1-4 ルキと、ルホ

 そんな二人の野外プレイを、見物している者が、二人いた。


 場所は、路地裏を遠く離れたマンションの屋上である。


「確かに、あれらは逸材のように見えるな」


 うち一人、タキシードを身にまとった長身痩躯の人物が、そう呟いた。


 男とも女ともつかない、中性的な外見の人物である。


 そいつは、腰まで届く長髪を後ろで束ね、猫のような瞳を爛々と輝かせていた。


「ルホ。貴様にしては、良い仕事をしたじゃないか」


 タキシードの人物は、傍らに向かってそう言った。


「ああ! ボクには勿体ないお言葉ですルキ先輩! そんなに褒めないで!」


「ではいつもの通り愚弄してやろう。見つけるのが遅いのだ。この駄犬が。現界してどれだけの日が流れたと思っている。吾輩の貴重な時間を無駄にしよって」


「くぅ~! ファインプレーを決めたボクに対してこの罵倒! さすがです先輩! 血も涙もない!」


 ルホと呼ばれた人物は、夜空に向かって歓喜の咆哮を上げた。


 こちらも、男とも女ともつかない外見である。


 しかし、長身痩躯のほうは男装の令嬢といった風貌なのに対し、こちらは、まだ第二次性徴期を迎えていない少年のような風貌であった。


 ルホは、ぶかぶかのパーカー姿で、犬のように舌を出して身悶えしていた。


「『契約』するのは、あいつら二人でいいだろう。吾輩は、あの短髪の娘をもらおう。ルホ。貴様には、あの長髪のほうをくれてやる」


「ああ! ついにボクにもヒトのご主人さまができるんですねっ! 身体が疼いちゃいます! 先輩! よければボクに、ご褒美としておしおきをくださいっ!」


「ふむ。いいだろう」


「えっ⁉ ダメ元でお願いしたのに、いいんですかっ⁉ やっふー!」


「なぁに、新たな玩具を弄る前の前哨戦だ。どれ。あいつらの真似をするとしよう。ルホ。尻を出せ」


「あいあい!」


 ルホは、ウキウキしながら、ホットパンツで覆われた尻を突き出す。


 スパァン!


 そこに、ルキの鋭い蹴りが放たれた。


「わおーん♡」


 尻を蹴り飛ばされたルホは、その勢いのまま、屋上のフェンスへと突っ込んだ。


 金網が、ガシャンと音を立てて、人型に歪んだ。


「ふむ。やはり、ヒトの姿というやつは、力加減が難しいな」


 ルキは、革靴の爪先をタイルにこつんこつんと当てながら、そう呟く。


「わっふ~♡ 裂かれたような鋭い痛みに、肉に食い込む金網♡ 最高ですっ!」


 ルホは、自らの身体に走った痛みを味わいながら、恍惚に浸っていた。

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