夫婦漫画は新刊です‼︎
シャル
夫婦漫画はプロローグ
部屋の扉を開けて部屋に入ってきたのは俺の嫁で大ヒット漫画家である天野 志那(アマノ シナ)である。その両手にはお盆が握られておりその上には美味しそうなおにぎりが2つ置かれていた。
「夜食作ったから…よかったら食べてください」
既に時計の長針は1時を回っていた。
「あぁ。ありがとう」
渡されたおにぎりを頬張っていると志那は嬉しそうな笑みを浮かべている。その笑顔に少しばかりにやけながら一つ目を飲み込むと志那が聞いてきた。
「進捗はどうですか?」
「問題なし…と言いたいところだけど迷走中で…」
そこまで言ったところでふと気になった事を聞いてみた。
「そう言えば志那の方の締め切りは大丈夫なのか?」
すると当然ですと言わんばかりに胸を張りドヤ顔を浮かべる。だがその顔に若干の曇りがある事を俺は見逃さなかった。
「何か困ってることでもあるのか?」
すると何故かボフンと赤くした顔を持っていたお盆で隠した。
「?」
しばらく疑問符を浮かべているとゆっくりとお盆が下がっていく。
「実は…また協力してほしいことが…」
そう言ってスマホを取り出す志那。なるほどなと思い俺はリモコンを操作し部屋の電気をつけた。
「次はどんなシーン?」
俺がそう言って立ち上がったその刹那、志那が顔を近づけてきてごくあっさりと唇が重ねられる。
「!?」
唐突なことで硬直しているとゆっくりと離れる志那。その手にはスマホが握られていた。
「こういうシーン…なんです…」
再びお盆で顔を隠す志那の声は照れていると言うより申し訳なさそうな声だった。
「そうか…納得した」
そう言って俺は志那のお盆をひょいと取り上げ、肩を跳ねさせあわあわしている嫁の唇を俺は奪う。
「んっ…!?」
俺たちはまだ結婚して間もないのでキスの回数もそこまで多くない。さっきの嫁は自分が描きたいキャラクターになりきっていたのだ。それが嫁の描き方なのは知っているので特に言うこともない。だがこうやって小さく喉を鳴らしている嫁のほうがやはり可愛い。
さっきよりも長い口付けを終えた俺はそっと志那を解放した。
「司くんは意地悪ですよ…」
俺の胸に顔を埋めながらそう講義する嫁の頭を俺は優しく撫でる。
「志那が書く漫画を楽しみにしておくよ」
小さく首を縦に振る嫁は急足で部屋を出て行つた。
「さて…俺も頑張るか!」
俺は改めて椅子に座り直し残っているもう一つのおにぎりを食べたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます