さんがデビューしているときから大好きでして!
新井と一緒にこの企画に命をかけて取り組んでます!」
課長は大袈裟なセリフだが、熱意が伝わるように話す
「実は、新井はですね!
Kanonのデビューが決まる前から御社とのコラボを提案しておりまして、
それがきっかけでこの部署の初期メンバーに選ばれたんです!
ですので、今後この企画を受けていただいましたら、次はもっと大きな形でコラボしたいと!
私と新井は考えております!
1社員である私には決定権はありませんが、今後を見据えて!
何卒ご検討いただければと思います!」
「ありがとうございます
お2人の熱意は、とても伝わりました
今回のお話が実現できるように、私どもも尽力させていただきたいと思います
議論の結果は、改めてメールにてご連絡させていただきますね」
二宮さんと飯塚さんは笑顔でそう約束してくれ、会議はそこで終わった
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