ケーキが好きだと嘘をついた

桜空 ゆうき

第1話プロローグ『忘れないため』

僕はずっとケーキが好きだと嘘をついていた。

純白の肌、紅色の苺、胸に残り続ける甘ったるさ。まるで貴方のようで、大っ嫌いだった。


「ケーキ持ってきたんだけど食べる?」

「すみません、僕ケーキ嫌いなんです。」


こんな何気ない会話をするのに何年の月日を要しただろうか。


「…やっぱ少しだけいただいてもいいですか?」

「もちろん。」


一口食べるごとに秘めていた貴方の甘ったるさが思い出される。


大っ嫌いだけど愛していた貴方を忘れないため、僕は今日ケーキを食べた。

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