夫婦漫画は共同です
小説の原案を提出して数週間…俺は5万文字ほど書き上げた原稿を自宅に来た河辺さんに見せている。そしてちゃっかり志那も俺の横に座って、河辺さんの反応を待っているのだが…一つ気にになることといえば何やら封筒を持っていることだ。
「なるほどねぇ…」
何やらニヤニヤした顔を上げた河辺さん。
「糖分多いけど、良い出来じゃん!純愛でさ?メチャクチャ好きな気持ちが伝わってくるよー」
なんだが変な気持ちになりながらも良さそうな評価に安堵した俺はほっと胸を撫で下ろす。
「頑張ってましたし…良かったですね!」
微笑みながら労ってくれた志那に「ありがとう」を返せばさっきまでニヤニヤしていた河辺さんの視点が突き刺すような…いや刺し殺してきそうな勢いで飛んでくる。
「えっと…そう言えば志那…それは?」
そう言って俺は志那が持っている封筒を刺す。
分かりやすすぎる逸らし方にため息をつかれたが、気になっていたのか河辺さんは素直にその矛を収めてくれた。
「ああ…これは司くんの小説を書いてみたんです」
封筒の中身がテーブルに広げられた。
「へぇ〜…って!これ珠那先生の絵柄じゃないですか⁉︎」
流石は編集者、一発でわかるんだなぁ…と感心してしまった。ちなみに珠那とは俺と志那が付き合うよりもずっと前…まだ志那が絵を描き始めた頃、モチベーション維持のためにペンネームが欲しいと言われたので俺が考えたペンネームで、今もそれを愛用してくれている。
「流石は河辺さん…わかるもんなんですか?」
「そりゃ…珠那先生ほどの方ならば分かりますよ!でもまさか司先生の奥様だったなんて…」
「実はそうなんです」
少し赤くなっているのは自分ことがバレて恥ずかしいのだろうか…
「はぇ…」
驚愕している河辺さんを横目に机の上に並べられているネームを見る。改めて見るとやっぱり物語のモデルだからか、俺が描きたい人物像や描写、風景などを正確に書いてくれている。これ以上ない完成度だ。
「ふぅ…ならこの小説の表紙や挿絵。もしよろしければ珠那先生に書いてもらいたいのですがどうですかね?」
まだ困惑しているのかキャラブレを起こしている河辺さん。
「喜んで!」
待ってましたと言わんばかりに承諾する志那。こうして夫婦小説は俺たちの共同作品になったのだった。
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