第19話 ホテル

 そして、からくり屋敷のところに行った。ここでは、屋敷のからくりを体験できるのだ。

 例えばよく見る、壁が回転して避難経路になるやつなどだ。

 私はともかく詩織が超絶ハイテンションだった。子どもだねと、ニヤつくと、詩織が「いいじゃん、楽しいんだもん!!!」

 と逆ギレしてきた。

 その後お土産として剣と手裏剣とクナイを買った。


 そして私達は宿へと向かった。もちろんダブルベッド、詩織と同部屋だ。

 宿は費用を抑えるために所謂ビジネスホテルと言われるタイプのホテルにした。

 部屋にテレビとベッド二つが置いてある。ホテル自体が安いからか、部屋は狭く、本当に寝る以外にすることがほとんどない。だけど、ベッドの上でいろいろなことは出来るのだ。

 そして、チェックインを済ましたあと、二人でご飯を食べに行く。予算は二〇〇〇円無いような場所を選びたいところ。そう考えたら、イタリアンがいいだろうという事で、近くのイタリアンに行く。

 そこにはピザやパスタ、グラタン、などの色々な料理がある。


「美香、いっぱい食べようね」

「うん!」


 そして、私達は中に入った。頼んだ料理は私がグラタンで、詩織がパスタだ。その他に二人で分けるためのピザも頼んだ。


「ねえ、美香?」

「なに」

「二人でご飯食べに行くなんて久しぶりだね」

「そうだね。もっとご飯食べに行けばよかったね」

「何しんみりしてるの? 美香。今日楽しめばいいじゃん」

「そうだね」


 そして、私達は来た料理を楽しく食べる。


 食べ終わった後、私達はホテルにすぐ戻った。ここから寝るまでの四時間程度は自由時間だ。


「じゃあ、行くよ!」

「うん!」


 そして私たちは枕を投げ合う。枕の数は二つしかないので、修学旅行とかみたいな派手なものは出来ないが、それでも旅行感は味わえる。その後はおやつを食べながらゲームをしたり、カードゲームをした。

 そして日は速く過ぎていくようで、あっという間に二時になった。それまでは気合で起きていたが、流石に眠さに耐えられなくなった。


「詩織、寝させて」


 そう言って寝させてもらう事にした。流石に起きすぎて翌日しんどくなりそうだ。


 その言葉に「仕方ないなあ」と答えた詩織は私の隣に来て寝ころび始めた。


「ねええ、詩織」


 そんな詩織にふと話しかける。


「明日の夜に詩織は旅立つんだよね」

「うん、そうだよ」

「詩織、私の家で暮らさない? 私、詩織と離れたくない」

「それは無理だよ。だってさ、家族は一緒じゃないと」

「そんなことどうでもいいじゃん」


 そう言って私は詩織に抱き着く。


「天候も面倒くさいじゃん。一から友達作り直さないといけないんだよ。だったらさ、こっちで二人で楽しく暮らそうよ。詩織の我儘に付き合うからさあ」

「だめだよ。それに死ぬわけじゃないからまた会えるよ。そしたらさ、また遊ぼうよ」

「……なんでそんなに割り切れてるの? 私には無理だよ」

「大丈夫だよ美香。悲しみなんてそんな続かないものだし。まあ、私が死んだら別だけど」

「……」

「ここ笑うとこだよ。死ぬつもりなの!? とか、死ぬ予定あるの!? って」

「笑えないよ。詩織」

「それって笑えない冗談ってこと?」

「そう言う意味じゃなくて、こんな気持ちなのに笑えないってこと」

「ああー。そういう事。せっかく場を盛り上げようとしたのに。美香ちゃんはだめだなあ」


 美香ちゃん呼び。でも、


「うん。私ダメな子だ」


 そして私はいつの間にか寝てしまっていた。





 そして翌日、七時に起きた。七時半からホテルの軽い朝ごはんがあるためだ。まだ少し眠いが行動できない程ではない。

 寝て頭もさえたのか、気持ちの方はだいぶましになった。


 さて、隣に寝転がってる詩織を起こさないと。


「詩織……朝だよ」

「もう少し寝させてえ」


 昨日の詩織はどこに行った。いつもの詩織に戻ってしまっている。詩織の方寝たことにより、別の意味で変わってしまったようだ。


「詩織、早くしないと朝ごはん食べられなくなる!」

「はーい」


 そして寝起きの詩織を着替えさせ、朝ごはんを食べに行く。

 朝ごはんはバイキング方式だ。とは言ってもあまり量はなく、ソーセージ、ベーコン、スクランブルエッグなどの、朝ごはんっぽいメニューが15種類程度あるのみだ。


「ご飯、ご飯!!!」


 詩織はようやく意識が覚醒してきたのか、調子が良い。


「美香それだけでいいの?」

「うん。朝だしね」

「そっか」


 そう言う詩織のプレートの上には多くの料理がある。


「詩織、むしろそれ食べきれるの?」

「大丈夫。食べれるよ」


 そして、詩織は有言実行で食べ終えた。だが、ホテルを出て次の目的地に歩く際に、だいぶ苦しそうに歩いている。


「詩織……大丈夫?」

「何とか。でも、美香肩を貸して」

「だから言ったのに」

「もう取ってたからどっちみち無理だったよ」


 もう、詩織ってば。

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