第3話 VTuberの中の人

目が覚めたとき、オレは医務室にいた

おしゃべり会のあとオレは倒れたらしい


「はぁぁ〜、、」

ひまちゃんにカッコ悪いとこ見せちゃったなぁ〜、、

まぁべつに普通にしててもダサいんだけどさ〜、、

はぁ〜オレださいなぁ〜、、


「ありがとうございました」


医務室の方にお礼を言い、

帰路につきながら、今日のことを反芻していた


最高のライブ

(徹夜明けでボロボロ、グッズどころかペンライトすら持ってなかったが)


最高のおしゃべり会

(オレ自信は最低だったが)


「、、、まっひまちゃんとしゃべれたし!

ぜんぜん勝ってるし!

まっ!まぁ今日は飲んじゃおうかなっ!」


現実逃避である

ダサい自分を

好きな女の子の前でガチ泣きした自分を

忘れたいのである

「う、うめぇぇ」

やっぱりキンキンに冷えたビールは最高だー!


オレは駅近の屋台みたいな焼き鳥屋でビールをきめていた

屋台みたいなっていうのは、お店の前に透明なビニールが張ってあって歩道にちっちゃい椅子やテーブルが雑多に置かれているからだ

自分はその半分外みたいなスペースで飲んでいた


はぁぁライブも最高で酒も美味いとか最高だな!

そんな調子で4杯、5杯と飲み進めていった

そろそろ6杯目と焼き鳥のおかわりでも頼もうとしていたところ、店の前でざわつく声が聞こえてきた


「ちょ!ちょっと!やめてよ!!」


「あー?なんだー?少しくらいいいじゃねーかよー」


「イヤだって言ってるでしょ!」


、、、もめごとらしい

こわいこわい、東京ってこわいねー、なんでこんなこわい町なんだろうね、東京って


「キモいキモい!」


「この!ふざけんなよ!優しくしてやったら調子のりやがって!」


「ぜんぜん優しくない!キモいだけ!」


、、、す、すごい女性の方ですね、、

火に油ドバドバそそいでますよね?


これ、やばくないか?

チラッとビニールの影から表の様子を覗いてみる


そこには腰あたりまで伸ばした黒髪に前髪の片方を三つ編みをした小さくも大きくもない女の人がいた

三つ編みには黒い地毛以外に白色が入っていて、なかなか人の目をひく見た目をしている


気の強そうな言動のわりに顔は童顔

キモいとか言ってるからギャルっぽい印象も受ける


、、、とりあえずカワイイと思う

いや、ひまちゃんしか勝たんけどね!

一応、一般的にはって話!


お相手、声を荒げているのは身長180くらいの男、なかなか厳つい顔つきをしている

身体はスポーツをやっているのか筋肉質だ

いわゆる体育会系だろう


その後ろに2人、仲間であろう男たちがニヤニヤ様子を伺っている

3人でナンパでもしていたようだ


「もういいから!そこ通して!」


「うるせー!だれが通すか!」


まだやっていた、、まぁだれも止めてないからね、、

だれか止めてくれよ、と思い周りを見渡すと街頭の人達は目を合わせないように、なるべく遠くを歩いて素通りしていく

あと、何人か興味深げに遠巻きに見学しているような状況だ


はぁやれやれだな

日本人は事なかれ主義でいかん、いかんなー


、、、ビール飲むか


「ちょっとコッチこい!」


「いたっ!手つかまないでよ!」


、、、やばくないか?


「いやだ!こわいこわい!なにもわるいことしてないのに!

なんでこんなことになるんだよー!」


いや、あなたもけっこう言うてましたよ?


「だれかたすけて!たすけてよ!」


、、うん、だれか助けてくれるよ、だれかね、、


「、、、さいあく、こわい、、だれもたすけてくれない、、ぐすっ」


、、、


「あ?なんだこいつ?急に大人しくなったじゃん?」


「なー、ゆーくん、さすがにマズイで、もう飲み直そーや」


「いや?まぁそれでもいいけど、、」


「おおお、おい!

