第33話 アーノルド
そして三日後。
「全然膠着状態解かれないじゃん。流石に暇。既に一〇年私の人生無駄にしてるのにー」
「それはすまん」
「謝って欲しい訳じゃないけど……でも、こんな戦場で一週間近くは普通に心こたえる」
心が休まるヒマがない.常に神経を張り詰める戦場はユウナの精神をだんだんと削っていっているのだ。
「それがお前の選択だから仕方ないな」
「まあ、そうだけど……」
確かに戦争に行く選択をしたのはユウナだ。否定出来ない。
「さて、今日も早く寝ないか?」
「そうだね。もう疲れた」
「組織にいるときは滅多に寝ないかと言う問いにハイって答えることは無かったのになあ」
「それは当たり前じゃない」
「そうだな。俺が悪かった」
「!」
ユウナはウェルツをはたく。
「何をするんだ」
「だって、度を過ぎた謝罪はうざいだけだよ」
「そうなのか?」
「うん。だからあまり気に病むこともないよ。まあ私は何とかして失われし十年を取り戻すだけだから」
「やっぱりお前は大人だな」
「そんなことないよ。ただ、他人より痛みや絶望を味わってるだけ。さあ寝ようよ。明日のための英気を養うために」
「そうだな」
そして二人は眠りに落ちる。
「敵襲だ!」
「え?」
今はお月様が出てる。つまり深夜だ。
「どういうこと?」
「おそらく夜襲だろう。動きがないと思ったらこういう事だったという訳だな」
「どうしよう……」
「迎え撃つだけだ」
夜襲にもデメリットはある。攻撃が失敗すると、逆に反撃で壊滅することもあるということだ。
別に暗いから戦いにくいのはこちらだけではないのだ。
「じゃあ……戦うしかないよね」
ユウナは点に炎の弾を浮かし、光を作る。
「別に維持はたいして魔力は食わないからね」
ウェルツがユウナの照らした炎により光を取り戻し、敵を一人ずつ切っていく。そしてその裏でユウナも上手く炎の弾をぶつけながら、少しずつ敵の兵士を捌いていく。しかし……
「なかなか減らないじゃん」
敵が多すぎる。倒しても倒してもどんどんと出てくる。
「もう、大きな魔法をぶつけちゃっていいかな?」
「だめだ!」
ウェルツはユウナを止める。と言うのも、ここでユウナの魔力を大量消費させてしまうと、あとが大変だ。
今、ルベンもレナードも回復はしているが、別のところで寝ている。そんな中総攻撃を食らったら大変なことになる。
元々魔導士と剣士の寝床は違うところに設置してある。つまりここにいる魔導士は本当にユウナ人理である。
ユウナは今貴重な戦力だ。ウェルツとしては本当はユウナには魔力を使ってほしくはない。
「うおおおお!」
だが、その間にも敵の兵士が勢いを持って向かってくる。これでは、ユウナの力があっても守れそうにはない。
「誰かいないのか?」
看守は叫ぶ。レナード、ルベンは別の位置にいる。その助けも望めなさそうだ。
ここにはユウナと看守くらいしかまともに戦える兵士はいなさそうだった。
「シャインブーストルーア!」
と、声がする。その瞬間に光の光線が来る。
「これは……」
看守はぎりぎりで何とか攻撃を防ぐが、皮膚が焼き切れる。
「っいた」
ウェルツは一瞬倒れこむ。ウェルツにはその攻撃主がすぐに分かった。エメリンだ。
そしてウェルツは起き上がろうとするが、
そのすきを見逃してくれるほどエメリンは甘くはない。
「シャインルーア!」
すぐさま次の攻撃が来る。
「サンダーヘッドルース」
と、ユウナが間一髪のところで雷撃で光の光線を消し去る。
「ありがとう」
と、ウェルツは軽く感謝を述べる。
「これが……戦場だね」
と、ユウナも汗を流しながら、エメリン相手に手を掲げる。
「前は私がぼろ勝ちしたわね。二人で私に勝てるのかしら」
「やってみなきゃわからないじゃない」
「無駄よ。前は二人しかも主力クラスの人たちが加わって引き分けだったのよ。あなたに勝てるわけがないじゃない」
「私は……負けない! フレイムメルストリーム!」
炎の渦がエメリンの方へと向かう。
「無駄よ! アクアボーリー」
水の砲撃が炎を蒸発させる。
「スモッグボム」
ユウナは煙を爆発させる。
「まさか、私が何の対策もしてないと思うの? 水蒸気があるなら使わないと無駄じゃん」
「むう。だがそれがどうした!」
と エメリンの体から光が漏れだしてくる。
「これでもくらえ」
光が全方位に放たれる。
「おい!」
「うん!」
ユウナはバリアを張る。だが、攻撃を防ぐので精いっぱいだ。
「ぐううう」
バリアにひびが入る。ユウナは必死に耐えようとするが、無情にもバリアがはじけてしまう。
「うわあああ」
ユウナとウェルツはその攻撃ではじけ飛ぶ。
「これであなたたちは万策尽きたかな? ファイヤートリプルストリーム」
エメリンがそう言うと、三つの炎の渦がユウナたちを襲う。
「負けない! ウォーターボーラー」
ユウナは水を生み出しぶつける。しかし……
「きゃああ」
防ぎきれない。
(どうすれば?)
