第23話 敗戦

 その一週間後、明かない気持ちで試合を見に行った。


 その試合の相手は最強の高校と言われている高校であり、去年は夏春連覇している裸子。

 今年もプロ注目の剛速球ピッチャーと、強打の捕手が話題となっている。

 少なくとも、四番にはチャンスで回してはいけないとされているらしい。(ネット談)


 ふう、と、席に座る。

 なんとなく、気が浮かない。


 なんとなく、美香に会いたくなる。


 試合が始まった。早速、とてつもない大音量の応援歌がグラウンド全体を覆う。

 凄まじい、と思った。


 その直後、センター後方に打球が飛び、フェンスで跳ね返った。

 いきなりの二塁打で、ピンチを背負った。

 正直、戦力差は激しく、一点でも取られたら負けだと思っている。


 二番を三振、三番を浅いレフトフライに抑えた後、四番キャッチャーの武村が出てきた。

 この次に出てくるのは五番ピッチャー柳原。

 正直どちらで勝負してもきつい。

 ここで止めなきゃ。

 と、思った瞬間、レフト前のヒットを打たれた。

 ツーアウト一三塁。

 大ピンチだ。

 五番柳原。本職ピッチャーだが、パワーがすごく、あたりが悪くても強引に外野まで飛ばせる力がある。


 ここを抑えればいいが。


 カキーン。


 ライトまで飛ばされる。

 だが、ボールが地面に落ちなかった。

 ぎりぎりでフェンス前でセンターがとったのだ。

 とりあえずこれで一安心かな。


 そう思い、隣を見る。が、美香は当然いない。


 そう言えば前回甲子園に行った時は美香が隣に座ってたなあと、ふと思い出す。

 興味は全然なさそうだったけど。


 だが、二イニング目からどんどんと点を取られていく。


 そして六回までに4点取られた。

 ちなみにこちらのチームはまだ3安打だけ、しかもそのうちの二つは佐々木君によるものだ。


 絶望的な状況にもう私も見る気をなくしていた。

 どうせ負けるだろうと。


 だが、佐々木君はあきらめていないようだった。

 そこから一点も与えずに完投した。

 結果チームは負けたが、九回四失点、四打数二安打で終わりを告げた。


「すまない」


 試合後、面と向かってそう言われた。

 私としては何も済まないことは無い。

 ただ、彼が試合に負けただけ。

 それだけなのだ。

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