・
「無理です」
誰が聞いても見事なまでの即答。第一、ド素人にそんな大役務まる訳ない。
潜入捜査で解決したなんて話を聞くのは、ドラマの世界だけだ。
「じゃあ謝礼金50万」
「50!?詐欺師!!」
「かもね」
酔っ払って介抱してくれたからいい人だと思ったのに、とんでもない詐欺師に引っかかっていたのか私は。
50万円か潜入捜査か。無職の私からしたら一択。
「‥‥します、潜入捜査」
一瞬で意見が変わった絶望的な私を見てニヤッと笑った金髪詐欺師は、目の引く大きな机の引き出しから何かを取り出した。
「
探偵とわかった瞬間、アンテーク調のインテリアが段々と男鹿龍弥に馴染んでくる。
「
「無職は都合がいい」
人の不幸を馬鹿にしているというよりは、本当に喜んでいるように見えた。
確かに長期に渡る潜入捜査なら無職の方が都合がいいかもしれない。
でも、今住んでいる場所の家賃は?光熱費は?住民税とか、保険料とか。
考えただけで頭痛くなる。
「黒川は今日からここの正社員として働いてもらうことになる。月給は20万。衣食住は潜入場所で賄えるから問題ない」
新卒すぐに辞めて正社員で雇ってくれるところなんて、どこでも縋るしかない!
生活できるところに潜入するなら、全然足りるお金。
これから増える貯金額を頭で計算していると、机を挟んだ反対側のソファに腰をかけた男鹿さんが真っ直ぐに目を合わせてきた。
「俺の妹を殺したやつを見つけてほしい」
「え?」
目の前の机に並べられた4人の写真。一枚は、確か同期が待ち受けにしていた気がする。
左上には名前が書いてある付箋が貼られていた。
「
無意識に神楽 日向の写真を片手に持ったまま、他の住居者の写真にも目を通す。
この中の一人が犯人。
殺人者と一つ屋根の下なんて怖すぎるけど、お金がなくて餓死しても変わらないか。
「潜入期間は半年。報酬は1億」
「1億!?」
金に目が眩んだことは黙っておく。
たった半年。
容疑者が絞られているなら大丈夫なはず。
「ただ一点、問題が‥‥」
その問題のせいで、
私は今、男装姿で潜入先の豪邸の前に立っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます