第30話 エメリン
「ん? あれ?」
「ユウナ気づいたか」
「敵は?」
「倒したよ。お前のおかげだ」
実際ユウナの攻撃のおかげもあり、敵は体力があまり残っていなかったのだ。
「良かったあ」
「そう言えば体は大丈夫か?」
「うん、大丈夫みたい。それに私完成体だから!」
ユウナの体は回復が早い。そのおかげという事もある。
「ああ、そうだな」
「それで今の状況って……」
「今は一時的に戦局が硬直している状態だ。俺たちが敵の側近の一人を倒したからな。だからもう少し休憩しておけ」
「うん、ありがとう」
「ねえ、部隊長であれだったら今回大したことないかもしれないね」
「馬鹿を言うな。奴はsy疎遠部隊長最強、側近ではないんだ」
「でも、それくらいだったら倒せるんじゃないの?」
「だといいんだがな」
ウェルツは怪しむような顔を見せる。その顔によるとまだ楽観視は出来ないらしい。
確かにこちらもマルスと言う人材を失った。つまりほぼ相打ちという形なのだ。
ただ一つユウナに出来るのはただ、戦うだけだ。
「ファイヤーストーム!」
と、戦場の真ん中に火の竜巻を起こす。火の竜巻と言っても熱風が巻き起こるだけだ。ただし、その中には本物の火も入っているけど。要するに高火力の技ということだ。
「うおおおお!」
味方の兵士が、炎の渦によって崩れた敵陣の中に入っていく。
しかし……
「うわああああ」
魔法使いはユウナだけではない、向こうから岩が飛んでくる。
その岩で多くの兵士がつぶされそうになったが、「ウインドカッター!」と、ユウナが飛んできた岩を粉々にして、味方の援護を試みる。
そして防御だけではなく、
「ガンガン行こう!」
と、炎の巨大な球を複数生み出し、敵軍に複数落とす。
「そんなに魔力使って大丈夫なのか・」
「うん。平気!」
とどんどんと炎の弾を放っていく。軽々しく、雪玉を投げるように。
ウェルツにとってはさっきけがしたばかりの人がこんなにも魔力を使っていいのか、と思うがユウナが大丈夫だというのなら大丈夫なのだろう
「流石だな、ユウナ」
「えへへ」
そう照れながら、ユウナは「えい!」ともう一発魔法を放つ。
「ここまでだ!」
その魔法は相殺された。ユウナはその先を見ながら、「だれ?」と問う。
すると、
「私は特級魔導士、エメリン。あなたを止める」
そう言い放った。
「やってみて!」
そう言ってユウナは魔法を放とうとする。そんなユウナを見てウェルツは、「つ。おいユウナ! そいつは本当に危険だ。お前では勝てないぞ」そう言った。
実際エメリンはトップクラスの魔導士で、周辺諸国に名を轟かしている。
実力では先程のメルセンよりもはるかに上、今のユウナに勝てる相手ではない。
「行けるって。私たちさっきの人にも勝ったし」
「そう言う問題じゃねえ」
「行くよ! フレイムバレッド」
と炎の弾丸を飛ばす。
「アクアボーリー」
超高速で水が高回転して炎を消してユウナ目がげて飛んでくる。ユウナは一秒程度考えた後、
「サンダーヘッドルース!」
雷を一直線に放つ。しかし、水は思ったように分解されず、相殺される。
「ライトボーリー!」
と、光がユウナめがけて一瞬で来る。その攻撃をユウナはよけられず、ユウナの肩を突き破る。
「っ痛い!!」
そうユウナは思わず叫んだ。
「まだまだ!!」
エメリンはそう言い、ユウナがその方向を見ると、光の光線がいくつも用意されている。
「フレイムルース!」
と、炎の弾を集約させ。、エメリンに向けて炎の鋭い線状の弾を発射し、貫こうとする。しかし、その一つの光の波動であっさりと消された。まだ残り五つもある。その後、何とか三つはつぶした、ただそれだけだ。
全部は消すことは出来なかった。
そして心臓付近を貫かれ、ユウナはその場に倒れた。
「ユウナ!」
ウェルツはすぐにユウナを抱きかかえる。
「とりあえず君もだよね。私の仲間を殺したのは……私とメルセンは仲が良かったのだ。それを貴様らは!!!!」
エメリンは複数個光の弾を飛ばす。
「くう!」
ウェルツはそれを間一髪で受け止め、そのままエメリンめかげて突撃する。
「無駄よ!」
看守は光線をすべてぎりぎりでいなす。
「やるわね」
「俺はユウナよりも強いからな」
勿論それは強がりだ。本気でやったらユウナに勝てる確率は万が一にもないだろう。
「へー。まあいいや。あなたの運命は死ぬだけだから」
「そうとも限らないぞ」
ウェルツは剣に炎を纏わせる。
「でも、戦場で強いのは剣士じゃなく、魔導士。それは変わらないわ」
そして周りにいた兵士がウェルツの邪魔をしてくる。エメリンの魔法の邪魔をさせないように。
「邪魔だあ!」
「そんなことを言っていてもいいのかしら? あの子に向けて炎を当てるけど」
エメリンの光線の先はユウナに向けられる。
「なに!」
ウェルツはすぐさまユウナの元に戻る。
「それでいいの。まあそれをしている限り、あなたは一生私のもとへはたどり着かないけど」
「それもそうだな」
実際、近くに強い味方はいない。おそらく今日は小競り合いの予定だったのだろう。今日はユウナが指示を聞かないで思い切り攻めたからおかしくなったのだ。
だが、最大の誤算はいきなり、この戦場の副将であるエメリンが来たことだ。
「さて」
時間稼ぎ、それが魔導士に対する対策だ。魔導士は魔力がなくなれば戦えなくなる。つまり持久力勝負だ。
「うおおおおおおおおおおお!」
ウェルツは何とかぎりぎりで相変わらず攻撃をしのぐ。だが、一秒、いや、0.01秒でも遅れたら死だ。
「行くよ! セイグリッドシャインブーストルーア!」
光の巨大な光線が看守目掛けてやってくる。
「やばいなこれは」
ウェルツはユウナを抱えたまま後ろにジャンプして距離を取ろうとする。しかし、光線のスピードに追い付けない。そしてそのまま光線に肩がかすってしまった。
「あ……ああ」
看守の片腕が吹き飛んだ。これはもうだめだ。ウェルツはそう心の底から思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます