第16話 山登り2
「ハアハアハアハア」
分かってはいた事だが、住宅街で疲れてた私が、山を登れるわけがなかった。
「ねえ、美香? もう疲れてるの?」
「詩織みたいな体力馬鹿には分からないよ」
「本当体力ないよね」
「だから詩織がおかしいだけ!」
そんな文句を言いながら私は詩織になんとか喰らいつくように、山を登っていく。
そして、分かれ道に出た。
「これどっち行く?」
「どうしよう」
「……右行く?」
「なんで?」
「だって、右の方が楽しそうだし」
「ああ、詩織だ……」
詩織はいつも楽しい方へ行くのだ。
「じゃあレッツラゴー!!!!!!」
詩織は元気よくそう言って走って行った。
そして詩織に食いつく事三〇分私は案外大丈夫だった。ただここに来て足が軽く痛くなってき、そろそろ体力も尽きてきた。
何とかここまで食らいついていた私だが、そろそろ休みたい。
「よし! 詩織少し休顔しよ?」
「えー、もう少しいけるでしょ。それに休むところはないしー」
「ないしーって、私そろそろ倒れそうだし」
「じゃあ踏ん張ろう! 気合いでなんとかなるよ!」
「ならないものもあるから!!」
そう言った時には詩織はもういなかった。
「やっぱりこうなると思った」
詩織に合わせるのなんて無理だ。
「私何やってるんだろ」
そう呟き、その場に座り込んだ。JKにもなってこういうところは何も変わってないんだから。
「美香も変だなあ。
そう言って詩織はどんどんと進む。が、
「あれ? 美香は?」
美香は着いて来ていなかった。
「マジで、さっき休憩してたのに」
詩織は美香の体力を見誤っていた。そんなこと言いながら何とかついてこれるだろうとと。
「あーもう面倒臭いなあ。美香待たないと行けないなんて」
そう詩織は文句を言う。
「まあでも、仕方ないか!」
詩織はそう言って、その場に座り込んだ。
「さてと」
疲れが取れた。今なら歩けそうな気がする。と言うわけで、詩織を追いかけたいけど。
もう詩織が遠くに行ってる可能性がある。いや、その可能性の方が大きい。詩織は単細胞だから。
私一人で先に山を下りても良かった。だけど、せっかくだ。
私は必死に詩織を追いかける。
そして三分くらい歩いた時、待ち人の姿があった。詩織だ。もう待っていないと思っていたのに。
「はあ、詩織お待たせ」
そう、詩織に向かって言う。すると、
「もう、遅いよ。ちゃんと待った私をほめてほしい」
「はいはい、偉い偉い」
「なによ。その言い方」
そして詩織はまた歩き始め、私もそれについて行くいく。
そして、おもったよりもあっさりと、頂上に着いた。
「思ったより近……」
自慢ではないが、私はこの山をまともに上ったことはないし、私自身、ちゃんと登り切れるとは思っていなかった。どうやらさっき休憩したところは頂上に大分近い場所だったらしい。
「どう? 美香。これが山登りの楽しみだよ」
「うん」
「美香にはさ、毎回山登り断られたから今日山登り承諾してくれて嬉しかったよ」
「まあ、詩織といれるのも、あと少しだし、せっかくだから付き合ってあげようと思って」
「なに、美香。その上から目線。私でも怒っちゃうよ」
「詩織は毎日起こってるでしょ」
「えー、そんなことないって」
そう言って私たちは笑いあう。
私自身、思ったよりもこの山登りは楽しかった。だけど、それを詩織に知られたらなんとなく嫌だ。だから、付き合わされた風を装っている。
私は、ずるい。自分の本心を詩織に伝えていない。
詩織といれば、ほとんどのことは楽しいということを。
その時はむかつくけど、時間が経てばそれもちゃんと思い出になっていることを。
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