第34話 アーノルド2
「これでひとまず大丈夫かなっと」
その光景を見てユウナはそう言ったが、その反動もかなりのものだった。
ユウナの体力がつきたのだ。
「やばいよ……ウェルツさんもうしんどい」
「言わんこっちゃない。ゆっくりと休め。敵が来たら教えてやるから」
「うん」
ユウナの魔法で戦意消失したのだろうか、そのまま敵の襲撃がないまま夜が過ぎた。
だが、本当のことを言えばアーノルドが対多数の敵を殺したからという事もあるが。
「もうこれでだいぶこっち優勢だね」
「それどころか、あの人が他の敵もみな、倒してくれたみたいだ」
「すご。じゃあ本当に勝ちじゃん」
「だから今日は本詰め、敵の本陣を攻撃だ。と入っってももうほとんど敵はいない。後二人倒したら終わりみたいなものだ」
「ふーん」
「という訳で行くぞ」
「まだ体回復しきってないんだけどなあ」
と、ユウナは足に力を入れ、何とか立ち上がる。
「まあ、お前はここ最近大分魔力使ってたしなあ。この三日の小競り合いで回復した魔力を昨日の夜に使い切ったんだろ。そりゃあしんどいわ」
「でも、あと少しで行けるよね」
「ああ、もう終わりだ」
「うん」
二人は意気揚々と戦場に向かう。
「今日はほとんどこの戦闘を見てるだけでいいんだよね」
「そのはずだ。そもそも今日はほとんど大将戦のはずだからな」
「皆のもの! 今日はもう大将首を取りに行くのみだ。アーノルド様を援護し、敵の大将ルウェス ダーリーの首を取るのだ。わかったな!」
「おー!」
そのまま戦闘が始まった。とはいえ、ユウナはもう魔力残量が半分以下と言うこともあり、あまり無茶は出来ない。だが、元々ユウナは魔力が多いということもあり、自己防衛程度ならできるのだ。
「うおお!」
早速両軍がぶつかり合う。その中ユウナは炎の剣を生み出し、それで身体強化と、剣の強化の身に魔力を使い、敵をばっさばっさと切り殺していく。これでも魔力は使うが、まだ魔法を全力で放つよりはましだ。
ウェルツはそんなユウナの背中を守り、ユウナの背後にいる敵を斬っていく。
「なんかいいよね、こういうのさ」
「ああ、だが、今は戦争中だ。喋るのに体力を使うなよ」
「はーい」
二人はどんどん切り倒していく。敵の強者たちはみなアーノルドが殺したということもあり、そこまで強いやつは残っていない。そのため、勢いはこちらの方がはるかに上だ。
そして、二人がその場で敵の兵士を迎え撃ってる最中にルベン、レナード、アーノルド、そしてアーノルドの部下たちが、破竹の勢いで敵陣を破っていく。中でも一番勢いがあるのはアーノルドだ。触れてくる敵は全て切り伏せていく。秒に五人程度の勢いで斬っていく。その姿はまるで修羅だ。
「ここまでこられるとはな、だが、大将首とらせてもらうぞ!」
と、側近の男が、アーノルドの首を狙い剣をふるう。
「まさかこの俺が君程度の攻撃でやられるとでも思ったのかな? 甘すぎるね」
剣をがっしりと受け止め、すばやく首へと剣を流し、そのまま首を斬る。
「さて、今のが君の側近? 弱すぎるよ。もっと優秀な部下を持たないとさあ」
「……」
敵の大将……ルウェス ダーリーはその言葉を位に関せず、そのままその場に立つ。
「乗らないかー。面白くないなあ。仕方ない……」
アーノルドは息を吸い込み……
「首洗って待っててね。この天才の俺の襲来を!」
と、ルウェスに聞こえるように大声で言う。
「さて、今はこの大軍をいかに早く殺せるかだなあ。俺としてはさっさと緊張するようなことしたくはないんだがな」
再び剣でどんどんと敵の兵士の命を刈り取ってゆく。
「今だー!」
と、その時声がした。アーノルドがその声を聴いた途端、魔法の総攻撃が来た。重さ一トンはありそうな岩や、炎の弾、氷の塊、大量の泥。様々なものが振ってくる。
「へー、やるじゃん!」
と、上に剣を振り回して、そこから、円状に炎を生み出す。
「男にはねえ、男なりの魔法の使い方と言うものがあるんだよ!」
男それは元来所持している魔力量が少ないものだ。だが、別に器用さで劣っているわけではない。
「この、スピード、これに合わせて魔法を打てば、少しの魔力で凄まじい威力になるんだよ!」
と、炎で空を展開し、様々な上からの攻撃全てが消されていく。
「君たちの攻撃無駄に終わっちゃったね。さあ、さっさと首を渡してくれ。時間がもったいない」
「奴を殺せー!」
ルウェスは立ち上がり、自ら兵を率い、そのままアーノルドの方へと向かい、剣を向ける。
「ここで決着をつけよう」
「いいね!」
と、剣をふるい二人の男が向かい合う。
「行くよ!」
と、アーノルドは剣をルウェスの斜め上に構え、そのまま振り落とし、ルウェスはその剣を剣で受け止める。
そして、アーノルドは、すぐさま、炎の魔法を切り裂いて、そのままルウェスに斬りかかる。ルウェスは剣でそれを受けるが、アーノルドはその瞬間に三撃剣で剣を叩き、そのままルウェスは剣を手から落とす。
そのすきをついて、アーノルドは剣を振りかぶりルウェスの頭を剣で切り伏せようとするが、ルウェスはぎりぎりのところで、落ちかけていた剣を手でつかみなおし、アーノルドの一撃を剣で防ぐ。そして、空いた方の手でアーノルドに向けて炎をぶつけようとするが、アーノルドは、頭を右に避け、その炎をよけた。
「やるな」
「うん。君も! だけど、足りないね。俺を満足させるにはね!」
アーノルドの剣のスピードが上がり、ルウェスはそれを受けるので精いっぱいとなる。だが、アーノルドは甘くはない。そのまま剣のスピードを上げまくる。ルウェスが追い付けないように、ルウェスを殺せるように。
「それで精いっぱいかい? ルウェス君?」
「……」
「答える暇もないのかい? 残念だねえ、剣でやりあっている間の会話も楽しいものだよ」
「……うるさい!」
「ははははははははは!!!!」
と、アーノルドの狂気はどんどん上がっていき、ルウェスはその顔を見て……、「きついなこれは」と一言呟いた。だが、それは聞こえてない、ルウェスを力でねじ伏せようとするのに集中しているアーノルドには。
「さあ……そろそろだ! そろそろ終わりにしようか。いつまでも止めを刺さないのも君に悪いしねえ!」
「くそ!」
「さあ、終わりだああああああああ!」
と、ルウェスの頭の上から大ぶりで剣を振り落とした。ルウェスはそのスピードに追い付けず、そのまま顔が真っ二つに斬られ、先端が二つに割れ、そこから血が大量に出る。
「首がいるんだっけ? 次は君の首が欲しいよ」
「……」
鼻と口を押えるルウェスはただ、その首を切り裂こうとするその剣が自分の首を切り裂くのをただ、見ることしかできない。
「首を取ったぞおおおおお!!!」
これにより、この地での戦いもこちらの勝ちとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます