第三章 旅
*99
私は、かれの表情が変わるところを見たことがなかった。
いつも優しい笑顔ですべてを包み込んでいた。慌てることも、焦ることも、怒ることも、悲しむこともなく、淡々とし、冷酷さまでも包み込んでいた。
そして、その語りには、無駄がなかった。
「一生しかなく、この瞬間。プログラムを選択できる。一つのきっかけを、変えることで、新たな視点が現れる。さらに、自由が与えられ、全てが必然と分かる。忘れることでその種の理解をより深めた。そのうち、忘れず次の展開を楽しむ。あなたの考えていることがおおよそあなたであり、ある程度まではみんな共通している。つまり、1~1000の共通するなか99である。それを君は選択した。」
意味がなさそうだが、その言葉一つずつをみると無駄がないのだ。
また、あるときにこのように質問した。
「つまり、666以下は、人間より下ということですか?」
「なんとも、人間的思考だね。以上、以下というのは、差がある。そういうわけでなく、ただの、数値である。大人たちの資本の計算により、数字は多ければ多いほど善とされ、少ないと悪と根付いている。つまらない思考だ。差を取ること、つまり悟りだ。」
このように、問えば、いくらでも返答をくれるが、必要のないことを聞くと、淡々とした説明で、違うことに目を向ける。
「せっかく99番目の星々が覗けるだから、お喋りよりもいまをみてみるといい。」
そう言われたが、わたしには、真っ暗で何も見えなかった。
「まだ何もなくみえる。X線やγ線などでみれば、あなたたちも感知できる。何かが生まれたのがこの1〜99番。点にぎりぎり成らないため、あなたが視覚的に何も覗けない。」
アミュータの口には、笑みが浮かんで、なにか思いついたようであった。
すると、突然私の頭に急に暗闇から点が現れた。何も無いところから、生まれたのである。が、再度みるとそこにはなにもなく、私は、自分の目を疑った。
「いま、アトムさんの頭に数億倍した時間を流した。99から111の流れをみせた。100になった時に一つの気体が現れる。もちろん、反対の選択肢も十分あり、放射線で感知できないような50以下になる可能性もある。」
点が現れる瞬間には心を踊らせたが、また真っ暗になってすこし退屈になり、「ここでの旅は、これで終わり?」と眉を細めた。
「君が選択すればいい。終わりたければ終わり、見たければ見ればいい。たた、君は、ここから外は見たかね?」
はっとした。確かに目の前は、真っ暗であったが後ろ側は見ていなかった。
振り変えると、星々の輝きで空は埋め尽くされ、背景はミルク色のホワイトにちかく、無限の銀河が巨大に光っており、純粋なホワイトにみえ、宇宙塵が拡がっていた。いままで、こんなに満たされた空をみたことがなかった。こんな景色に、気づかなかったに後悔しそうだった。
わたしは、自然と涙がポロポロ溢れ、その透明な水は、流れ星のように宇宙塵のなかを駆け抜けた。
「暗闇から見れば、すべてが輝き、輝きから見れば、すべてが暗闇。この瞬間、瞬間が集積で、コスモスである。」
アミュータは、優しくにっこり微笑んでいた。
しばらく景色をみていると、「どうかな?」と、アミュータは頭に問うた。
「とても感動し、いままでの常識が、すべて嘘のようです。」
「きみは、確かに一定水準以上の精神レベルを得て許可がおりているが、あくまでそれは時空間の制約のなかでの話で、些細な小さな粒。アトムさんの感動は、暴れる赤子が大声で泣き叫ぶような悲鳴だ。」彼は、手を上げ白空に上げ差しました。そこは、宇宙塵が、ひしめき合い蠢いていました。
「泣くことでアピールするのはいいが、暴れて泣き叫ぶのは、波動の負荷が激しい。ちょうど、それはお経みたいなもので、波動を使うための手段であったが、ただ暗記するだけの呪いになった。ひらがなも同じく、言霊という呪いになった。イデア(う)がわかってくると、感動のノイズを波動の共創がわかる。これは、精神レベル訓練に役立つとおもうから伝えておく。クラシックでは、これをカンタービレと名付けた。」
