第2話一口目は甘ったるい出会い
貴方と出会ったのは僕がまだ若かった七年前のことになる。
僕は世間的に言う思春期の真っ只中で僕に近づこうとする全てのものを警戒していた。友達と昨日観たテレビの話をするのも、バスの中横に座る人も、メディアの犯罪者報道も、家族の心配の言葉さえも。
そんな僕の元へ貴方はずかずかと踏み入ってきた。
「君、ケーキ好き?」
「……は?」
貴方の第一印象は『本当に変な人』だった。
『君』と呼ぶには少し大人な人。
その日僕は学校終わりに近所の公園のベンチにいた。二週間に一回程度僕はこの時間を欲する。
母親にはしゃぎすぎだと怒られる子供、楽しそうに手を繋いで歩くカップル、優雅にスケッチする老人。
そんな人達を見てのどかに過ごすこの時間が好きだ。
なのに今日はついてない。
「君、ケーキ好き?」
「……は?」
誰でも知らない人からケーキを渡されたらこんな反応をするだろう。
「あげる、好きそうな顔してるし!」
動揺する僕を置いて貴方は横に座った。
「いきなりごめんね?それちょっといいとこのケーキだから捨てるの勿体なくて!」
「貴方は…食べないんですか?」
「うん、人にあげる予定のものだったから!」
何かこの人にも事情があるのかも知れないと思いつつ、横から渡されたケーキに触れた。
「貰ってくれてありがとう!またね。」
「あ、ありがとうございました。」
初対面の人にまたねという挨拶はどうなのだろう。そんなことを考えながら貴方の背中を見送った。
その日の夜、家に帰り冷蔵庫に入れたケーキを眺めながら貴方のことを思い出していた。
まるで、初めて地球人と話したのかと思わせるような、うきうき感を残す話し方が印象的だった。
「変な人だったな…。」
ふっと鼻で笑って冷蔵庫の扉を閉めた。
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