1-10 変態――メタモルフォーゼ――

 光の中で、みさきとしほは、手をつなぎながら互いを見つめた。


 燐光じみた輝きが二人の身体を纏い、着ていた服をさらりと溶かす。


 みさきが、服従を誓う奴隷のように、しほの手の甲にキスをした。


 すると、しほの裸体を衣装が包む。


 拷問官のような軍帽は、長い髪の毛を内に収め、赤いラインが入った黒い革製のボンテージが、細身の身体を締め付けた。


 踵の尖ったヒールは先端を光らせ、右手に握られた鞭がヒュンと空気を切り裂く。


 しほは、ご褒美とばかりに、みさきの首筋にキスした。


 すると、みさきの裸体を衣装が包む。


 粗末な穴の空いた麻布が、みさきの裸体を前後で覆う。


 つけられたばかりのキスマークを隠すように首輪が嵌められ、両手両足には鎖で繋がれた枷が装着。みさきの身体を拘束する。


 それを、みさきは力任せにばぎんと引きちぎった。


 かくして、二人の少女は、性癖の使者、フェチピュアへと変態を遂げる。


 まばゆい光が収まった時、そこには、あられもない姿を晒す、みさきとしほの姿があった。


「加虐の使者! ピュアサンシャイン!」


 みさきが叫んだ。


「被虐の使者。ピュアムーンライト」


 しほが囁いた。


「なお満たされぬ倒錯のしもべよ!」


「とっとと塵へと帰りなさい」


 そして二人は、びしりとポーズを決めた。


 以上。


 ここまでの一連の流れが、お決まりとなる変態シークエンスである。

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