ここからみる景色は、まさに「Ah, vous dirai-je」つまり、きらきら星のように無限に続き満たされていた。
「さぁ、飽きることのない景色だが、そろそろ次に行こう。何番がいいかな?」
「222・333・444・555・666・777・888・999の順番がいいです。」と、わたしは、この時に順番をはっきり求めた。そして、なぜか、知っていた。
「求めたら、何処へでも行ける。」
こうして、8つの星々の旅に向った。
*222
また一瞬光り、目の前には渦でできたなにかがあった。生命という生命をいないようだ。
「大気が現れた空間で、生命という生命はいない。ここでは生命は、1秒として耐えられない、それが、222だ。」
わたしは咄嗟に、現代科学がきになり「重力や引力は、どうなっているのか?」と聞いた。
「あなたちの中心は、相対性理論であるが、あれは時間と空間を絶対的なものとしているから成り立っているだけだ。つまり、地球と人間を中心にみたときの答えで、ここではまったく意味をなさない。そこの場所には、そこの場所の理論があり、何処を中心にしてみるかで、重力や引力は紐のようになる。中心なんて無いから、考えても無駄だ。つまり、ミクロコスモスは、マクロコスモス。そのイデアを追求すれば、必然とコスモスの理解も深まる。そして、必然とわたしたちと協力するようになっていく。」
「どういうこと?」
「内は外、外は内。それを難しく解釈しようとするからわからなくなる。もっとずっと単純で、ひらがなやヨハネ、古代文字から生まれた。そのうち、縺れが起きフリーズがおきる。縺れを一つずつ解けばいい。
いまを楽しまず、木みて森をみず、せっかくこの景色があるのだから、この景色を楽しめばいい。解く方法は、いつも簡単だ。」
はっとしてまた後ろを振り向いたが、大気の乱れから宇宙をみることはできなかった。その代わり、空はものすごい勢いで動いている。その模様の移り変わりは大雨で降った川の濁流以上に目で追えなかった。
もし、この宇宙船がなければ、この流れの塵となっているだろう。
急に、私はこの宇宙船が壊れないか、心配になった。
「本来は、目の前すら見えない場所だ。透けるように大気が見える。探求心は、純粋な疑問でいい。が、その扱い方を学ぶといい。ここでは、生命が生存できないほど過酷な場所だ。息すらままらない。宇宙船が壊れないか、心配するのは純粋な疑問からそれる。壊れないか、確認することは、智慧となる。安心してくれて結構だ。この宇宙船は壊れない。壊れるところはAIによって、行けないようプログラミングされている。」
つまり、心配と探求の違いを教えてくれた。
私は、この事を地球ですでに知っていた。
病気や地震など、未来を心配して、人は煩わせる。地震のために、備え、善き食事することができる。それは探究心からの行動だ。
心配しすぎれば、心配が起きる。
私の中には、まだ心配や不安がある。だから、人間なのだ。
落ち着かせるため、私は深い呼吸をする。外の景色と違いしっかりと吐き、吸う。そのことに喜びを感じた。
「アトムさんのこころが、移り変わるように、この星も移り変わりが早い。そして、それが優美である。」と、語り終えると、333の星に向った。
*333
いままでと違い、星全体がみえ、球体の無機質な星であった。。
「ここでは、うちに入れない。鉱物で密度が高いためだ。地球では水の密度が1だが、ここでは鉄の密度が1だ。粒子まで、宇宙船を縮めたとしても、リスクが高く意味をなさない。ここの、鉱物は機械式の宇宙船として材料を使うと品質がいい。」
「体のサイズを変えることが可能ということですか?」
「そうだ。」
「一寸法師やかぐや姫はもしかして、体のサイズを変えていたのですか?」
