第2話 広がる興味
この世界では自身の魔力を使い魔法を発動する。ただその魔力というのはいわば体力のようなもの、鍛えれば魔力量は上がるし、使うと疲れる。そして時間経過で回復する。そのはずなのだが。
(なんか、魔力の調子がすこぶる良いな)
母を食べた後、ツヅリの感想はそれだった。彼は気づいていないのだが、彼の魔力量が上がったのだ。
「シリカさーん!出てきてください!」
そんなことを考えていると、家の扉をノックしながら声がする。この声は確かお隣のおばさんだった。流石に無視という訳にも行かない。ツヅリは扉を開けた。
「あら?ツヅリ君、お母さんは?」
「母は体調崩して寝てます。」
「それは大変ね。これ!野菜のおすそ分けだから食べてね!」
隣のおばさんはそういうと、たくさんの野菜を渡してくれる。ツヅリはそれを受け取ると、おばさんは笑顔で帰って行った。
「後でお礼しなきゃね...」
ツヅリは不気味な笑顔を浮かべたのだった。
「あらツヅリ君。どうしたの?」
夕方頃だろうか、ツヅリは隣のおばさんの家にいた。ツヅリは手に持っていた赤いジャムのようなものが入った瓶をおばさんに渡す。
「お母さんがこれ。野菜のお礼だって。美味しいよ。」
「あら、ジャムかしら?ありがとう!良かったら食べてく?」
「お母さんのお世話があるから大丈夫!」
ツヅリは走って家に帰る。おばさんは親孝行な息子を持ったシリカに感心していた。丁度夕飯の準備もできていたことだし、ジャムを使ってみる。
「うん、美味しい。」
おばさんは一人暮らしだ。ポツンと独り言が静かな部屋内に響き渡る。しかしご飯を食べたからだろうか、だんだん眠くなってきた。
「疲れてるのかしら?今日は早めに寝ましょう。」
1人ベットに入り、眠りにつく。いつもよりなんだか寝付けが良い気がする。ただ、残念なことはこの先にこのおばさんが目を覚ますことが一生無かったというだけだった。
「おばさんの家って入れるかな?どうなったかみたいのに。」
ツヅリは1人で山に出かけた時に、見たこともない草を見つけた。猫に与えてみたらすぐさま絶命してしまうような草だ。だからどれが致死量か知りたかった。
母の目を盗み、いちごのジャムに少しずつ、少しずつ入れて実験していたのだが、もうその母はいない。だから更に量を加えておばさんに渡したのだが...効果を確認できなければ意味が無い。
「そうだね、まあ死んじゃってたら外に出られないか。」
ツヅリも眠りにつくのだった。
翌日、ツヅリはいつも通り外に出る。今日は確か武術の練習があったはずだ。いつものように広場に集まる。
「おはよう!」
清々しいほど元気よくツヅリは挨拶をするが、誰一人として返事をしようとはしない。これが今の実態、ツヅリは誰にも話しかけられない。
「よし!みんな揃ったか?今日は体術の練習だ!盗賊とか来るかもしれないからな!」
そこにあとから遅れてきた大人の男性がやってくる。
(男の人、大人で筋肉もある。それに周りには子供たち...)
ツヅリの興味は毒をあげたおばさんではなく、新しいものに向けられていた。
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