夫婦漫画はノンフィクション

ピーンポーン


「うん…?」


呼び鈴の音で意識を覚醒させられた俺は時計を見る。どうやら呼び鈴の音で意識を覚醒させられた俺は時計を見る。午前9時 どうやら少々寝過ごしてしまったらしい。


ピーンポーン


もう一度される呼び鈴。こりゃ志那も起きてないなと思い急足で玄関に向かう。


「はーい」


ガチャリと扉を開けると見知った顔がそこにはいた。


「司先生…原案どんな感じですか?」


そこにいたのは俺を担当してくれている編集の河辺(カワベ)さん。俺の作品で唯一の書籍化がされた作品も担当してくれたのがこの人だった。そんな人がこんな時間に来たと言うことは…要件は一つしか思い当たらない。


「新規小説の原案…」


近々、俺がいる出版社では既存の小説家の新しい小説の告知がされる。それまでに小説の原案を提出しなければ俗に言う〇〇先生の次回作にご期待ください状態になってしまう。もしそうなれば復帰した時に読者の方から「誰だコイツ?」となるのはわかりきっているのだ。


「その顔…まだ考えてないんですね?」


鋭く指摘され何も言えないままとりあえず家に入れお茶を用意し、近頃の迷走っぷりを伝えると河辺さんはしばらく頭を抱えた。既に1ヶ月間の間、原案の中身どころか形すら決めてられていないんだ。急かされて当然だろう。


「とにかく…新規小説の原案の締め切りは今から1週間…あまり時間はありませんよ?まだジャンルも決まってない様でしたら今回は見送りにしますか?」


「それは絶対にダメだ…」


「わかってるじゃないですか…」


なら早く原案をくださいよ?と言い残し、まだ熱いお茶を飲み干して撤収して行った。


「何かいい案はないかねぇ…」


ソファに座り込み天井を見上げていると、ガタン!っと突如上から大きな物音がした。


「ああ…そういや起こしてなかったな…」


階段を登り物音がした部屋を開ける。するとそこには見事なまでに熟睡の志那が椅子から転がり落ちている。


「やれやれ…」


起こさなきゃな〜と思い近寄ると志那の手には器用にもペンが握られていた。


「すごい危険な寝方してるな…刺さったりでもしたらどうするんだ。」


ペンを取り上げて机に置く。するとそこには寝る寸前まで描いていたであろうネームが置いてあった。


「昨日言ってたやつか…」


若い男女のキスシーンが描かれているそのネーム。昨日の写真を見ていない俺でも、アレを参考にしたのがよくわかった。


「うん…?参考?」


そこでふと一つの案が思い浮かぶ。


(もしかして…俺たちの生活を小説にしたらいいのでは?)


そう思い俺は早速制作に取り掛かろうと決めた。【お互いがお互いの作品の参考になる】と言うのをコンセプトにしたら、今までの迷走が嘘の様にアイディアが溢れ出てきたので、一刻も早くこれを描きたい一心だった。


「志那〜起きろー」


熟睡している嫁を起こすのは少々気が引けたが、それよりもこの小説を書きたい欲が上回ったのだ。


「う〜ん…おはよう…ござい…ます?」


ウトウトしながら挨拶をする志那。


「おはよう、新しい小説が思い浮かんだぞ」


俺の言葉に目を見開いて、「本当ですか!」と嬉しそうに笑みをこぼす志那に俺は詳細を教える。もちろんモデルになってほしいと言うことも伝えた上で…


「いい作品になりそうですね!」


と言ってくれた嫁を俺は抱きしめるのだった。

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