彼は、静かに黙ってうなずいていた。
「いまはまだ、その情報について詳しく掲示することはやめよう。誰がみているかわからない。」
すると、星からぎんぎんときこえた。
「アトムさんには、ぎんぎんと聞こえるのですね。だから、あなたたちは、銀と呼ぶ。」
彼なりのボケで、ダジャレなのだろう。全然、笑えない。
その沈黙が、徐々におかしくなってきた。
私は、彼を真似して包み込むように笑って、次の星へ向かった。
*444
砂漠化された大地で土などの粉塵がまっており、頑丈にみえた。
「ここには、生命がいる。小さい、小さい目に見えないバクテリアだ。バクテリアが生命のほとんどである。人間も細菌やバクテリアの固まりだ。つまり、人間の元祖がこの星にあたる。粒子サイズにはなれないが、このサイズならなれる。」
すると、宇宙船ごとみるみる小さくなりました。
周りは、大きな粒がたくさんだ。粒の大半は、ぶつかって粉となり、枯れた木の世界におもえた。脆く触れただけで崩れる。
「表面は、凹凸があり底に様々な物質が混ざっている。ちょっと風が吹き、場所を変えている。バクテリアは、その風のなかで永遠とひっつきは減ったり、増えたりしてループする。ウネウネと表面が動いている。これが、大腸になり脳となる。いま、ミクロコスモスにあなたと私がなっており、この船は、全部均等に圧縮してある。外に出たら、崩れて身がもたない。そのなかでも頑丈なものがある。そうやって物質はできている。」
「生命に水は、いらないのですか?」
「水がなくても違うかたちで順応する。水でない物質で発展していく。」
すると、毒性を持ち酸欠もしない形で生存できるドロドロしたスライムがこの星を統べるアイデアが浮かんだ。
ここでは、ありえないということがありえないようだ。
そして、彼が語りかけてきた。「想像しうるすべてのことはありうる。」
常識の枠を超えることは、白紙にする必要があり、いくつになっても学びがあるようだ。
こうして、また次の星に向かう。
*555
ここからは、なんと恐竜がいた。
「ここは、かつての地球ですか?」
「いいや、違うが、同じような経路を辿ると似たものになる。よくよくみると色や植物が違うだろう。そして、弱肉強食の星である。」
「確かに、全体的に横に広く動植物が育ち、植物も虫や動物を食べ、動物同士でお互い争い本能のままだ。いっときの平穏すらない。畜生界ともよばれ、ひたすら食っては食べられ、争い。休むひますら与えられない。生存のみが、ここではみられる。この辺は、もっと詳しく分解する必要がある。ここでの事を綴ったら、また違った形で旅にでよう。」
そう語り終えると、しばらくその様子をみていた。ここでは、寝る間もなく捕食し、捕食されている。
もし、ライオンがここにいても生き残れない。18時間も寝ていたら、その間にやられるからだ。
なかには、ただ倒すだけで捕食しない動物もいる。食べる時間も、与えられていない。
生存だけが絶対で、他に方法がない。考える時間も与えられないため、常に動いている有様だ。まるで、奴隷が18時間働きづめで6時間寝て自由が与えられない、それにみえた。
私は、八時間寝て、ご飯を美味しく食べ、歩ける日常に幸せをみつけた。
555・666・777の旅は、あなたの旅に大きく共通するため生涯をかけ、証明することになる。いまはこの辺にしておこう。
アミュータと、次の旅に出た。
*666
私は、そこに着くと霧に包まれていた。
「還ってきた?」と、思ったが、青色に反射している。
「地球と対になっている場所だ。」
そこは、地球とほぼ同じであるが、太陽の色や月の色が違います。そして、回転軸は反対でした。北半球に海が多かった。
「どこを中心にみるかで変わるが、赤道や太陽などシンメトリーになっている。色の屈折率も対象で、青がここでは強い。右経由しているか、左経由しているか、それぐらいの違いだ。ありえないことなんて、本当にないことが分かるだろう。君たちが、ここに辿り着くには、地球もここと同じように700以上を有する必要がある。そのために、この情報を提供している。」
