第42話 ミドレム2
そしてそんな中ユウナは苦戦していた。
「はあはあ」
流石にきつく、やはりこちらが押されている。おそらくユウナが完成体じゃなかったらもっと前にやられていたであろう。そしてそんな完成体であるユウナにとってももういろいろときつかった。
もう倒れようかと何度思ったが、だが、ミコトを助けたい、組織をつぶしたい。その思いに勝るものはなかった。そんな中ユウナはウェルツのことに気づいた、向こうで一人倒れているウェルツを。
酷いことに存在を忘れていた。だが、ウェルツを起こせば何とかなる。その思いでウェルツのもとへと走っていく。
「ウェルツさん! ウェルツさん!」
ユウナはウェルツを起こそうとするが、反応はない、そんなことをしているうちに「そんなことをしている暇があるんですか?」と、ミドレムは言って炎の弾をユウナたちに向けようとする。
まずい! ユウナはそう思った。早くウェルツさんを回復させないと。だが、ユウナに残っている魔力はわずか、これを渡せばユウナは本当に倒れてしまう。それは嫌だ。だが、もう迷ってる暇はない。ウェルツに回復魔法をかけ、そのままユウナはその場で倒れた。
「さて……」
隣で倒れているユウナを見てウェルツは状況を呑み込んだ。そして、剣を構え、ミドレムの方へと剣を向ける。
「次の相手はあなたですか。でもその体で私に勝てますかね?」
「勝てるさ。ユウナが与えてくれたこの力があるからな」
と、炎で剣を纏い、そのまま斬りに行く。
「力任せの剣じゃあ私には勝てませんよ」
と、ミドレムは魔法の剣を生み出し、ウェルツの剣に合わせながら戦っていく。
「お前はユウナに対して魔力が切れた状態で勝てるわけがないと言っていたが、今はそっちが魔力切れそうなんだろ。つまり俺たちが勝つんだ!」
「なるほど。ですが、あなたは先ほどミアの攻撃を食らい、瀕死の状態になった。そこから回復したとてと言う話です」
「だが、お前の魔法の記憶はユウナの魔法を伝って俺の中に流れている。さっきまでの俺と同じだと思うなよ」
そしてウェルツは剣で魔法の剣を斬りながら進み、ミドレムの方へと進んで行く。そんな中ミドレムが「ヘルブレイズ」と言って、大きな炎がウェルツの方へと飛んできた。
ウェルツは避けるも、肩が軽く焼けた。
「っいた」
「あなたごときが勝てるわけないでしょうか。諦めなさい」
「だが! ユウナの意思を無駄にするわけがない!」
と、ウェルツは剣をつかんで向かってく。
「何回も無駄なことを!!! 死になさい」
再び、巨大な球が作られると思ったが、その瞬間ミドレムに炎の弾が直撃した。そこにいたのはもう意識を失ったと、ウェルツとミドレムの両名から思われていた、ユウナだった。
そしてそのすきにウェルツはミドレムの方に走り出し、その腹を剣で貫いた。
ミドレム。彼は貴族の出で、その中で彼は一目置かれた存在だった。
だが、それが変わったのはある日、彼が剣などくだらないと思った時の事だった。彼はそこから男としては苦手であるはずの魔法の練習を始めた。当然彼の家族はそれに対して文句を言い、剣の道に戻そうとした。
だが、彼はいう事を聞かなかった。そのため彼は家出をし、そのままギルドに入ろうとしたが、どこも彼を認めてはくれなかった。
そのため彼は魔法を使える場所がなく、その魔法の術を存分に発揮するには犯罪を犯すほかなかった。その魔法で金貸し屋を襲い、金を奪った。
魔法を使い、自分の力を示すために兵士たちを襲うこともあった。だが、誰も彼を認めてくれないことが悔しくて、悶々とした日を過ごしていた時の事、彼の前にある男が現れた。
「我々と共に世界を変えてみないか?」と言われた。それと同じく「君は特異な存在なのに認められていない。私から見たら君は女性同様の魔法の才能があるというのに。そこでどうだ、我々の組織でその魔法を存分に使うというのは」
そう言われた時に彼はここだ! ここしかないと思った、そしてすぐにそれを承諾し、組織のために力を注いだ。そして、いつの間にか重要な支部を任せられるようになった。そして完成体を奪われたという知らせを聞い三日後にミアを完成体へとした。これですべてを手に入れたはずだった。今彼は腹を剣で刺され、意識を落とした。ようやく自分の居場所を見つけられたというのに……
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