その辺にしといたらどうですかい!?」


「あ?」


「えっ、、」


やってしまった、飲んで気が強くなっていたとはいえ、絶対に勝てないメンツの前に出てきてしまった

ちなみにボクちんの戦闘力は3、ゴミである


「なんだおまえ?

この女の知り合いか?」


「いや?そうではないですが?その?困っているようですし?その方が?」


「なんだ、こいつ、イラつくな」

そう言いながら男は女性から手を離す

そしてボクちんの前に歩いてきた


「やろうってのか?」


「いやーー???そんなつもりは毛頭ないのですが???

なんていうか?男がよってたかって女の人を脅迫するのはダサいというか?

やめた方がいいと思って?」


「脅迫だぁー?

そんなことしてねーよなー?」


「あー、、まぁさすがにそこまではしてないよね(ニヤニヤ」

取り巻きの男たちは面白そうに眺めていた


なんでこんなところに出てきてしまったんだろう

そうきっかけは些細なことだ


だれもたすけてくれないなんてことはないよ、一日一善、みんなに元気をわけてたら自分にもかえってくるんだよ

ひまはそう思ってがんばってるよ


オレの天使がそう言っていたからだ

だから、だれもたすけてくれない、という女性のつぶやきに身体が動いてしまった


「いや??まぁ??

さすがにそこまではしてなかったような??気がしますが、まぁこの辺にしときませんか?

えと、一日一善、いいことをしてたらきっとイイこともありますよ!

ナンパもうまくいきます!!」


「あっ、、」

そう呟く声が聞こえて目線を動かすと、なぜか先程までわめいていた女性と目が合った

目に涙をためながら、驚いたような、うれしいような?いわゆるキラキラしたような目をオレに向けていた


なんで?


「んー?ナンパー?おまえオレのことバカにしてる?」


「え!?いや??」


「バカにしてんな!とりあえず1発いっとくか!」


「おぉ!?」


「はい!いきますよー!

ドーン!」


そしてオレの人生は終了した



目が覚めたら焼き鳥屋の畳の上にいた

短時間で”目が覚めたら案件”を2回もこなしてしまったオレはなかなかに優秀なのではないだろうか?

なにが?


「おぉにぃちゃん、めぇ覚めたか

もう店は閉めたが、落ち着くまでゆっくりしていきな

にぃちゃん、よえぇくせに度胸はあってたいしたもんだ!」


「は、はぁ?ありがとうございます?」

焼き鳥屋の店長らしき人物がそう声をかけて厨房に消えていった


「あの、、」


「はい?」

声をかけられ、自分のすぐ横に女の人が座っていることに気づく

女の子座りをしていた


「あ、さっきの、、」


「はい、さきほどはたすけていただいて、ありがとうございます」


急に礼儀正しくなっていて違和感しかなかった

キモいキモい騒いでいた人物だとは思えない


「あ、、いやいや、自分が勝手にやったことですし!

ぜんぜん大丈夫です!

てか、なんにもしてないですし!」


「そんなことないです!

すごくこわかったけど、あなたがたすけてくれて、すごく、すっごく安心しました!

えへへ」


えへへとか言うな


「あぁ!いやいや、そういってもらえるならもう!

というか、あなたもあんなやつらにキモいとか連発したらダメっすよ!?」

唐突な、えへへ攻撃に説教をしてしまう

オタクにカワイイを与えてはダメなのだ


「うん、そうだよね、、

ちょっとわたしも酔ってて調子のってたんだー」


そういうとその子はフラフラしだした

唐突に酔いの限界がきたらしい


「わっ!」

咄嗟にたおれそうになるその子の両肩を抑える

女性がこんな近くにいるなんてはじめてで、はじめてで、、いい匂いが、、

しない、、酒のにおいしかしない、、


「おぉ!?酒くさっ!」


「あぁーん?」


そうすると、その子はすわった目をオレに向けてこう言った

いつもリスナーに煽られてクサイって言われたときのあのセリフを


「乙女にたいしてくさいだってぇ??

こいつぅは大事件ですよ!みんなぁ!」



「、、、ひまちゃん?」

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