霧から、宇宙に行き、いまは海辺で青い太陽に、赤い海であった。
人間が1人いた。ちょうど、海に入って漁をしていた。
「わたしたちは、外から見えないように屈折率をつかいカモフラージュされている。あの人間は、こちらに気がつくことはない。」
その人間をみていると、漁に潜って少しばかり岩肌で、腕にかすり傷をしていた。かすり傷は、青い血であった。
「血と海は、同じ成分。それもここでは、シンメトリーなのですか?」
「そうだ。同じ経路はない。だから、必ず違う。人間も同じ顔に見え、絶対に違う。無限のレパートリーが有る。それ以外は無い。」
そう語り、太陽が沈もうとしていた。海は、赤に青く照らされどこか懐かしく思いました。怪我をした人間も、太陽をみて切なそうに眺めています。
その瞳には、涙が流れていた。涙は、透明でわたしと変わらなかった。
どうやら、本当に大切なものは、変わらないようだ。
*777
次は、なんと森もなく、大気と大地だけがある場所であった。444の場所に比較的似ていた。
が、宇宙から大地の割れ目に入り、内をみると底には生命で溢れていた。争う植物たちがいない。美しく調和のとれた楽園でした。
「人間の領域を超えると、大地が発展する。コスモススペースからの影響を受けにくく、生存を外に見える人たちは、内を見ようとしないため、注目もされにくい。水が、無いと生命がいないと思っているから、研究対象にされずにすむ。マクロコスモスを知っているものは、ミクロコスモスも知っているものだ。」
自然という概念は、どこにあるのか、分からなくなってしまった。
「偶然などなく、必然があり、自然というのは一つのコスモスなのだ。この領域に入ってこない限り、地球は一向に666をループする。」
すこし、分かった気がする。
なんで、アミュータが淡々と語り、ユーモアよりも、包む笑顔を好み、言葉を忘れ映像やテレパシーに特化していくのか。
「極楽や天国というのは、ここですか?」
「色々な形をとるが、蓮池などのあれは限りなく700で、地球もそこまでなりえる。目指すのは、そこでありそれ以上は考えなくて良いが、視界を広くすることで、色々なところから善いところを取り入れることはできる。そのための情報提供である。この文章を唯のゴミの小説とするのであれば、それはあなたのすべてに共通する地球は、滅亡を選択したことになる。」
この文章も、そのまま伝えてあらすじに入れることをすすめられた。
「私は、還りたい。ここに、還りたい。」そう思って、ちょっとばかりアミュータに嫉妬をした。
すぐに、深呼吸をし、息が吸えることに喜びを移す。
「思考の切り替えができれば、自ずと蓮池に近づく。が、あなたの中にまだ、その嫉妬や心配があるのだ。だから、いまの地球が必要なのだ。」
そうなのだ。私の還りたいは、完全に逃避であり、いまを生きていない証拠である。この逃避を私は学んでいる。
いまある、感情と地球の有ることに私は99歳にして、もう一度情熱を注ぐことに決意した。
*888・999
残念ながら、これ以上先は、思い出せない。そして、この二つは、映像を表現できない。
ギャラクシーとギャラクシーが一つで絶妙なバランスで、すり抜ける。ぶつかってまた新たなものとなる。暗闇から見れば、すべてが輝き、輝きから見れば、すべてが暗闇。この瞬間、瞬間が集積で、コスモスである。そのコスモスは、太鼓の音のように鳴り響き、愉快に陽氣に、踊って、戯れ。共創し、泳いで、自由で、必然で、舞っている。そして、虚像も実像も姿を消して、真っ暗になり、またそれは真っ白にもなる。
こうして、私の空間を超えた旅が終わった。
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