第18話 旅行
翌日私達は京都に一泊二日の旅行に出かけることにした。この旅行が正真正銘の私達の最後の日々だ。この旅行が終わる=帰る時にはもう引っ越しの準備が整っており、そのまま引越し先へと向かうことになつまている。
まずは新幹線で、京都に向かう。私たちが住む県からは少し離れているので、電車に乗る時間が必然的に長くなる。
「詩織、京都って行ったことないよね」
「そだね。行ったことないわ」
「確か昔、クラスで京都の寺の動画見たよね」
「そんなことあったっけ」
「あ、そっか。詩織寝てたか」
実際小学生の時は詩織授業中ほとんど寝てたし。
「でも楽しみだよね。二人きりでの旅行」
「今までになかったもんね」
「そうそう、絶対いい旅にしようね」
「うん!」
新幹線は相変わらず走っていく。
「そうだ、駅弁食べよう」
詩織がそう言いだした。
「詩織……もうおなか減ったの」
「もちろん」
「速すぎでしょ」
「そんなことはないでしょ。それにもう十一時だし」
「普通昼ご飯は十二時に食べるものだと思うけど」
「細かいことはいいじゃん。い叩きまーす」
そして詩織はもぐもぐと自分の弁当を食べ始める。それを見ると少しだけお腹が減り、お腹の虫が鳴ってしまった。
「美香も食べたいんだったら、食べなよ」
「いや、いいよ。詩織じゃないんだし」
そして我慢すること一時間。弁当を食べ始める。
「はあ、美味しそう」
そう、車内迷惑にならない程度の声で言う。
「詩織はもうこんなおいしいご飯が食べられないなんて、可愛そうだね」
「馬鹿にしないでよ。私耐えられるよ?」
「それはどうかな?」
詩織が弁当を食べ終わったら、私の番だ。詩織に見せつけるようにして弁当をもぐもぐと食べる。
詩織がうらやましそうにしているのが見えて普通に幸せだ。
そして駅に着き、京都に着いた。そして電車に少し乗ればすぐに目的地に到着だ。
今日めぐるのは主にお寺だ。まずは金閣寺に向かう。日本人で知らない人はまずいないんじゃないかと言えるほどの有名な寺。初めて行くから楽しみだ。
外から見ると、全身ピカピカで、外から見るだけで楽しくなってくる。
だけど、今回は中にも入る。それだけで気分が上がってくる。
「美香ー」
「何?」
「単純だね」
恐らく私が見とれていたことに対するその詩織の言葉は私に重く重くのしかかる。詩織にだけは言われたくないセリフだ。むしろ私から言うべきセリフだ。正直悔しい。
「じゃあ、中入ろう」
ごまかすように詩織の手を引っ張る私、
それに対して、詩織が「もしかしてごまかした―?」なんて言ってくる。詩織のくせにやけに勘が鋭い。
金閣寺とは、足利義満が建てた寺で、正式には鹿苑寺というらしい。
「美香行こうよー!」
そう説明書を読んでいる私に対し、詩織がそう言う。
「なんでよ、背景情報も大事だよ」
「そんなのいいじゃん」
「詩織だって、単純じゃん」
そして詩織と手を繫いで入っていく。金閣寺と言っても、全部ガ金なわけではなく、入り口の門や、鐘桜とかは金色じゃなかった。
そして肝心の金色の寺には入れなかった。どうやら未開放らしい。だが、その池の向こうにある金色の寺は見ているだけでも素晴らしく、それだけでも満足感が大きかった。
その後、東映映画村に行った。そこは、大きな村で、色々な場所があるみたいだった、
まずそこで私たちが向かったのは、衣装を貸し出してくれる場所だ。そこに行くと、まるで江戸時代の人のような姿にしてくれた。
「詩織に会ってる」
「美香も似合ってるよ」
そして私たちはハイタッチした。
コスプレ感も良くて、しかも剣が中に入っていて、それも素晴らしい。お互いに何枚も写真を取り合った。
しかも街並みの雰囲気も相まっていい感じだった。
そして一時間半衣装を満喫した後、次はお化け屋敷に行った。私は行きたくはない。
「詩織、一人で行けば?」
行きたくないという一心で詩織にそう言う。
「なんで? こういうのは二人だからいいじゃん。行こうよ!」
「嫌。一人で言って」
「もう、そんな子っというんだったら―」
詩織は向こうに走っていく。そして手にしたのは、二枚分のお化け屋敷のチケットだった。
「ねえ、詩織?」
「何?」
「それずるくない?」
「私がよしとしたからずるくない! さあ、行こ―!」
チケットを二枚手渡して私たちは中に入る。
最初にお化け屋敷の説明がなされた。
「詩織、帰ろう? 出よう?」
正直怖すぎる。もうここにはいたくない。
「何言ってるの? 行こう!」
詩織は全くビビっていない。それがまたむかつく。
詩織が上みたいで。
お化け屋敷の中では不気味な感じがして、悲鳴音のBGmなどがして、進むのが億劫だ。
だが、進まなければ、立ち止まらないでくださいと、先に進むことを強要される。こんな怖い中、進めるわけないじゃんと言いたい。
そしてビビりながら進むこと五分、ようやく目的の呪われ人形を見つけた。これの目を隠さなければならない。
怖い怖い怖い怖い。
「詩織目を隠さずに出よ?」
「だめだよ。これやらなきゃ出られないよ」
「でも、怖いから」
「いや、隠す!」
そして詩織は人形の目を目隠しで隠した。すると……
そこから先は覚えていない。もうとにかく恐ろしい目にあったという事しか。
もう、怖くて、もうこの中には入りたくないという気持ちだ。
「ねえ、詩織、ここにいるよね」
「うん。いるけど」
詩織は半笑いだ。ムカつくけど。何も言えない。
「詩織、私から離れないでね」
「うん」
そして私は三分程度子どものように詩織に抱き着くのであった。
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