第15話 山登り
そして、人生ゲームが終わった後、眠たすぎるので、詩織に一言断ってから寝た。詩織は不満げな表情を見せていたが、勝手に押しかけてきたのはあっちの方だし、許されてしかるべきだろう。
そして、1時間後、ガサゴソとした音で目が覚めた。すると、詩織がうちの家を探っていたのだ。
見ると、どうやら、探検をしているらしかった。
「詩織何してるの?」
一応訊いてみる。
「探検だよ!!」
案の定だった。詩織は高校生になってまでも、探検行為が好きらしい。
「詩織……人の家を勝手に荒らさないでよ。おかげで目が覚めちゃったし」
「私もこの家に来れるのもあと何回あるか分からないし、いいでしょ?」
「……全然よくない」
「えー。美香のけち」
そう言って詩織はさらにガサゴソとし始めた。何が楽しいのだろうか……
「そうだ詩織。もし変なことしたら許さないから」
そう、詩織を睨みつけながら言った。
「美香が怖い!!」
と、文句を言っている。でも、私は勝手に早朝に来て勝手に家をあさる詩織が悪いと思う。
そして、詩織はやがて探検に飽きたらしく、私の隣に座ってきた。まあ、流石にこの家に何回も来ているわけだし、そりゃあ飽きるわな。
そして詩織は「ねえ、美香……次は何をする?」と言ってきた。まあ、私は何をしてもいいんだけど……詩織が何んとなくムカつくところだ。
よし! と、
「ゲームしよっか」と、詩織に告げた。
「ゲームはこの前やったじゃん。別のやつにしようよ」
「じゃあ、勉強」
「なんでそうなるの!? 勉強って遊びじゃないじゃん」
「えー、新たな知見が得られて楽しいよ?」
「私は治験なんて言うかっこよさそうな言葉を使うような人嫌です」
「なんでよ! てかかっこよさそうと言うのは認めるんだ……」
「かっこよさそうだからね、かっこいいじゃないから」
「じゃあ、詩織は何がしたいのよ」
「え? 運動」
「……でしょうね」
詩織がそう言わないわけがない。
「私はね、基本インドアなの。家で出来ることを挙げて」
「えー、うーん。でも私は出かけたいからなあ。そうだ! 山登りとかどう? 美香でも楽しめるんじゃない?」
「なんでわざわざ山を歩かなきゃならないの? それで何かを得るわけじゃないじゃん」
それよりはゲームをしたり勉強をしたりする方が楽しい。
「やっぱり詩織は卑屈だね。よし! 外に出かけよう!」
「まあ、山登り程度だったらいいけど、置いていかないでよね」
「もちろん! 私が美香を置いていくことあると思う?」
「……虫取りのこと忘れないでね」
「あれは子供のときだから。最近だとなくない?」
「……学校に置いてかれた時、マラソン大会の時、漫画買いに行った時、カラオケ一緒に行こうとした時」
ダメだ、むしろ詩織に置いてかれた時の方が多い……ダメだ。むしろ信用できない。
「やっぱりやめよう。置いてかれる未来しかない」
「えー、なんでよ!!!!!!!!!!!」
「……もういいよ。詩織のそれには」
本当、高校生にもなってまで、何でこんなにガキっぽいんだろ。
「おいてかないからお願い!!」
そう、詩織は手を前に合わせながら言った。
「分かった。でも、本当の本当において行かないでね」
「分かった!!」
そう、詩織は満面の笑みを見せながら言った。
「じゃあ、早速GO-!!!!」
「詩織、速い。準備位させてよ。それに私まだパジャマだし」
そう、私の着ているピンク色のパジャマを見せながら言った。
「分かった。一分で支度して?」
「出来るか!!!!」
そして私たちは服に着替えて出かける。
すると、その直前に起きてきたお母さんが「どこか行くの?」と訊いてきた。
すると詩織が「山登りだよ」と答え「じゃあ気を付けてね」とお母さんが言った。
そして私たちは家を出た。
「さーて、やっまのっぼり―、やっまのっぼり―」
そう、ハイテンションでスキップしながら詩織はどんどんと進んでいく。
「……詩織足速すぎ。ちょっと速度落として」
私の歩くそれよりも、1.5倍は速い。これでは私が置いてかれるのも時間の問題だ。
「えー、美香めんどくさ」
「めんどくさって、仕方ないじゃん。私は詩織に比べて足が速いわけじゃないんだから」
そう、ため息交じりに行ったら詩織も同じくため息をつきながら綿足のもとまで走ってきた。
「じゃあ、手つなご!」
「うん……だね」
そして私たちは手をつなぎながら、山に向かって住宅街を上へ、上へとぐんぐんと登っていく。
しかし、もうだいぶ疲れてきた。これ、山に着く前に私の体力が尽きるのでは?
詩織はそんな私を気遣うことなく、自分のペースで私を引っ張っていく。
だが、私も詩織にまた歩くペース落として、てか休憩させて!! というのはなんとなく屈辱だから嫌だ。
そしてようやく山のふもとに到着した。今から行く山は山道がしっかりと整備されていて、歩くのに危険はないところだ。少なくとも私たちが小学生の時に言ったあの山に比べたら安全性は段違いだ。
でも、流石に今からこの山を登る。その体力は残されていなかった。
そこで、
「少し休ませて。疲れた」
と、恥を忍んで言った。
「え? 美香? もう疲れたの?」
「うん」
「え。体力なさすぎない?」
「まあ、そう言うと思ってたわ」
「じゃあ、少し休む?」
「え? 詩織にそんな優しさがあるなんて」
「美香は私のことを何だと思ってるの?????」
そして私たちはベンチに座った。
「美香は本当に私に感謝してよ。この寛容な私に」
「本当感謝するわ。詩織が成長してくれていて」
一人で突っ走らないくらいには。
そして私たちは十分程度座りながら会話をし、その後再び山登りを開始した。
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