金欠パーティー2
「もういい。とりあえず俺たちは今、金欠だ。金が無いんだよ。ちなみにお前ら今いくら持ってるんだ?」
まずシグルズが視線で訊いたのはアステリア。
「1,624mn(メディヌ。お金の単位であり1mnは1円)だね」
その答えに細かく頷きながら視線はゴルドへ。
「ゴルドさんは?」
「444mn。ゴホッ」
次はフィリア。
「321mnですよ」
そして最後は残るクロムスへ。
「マイナス1万1,348mn」
「はぁ? 今何て言った?」
あまりにも衝撃的な発言にシグルズは真っ先に自分の耳を疑った。
「マイナス1万1,348mnだ」
だがそれは聞き間違えなどではなかった。聞き間違えであって欲しいと期待を込め聞き返したが返ってきた数字は変わらず、その期待ごと見事に打ち砕かれた。
「いやいや。訳分からねーよ! 何で所持金訊いたらマイナスで答えが返って来るんだよ!?」
「それは借金をしておるからだ」
クロムスは腕を組みながら答えた。当然だと言うようにそれはもう堂々と。
「そんなの分かってんだよ! なんで借金してんだって聞いてんの」
「実は先日、この町のジムでトレーニングをしておったのだが勢いあまって器具を壊してしまってな。その弁償代だ。わっはっは!!」
そんな陽気で豪快な笑い声の中、シグルズは一人頭を抱えていた。
「何でこのおっさんこんなに楽しそうなんだよ……」
だがクロムスに何を言っても無駄だとすぐ強引に気持ちを切り替え顔を上げる。
「分かった。もういい。よくなけど! もういい。――いいか。俺たちは基本的に報酬は山分けしている。まぁ多少の差はあるがそれは承知の上だからな、いいとして。だけどこれはみんなで稼いだ金だ。とりあえず何に使ってるか聞かせてもらっていいか?」
まず視線はフィリアへと向けられた。
「最近何にお金を使ったんだ?」
「えーっと……」
言葉と共に上を向き少し記憶を遡り始めるフィリア。恐らく脳は無いだろうから一体どこにその記憶が蓄積されているのか、という疑問は最早シグルズを始め誰も持っていなかった。
「身の回りの必要な物を幾つか買ったのと。あと、殆どは貢いじゃいました」
「貢いだって誰に?」
微かに眉を顰め小首を傾げるシグルズ。
「この町の中央に噴水広場があるじゃないですか。そこにいる猫ちゃんです」
「いや。お前、基本動物に逃げられるだろ」
フィリアは大の動物好きではあるものの、その外見の所為で動物は彼女に近づこうとせずむしろ逃げる。特に小動物などは一目散に逃げ去るのだ。
「はい。ですから餌を置いてあげてその姿を遠くから眺めるんです。むしゃむしゃって食べる姿がとってもキュートなんですよぉ」
骨しかない両手で顔を挟みその光景を思い出しているのか彼女は幸せそうに語っていた。
「まぁでもお前は一番貰ってる額が少ないからな。娯楽代としておっけーだ。楽しんでくれ。でもあんまり不審な行動するなよ」
「大丈夫です。もう三回ほど通報されました」
「いや、それ大丈夫じゃないよね? まぁいいや。問題は起きてないし。よし次はゴルドさん。一応聞いていいっすか?」
そしてゴルドへ視線を移動させながら同じ質問を尋ねた。クロムスを飛ばしたのは、ジム代とプロテインそして借金にその多くが消えたのだろうとシグルズの中で答えが既に出ていたのもあるが――単純に先程の苛立ちが残り話したくないだけ。
「ゴホッ。僕は基本的に薬代とお医者さん代で消えちゃうかな。でも仕方ないからね。ゴホッ」
「ですよね。体には十分気を付けて下さいね。次、アステリア」
そして視線は最後にアステリアへと向けられた。
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