第11話 開眼
チュートリアルが表示したクエスト達成画面には、これまでで一番等級の高いスキルが表示されていた。
——〝超級魔眼〟。
上級の一つ上の等級で、特にこの世界だと魔眼系統の特殊スキルはかなりレアだった覚えがある。
思わず俺はベッドから飛び起きてチュートリアルに訊ねた。
「ちょちょちょ、超級スキル!? しかも魔眼!?」
『回答:ちょちょちょ、ではなく超級スキルです』
「つっかえただけだろ! 茶化さずそのスキルのことを教えろ!」
『回答:超級スキルは、通常の方法で入手できるスキルの中では最上位のスキルです。その性能は上級スキルと比べても遥かに優れています』
「具体的にはどんなスキルなんだ、俺に宿った魔眼スキルは」
『回答:厳密にはまだスキルは発現していません』
「は? どういうことだ?」
『回答:個体名オニキス・アクロイドの意識消失を確認。スキルの授与を後回しにしました』
「それはつまり……」
『回答:これよりスキルを与えます』
チュートリアルがそう文字を記した瞬間、俺の目に違和感が混じった。
視界が一瞬だけ真っ暗になる。ほんの一瞬だけだったが、次の瞬間には——視界に映るものががらりと変わっていた。
なにやらキラキラと輝く青色の光が見える。
手を伸ばしてそれを掴むと、霞のように霧散して消えていった。
「なんだこの青い光は……」
『回答:人が魔力と呼ぶものです』
「魔力? これが魔力なのか……っていうか、俺の魔眼は魔力を視認できる?」
『回答:最上位の魔眼のみが持つ共通の能力です。固有の能力はまた異なります』
「なら固有の能力を教えてくれ」
『回答:対象に一時的な仮死状態を与える〝石化〟です』
「石化……それはまたポピュラーな能力がきたな」
実際にどんな能力なのか確認してみないことには役に立つかどうか解らないが、字面だけでもクソ厄介なのは伝わってくる。
おまけに、
『回答:そのほかにも共通効果として、視力の向上。動体視力の向上。透視。遠視などが備わっております』
まさに至れり尽くせりだった。
「マジか……さすが超級スキル。並みのスキルとは違うな」
新たなスキルを入手したことで俺のやる気は爆上がりする。
これまで戦闘方法といえば、剣術主体の近接オンリーだったが、そこに魔眼が加わることでより近接戦闘がしやすくなった。
「よし……まずは魔眼の固有能力である石化の仮死状態を調べないとな」
できればいますぐ確認しておきたかったが、一時的とはいえメイドたちを仮死状態にするのは憚られた。
明日、また父に言って外に出よう。そして魔物を相手に魔眼の能力を検証する。それが一番だろう。
そう思って布団に横になると、不意に俺の視界がぐらつく。
「——ッ!? な、なんだ……いまの不快感は……」
『回答:魔眼から伝わる情報量に脳が疲労を感じています』
「ハア? 疲労? なんだそれ……欠陥スキルじゃねぇか。解除する方法はないのか?」
『回答:魔眼系統のスキルは魔力を消費せずに様々な恩恵を与えるため解除できません』
「嘘だろ……」
『回答:その代わり、布などで目元を覆うと大幅に疲労を軽減できます』
「布? つまり目隠しをしろってことか……しょうがない」
貴重な超級スキルでもあるしな。この不快感が無くなるならなんでもいい。
俺はメイドを呼びつけて、なにか目元を隠せる布がないか探してもらった。その際、初めて知ったが、どうやら俺の目は元の色が変化して真っ赤になっているらしい。
言われて鏡で確認したら魔物みたいになっててビビッた。余計、目隠しは必要なんだと悟る。
▼△▼
「聞いたぞオニキス!」
バン、と自室の扉を開け放って父が入ってきた。ノックしろ。
「三つ目のスキルを授かったそうじゃないか! 歴史上、三つものスキルを得た者はいないとされるのに……お前という奴は……!」
どうやらメイドから魔眼の話を聞いたらしい。上機嫌な様子で俺の前にやってくると、両腕を広げて強く抱きしめてきた。
「ち、父上……苦しいです……」
「おお! すまないすまない。我が息子がここまで神に愛されていたとは知らなくてな。思わず気持ちが昂ぶりすぎてしまった」
息子相手に「昂ぶる」とか口にしないでもらいたい。ちょっと嫌な意味に聞こえる。
「い、いえ……でもちょうどいいですね。父上に頼みがありまして」
「ん? わたしに頼み? なんだね。なんでも言うといい。いまのわたしは最高にいい気分だからなッ!」
そう言ってえっへんと胸を張る父。本当に気分は最高潮って感じだ。
今ならなにを言っても許されそうだな。俺は笑みを作って父に願う。
「ではまた魔物の討伐に行かせてください。新たに手に入れたスキルの性能をたしかめたくて」
「なにいいいいい!?」
父の絶叫が屋敷中に響き渡った。思わず俺は耳を塞ぐ。
「父上……うるさい……」
「お前がまたおかしなことを言うからだろ! 危険な外へ二度も出かけるなど……!」
「前回、同行した騎士たちから話は聞いているでしょう? いまの俺は中型の魔物くらいなら余裕で倒せます。治癒スキルもあるのでご心配なさらず」
「し、しかし……」
より価値の高まった俺をみすみす死なせたくないのだろう。囲むだけならわざわざ外に出す必要はないからな。
それこそ治癒スキルだけでも一生利用できる駒だ。渋る気持ちはよく解る。
だが、引き篭もっていたら俺の成長も止まってしまう。それだけは避けねばいけない。
「お願いします、父上。また護衛がいても構いません。どうか俺に魔物と戦うチャンスを!」
今度は真面目な顔で、頭を下げてお願いする。
「ぐ……! ぐぐ!」
散々考えた結果、父は最終的に俺の外出を許可してくれた。
次の外出には、護衛の騎士が三人はつくらしいが。
———————————
あとがき。
魔眼を手に入れ、五◯先生のようになったオニキス。厨二度は加速し、彼はどうなってしまうのか⁉︎
そして近々、新たなヒロインが出てくるかも⁉︎
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