ユウナは焦る。
(もうだめだ)
と、そう思った時……
「エクストリームボルト」
と、声がした。そしてユウナが振り向く。するとそこには年齢は二〇代後半だと思われる美男子が立っていた。
「あなたは?」
ユウナが訊く。
「俺か? 何者だっていいだろ。まずはこいつの排除じゃあないのか?」
その言葉を聞き、ユウナは確かにと思い、エメリンへと再び照準をかが蹴る。
「助っ人登場ね。でも無駄よ。あの時と違ってあなたたちを吹き飛ばせるほどの魔力はあるわ! フレイムトリプルストリーム!」
先ほどよりも強大な炎が襲ってくる。
「まさかこの俺を前にして逃げないとは。やるね。だが、俺は君の思い通りにはならない」
と、炎をまとった剣で炎の渦目掛け一気に振る。すると、炎の渦は一気に一刀両断に断ち切られた。
「なんでよ?」
「まいったよ、たまたまここに来たらまさかこんな状況になっているとは。本当に来て正解だったよ。本当に俺の勘は当たるからな」
と、言って彼は頭をさすった。
「だが、ここに時間をかけるわけには行かないんだ。他にも襲われているところもある。悪いね、すぐに終わらせるよ」
と、剣を持って再びエメリンの方へと走っていく。
「なめるなあああああ、ライトボーリー!」
と男目掛けて何十もの光の閃光を放った。
「そんなので俺を止められると思ったかな?」
と、男は剣をフル回転させ、エメリンの前へと迫る。
「そんな、いえ、まだよ! ファイヤーメルストリーム!」
と、ゼロ距離で放つ。
「まさかそんなリスクを冒して近づいているとでも?」
と、炎が直撃した直後に、エメリンの背後に立って話した。
「まさか? 幻影?」
「イエス!」
そのまま男はエメリンの腹に剣をぶっさし、そのままエメリンの口から血がドバドバと流れ出す。
「まさか私がこんなところで……」
「ああ、終わりだよ!」
男は剣を引っ込め、さらにエメリンのおなかから血が流れだし、そのままエメリンは地面へと倒れこむ。
「人生お疲れ様」
エメリンをもう一刺ししてから、首を斬り、そしてそのままその首をもって、ユウナたちのもとへと歩いていく。
エメリン、彼女は天才だった。赤ちゃんの時から魔法を浮かすことが出来たほどの逸材だった。その成長スピードは衰えず、一二歳になる頃にはもう十全に魔法を扱う事が出来ていた。しかし、それがおかしくなったのは一四歳あたりからだった。それから魔法が伸びなくなっていた。もうすでに強かったが、元々一〇〇〇年に一人の逸材なんて言われてた彼女やその周りの人は面白く思わなかった。
エメリンはそれから必死に周りの評価を覆そうと魔法を練習してきた。一日何時間も。
そんなある日、エメリンは鬱になった。もう魔法を使うのが怖く奈tぅた。そのせいで魔法を放てなく奈tぅてしまった。
エメリンは自分の得意分野が奪われたのがショックで何も手がつかなくなってしまった。そんな時に彼女を救ったのが、マルセンだった。彼はエメリンを外に連れ出したのだ。
曰く、彼はエメリンが暗い表情なのが許せなかったのだ。その当時からマルセンはかなりの実力者となっていた。軍でも武功を得始め、出世街道を上っていた最中だった。
そんな彼はエメリンと一緒に山に行った。
それだけではエメリンの精神状態は治らなかtぅたが、マルセンが毎日エメリンのもとに通うにつれて、エメリンの表情は次第に明るくなった。
それからは早かった。エメリンは再び魔法を得て、さらに魔法が伸び続けた。そんな時にイングリティアとの戦争が始まった。エメリンは早速この新しい力を使って、衛星を得たいという事で戦争に参加したのだった。
「はい、これが君たちが欲しかったものだよね。あげるよ」
「ちょっと待ってくれ、あなたは何者なんだ?」
「俺? 俺は通りすがりの軍人さ」
それはわかっていると、ウェルツは口に出しかけた。だか、その前に……その顔が見覚えのあるということに気づき……
「なぜここにいるんだ。三番隊隊長殿」
「俺がその人と言うことは内緒だよ。そもそも俺がここにいること自体おかしいからね。じゃあ俺はもう行くよ。また会う機会があったらその時にでも」
と言って、その場から去って行った。
「ねえ、超強くなかった?」
「ああ」
「てか三番隊隊長とか言ってなかった?」
「ああ、彼はアーノルド ケルン。実力ではこの国の一番隊長に匹敵すると言われている。まだ若いし、この国の未来をとも言われている」
「その人が私たちを助けてくれたんだね」
「ああ。ありがたいことだ」
だが、そこに新手がやってきた。
「そっか、エメリンを倒しただけだもんね」
と、再び、手を向け……
「ウォーターボーラー!」
と、水を放出すし、敵を押しのける。
「なんか敵全然減らないね」
「だな、だが、もう少しの辛抱だ。すでにエメリンがやられた今、敵もここにそこまでの数はかけないだろう。それに俺たちはエメリンの首をもらっている。これがあれば敵の戦意は半分喪失するだろうしな」
だが、敵の猛攻は止まなかった。エメリンの首をかが下れば、それを奪い返そうと、敵はやってくるし、もうどうしようもない状況だ。
「こうなったら!」
と、ユウナは炎の極大な球を生み出し、それをぶつけようとする。
「だめだユウナ、あまり魔力を使うな!」
「そうは言われても、この状況で使わなきゃもう仕留めきれないよ!」
と、地面に投げつける。すると大爆発が起き、ユウナの目の前のあたり一帯が吹き飛んだ。
「これで……」
そして煙が晴れたのち、そこには大量の死骸があった。
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