金欠パーティー3
脚を組み人差し指の腹と親指で顎を軽く挟んでいる優雅な姿勢のアステリアは、顎から手を離すと人差し指を立てた。
「アタシは鎧と剣の手入れだったり、必要な物買ったりだね。あとは女の子達と遊んだりって感じかな。でもそんなに無駄遣いはしてないよ」
「チッ。あっそ」
その舌打ちには嫉妬やらなにやらといった余りよろしくない感情が押し込まれる程に詰まっていた。
「え? なんでそんなに冷たいの? というか舌打ちしたよね?」
「いや。まぁ実際に一番金残ってるのお前だし。なんか。予想してた答えだったし」
その言葉は棒読みでアステリアを見る目は若干ながら死んでいた。
「シグルズ。アタシにだけ冷たいの酷くない? みんなにはあんなに反応してたのに。もしかして嫌われてる? やばい言ってて泣きそうになってきた」
口に手を当て言葉通り悲し気に双眸を歪ませるアステリア。
だがそんな彼女に対しシグルズは勢いよく立ち上がっては犯人を言い当てるが如く指を差した。
「何が泣きそうだこの野郎! お前ばっかり女の子にチヤホヤされやがって! 羨ましいわ! ズルいわ! 俺の方が泣きそうだわ! なんだ昨日も遊んでたのか? 両側に可愛い女の子を連れて肩で風を切りながらチヤホヤされてたのか?」
鬱憤を一気に放つように捲し立てるそれには、先程の棒読みと打って変わり羨望がぎっちり。
「いや、まぁ誘われたから少しだけ。でも、肩で風切って歩いてはないと思うけど……」
一方でアステリアは余りの勢いに気圧され若干ながら身を引いていた。口元から手を離しその表情にさっきまでの悲感はない。
「うるせー! その間俺が何をしてたか分かるか!」
「分からないけど。何してたの?」
微かに首を横に振りながらアステリアは様子を伺うように尋ねた。
「バイトだよ! ここで皿洗ってたんだよ。うぅぅ」
キッチン方面を指差しつつ自分の口から出た言葉に、改めて記憶が蘇ったシグルズは思わず俯かせた。その双眸には光る泪を浮かばせ今にも泣き出してしまいそう。
「え? そんなにお金ないの?」
「シグルズ無駄遣いはいかんぞ」
「シグ君ウケる。言ってくれれば少しは貸したのに」
「僕も少しでよければゴホッ。貸せたよ」
自分のところのパーティーリーダーがバイトをしていたという真実に全員、多少なりとも一驚に喫していたようだがその反応は様々。
「#%$&……」
そんな彼らに対しシグルズは反論するように何かを言ったが、その声は聞き取れないほど小さかった。
「ごめん。もう一回言って」
代表してアステリアが両手を合わせ聞き返す。
「てめーらの食費なんだよー!」
そんな彼女へ怒りを爆発させるように先程の言葉を繰り返したシグルズ。
「確かに俺は宿代とか食費代を支払う代わりに報酬は多めに貰ってますよ。えぇえぇ。だけどその分を大幅にオーバーするほどの食費がかかってんの! 赤字なんだよ。誰の所為だ? あ? お前とお前だ! バカ野郎!」
指が順に差したのはクロムスとアステリア。
「まずおっさん! 食い過ぎなんだよ! どんだけ食うんだよ。しかも肉ばっかり。どんだけ食うんだよ。お前は胃にはブラックホールでもあるのか? 食ったのがどっかに吸い込まれていくのか? それとも未知の生物でも飼ってんのか? だとしたら新生物として申請してこい! アホんだら!」
「我が筋肉の為にも必要な量だ。本気をだせばもう少しいけるぞ」
怒り狂うシグルズに対しクロムスは何故か自慢げだった。
「ださんでいいわ! そしてお前! アステリア! お前は飲み過ぎだ! 水みたいにがばがば飲みやがって。お前の血液はアルコールか? あぁ? しかもそこそこ食うしよ。更に言えば若干舌が肥えてるのが腹立つ。あと、どこの酒場行っても女の子の店員からサービスされ過ぎなんだよ。終いには他の客のお姉さんが呑みに誘ってくるし。しかも全員美人か可愛いときた。お前なんて(自主規制)」
「昔からお酒は好きで、申し訳ない。でも後半は関係なくない? あと最後のはさすがに酷くない?」
一気に不満をぶちまけたシグルズの息は上がっていた。そしてそのまま倒れるように椅子に座ると頭突きをするようにテーブルへ突っ伏した。
「俺だって色々買いたいのあるし。調べたいことあるし。そもそもハンターパーティーのリーダーがバイトって……」
するとついさっきまでの激情はどこへやら、情緒は下山し始めた。
そんなシグルズにアステリアは椅子ごと近寄った。
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