第12話 ドッジボール1

「おはよー」


 翌日私たちはいつものように学校に行った。


「おはよー美香、今日は朝から体育だよ」

「げ」

「下って何よ」

「休めたりしないかな」

「運動嫌いだから?」

「うん、代わりにゲーム大会にしてほしい」

「それじゃ美香が無双するじゃん」

「それでいいの」

「だめだよ、私が面白くない」

「それは体育でも同じでしょ」

「じゃあ体育嫌いな人と好きな人でアンケートとろうか?」

「それはやめてください」


 絶対負けるに決まっている。小学生なんて大体スポーツ好きでしょ。


「でしょ、ほとんどの人は体育好きなんだよ」

「はー嫌だー」

「なんでそんなに嫌なの? 楽しいじゃん」

「なんかこう運動神経ないし、人の足引っ張るし、ドッジボールなんてなった日にはもう最悪だもん」

「ドッジボール楽しいじゃん」

「そう言えるのは運動できる人だけなんだよ! 詩織」

「えーみんな楽しいと思うけど、避けたりとかさ」

「楽しくなさをわからすために、こいつの運動神経を下げたい」


 そしたら体育が嫌いな理由を分かってくれるだろうし。


「まあ今日も楽しもうよ」

「私は今日も体育の時間が早く過ぎることを祈るよ」

「じゃあ私は体育の時間が永遠に続くよう願うね、学校の楽しみなんて休み時間と体育と給食じゃん」

「やめて。てか、それ学校を否定してない?」

「いや学校は人との付き合い方を学ぶ場だから」

「まあそうなんだけどね」

「だね」

「まあでも勉強する場所だよやっぱり」

「いや、そんなこと言うの詩織ぐらいだから、せめて高校からでしょ」


 それに対して私は「私真面目だから」と言って笑った。


「二人とももうみんな更衣室に行ってるよ」


 そんな私たちに真由子はそう告げた。


「あ、ごめん、今行くわ」





「さーて、楽しむぞー」

「おー」


 そう、棒読みで言った。


「元気ないねえ」

「同じこと二回言わせないでよ」

「ごめんってー」

「しかも今日ドッジボールらしいし、最悪」

「やったー」


 詩織は嫌がる私の横で喜ぶ。まるで私に見せつけるかのように。


「もう知ってたでしょ」


 私は苦い顔をした。


 ほんとに嫌だ体育なんて、何とかさぼれないものかと毎回思う。本当さぼってゲームをしたい。

 てか体育の時間、勉強できないだろうか。なんならこの時間すら無駄に感じてしまう。詩織の楽しそうな顔を見るだけで少し腹が立ってしまうし。



「てか結局的チームか」


 私と真由子VS詩織と言う形になった。


「そうだね、さあ戦いましょうか」

「はーい」

「もっと楽しそうに」

「いえーい」


 変わらず棒読みで言った。


「棒読みやめて」

「はーい。……あっそうだ! お願いがあるんだけど、私には当てないでね」

「当たり前じゃん。当然当てるよ」


 詩織は手加減するつもりはないらしい。


「てか詩織ちゃんはやくなげてー」


 周りからも「そうだそうだ!」という声がする。


「そうだった、早く投げんと、いくよー」


 ボールはさっそく私の方向に来た。


「さっそく!?」


 私はよける。


「えい」


 外野の人が詩織にボールを返す。


「またか」


 そう言いまた避ける。


「詩織―そいつ狙っても大したうまみないよー別のやつ狙おうよ」


 外野がそう言った。まあ正論だ。私なんて戦力外を狙うほうがおかしい。


「いや美香は頭いいからすぐに潰さないと」

「いや頭の良さ関係ないでしょ!」

「そうだー美香最後にしたら全然脅威じゃないよー」

「そうだよ、てかなんで自分下げてるのかわかんないけど」

「てか早く投げて時間が無くなっちゃう」

「美香が言わないでよ」


 まあ確かに私は時間が無垢に過ぎていく方が良いんだけど。


「えい」


 そして詩織が一番強そうな女子を狙ったが、あっさりとそのボールはキャッチされた。


「だから言ったのに」


 詩織がそう呟く。


「よし詩織を狙うぞ」


 と、その女子が言った。


「なんで私なのさ」

「一番強いからでしょ」

「そんな不条理な」

「私狙ってたくせにそんなこと言うな」


 そんなこと言っている間にボールはビュンビュン回っているが、詩織はそれをよけ続ける。


「ほい」


 そして詩織はその球をキャッチした。


「いくよー」

「きゃ」


 その球は一番強そうな女子に当たった、そしてその球は転々とはね、再び詩織側のコートに戻った。


「もう一回」


 また別の女子に当てる。


「さっき私に投げた時はやっぱり手加減してたね」

「当たり前じゃん、私の全力を美香が受けたらケガするって」


 そういい、また別の女子に当てる。そしてその球は今度は転がり私の所に来た。


「よし、ボールゲット」


 そしてコートぎりぎりまでかけて詩織に向かって投げた、当たってくれという一心で。


「え?」


 その球はワンバウンドして詩織の手の中に入っていった。


「ありがとう美香。流石私が見込んだスパイ」


 周りは笑いに包まれる。「言えてるね」「確かに」「当ててよー」などと言う声が周り中からする。


「恥ずかしい」

「ほい」

「え?」


 普通に当たった。油断してた。


「恥ずかしい」



そして私は外野へと向かう。


「ごめん変な当たり方して」


 そう真由子に謝っといた


「あれはひどいって」


そして、詩織が遠くからそう言ってきた。


「当てた張本人は言わないでよ。あそこはせめて空気読んで当てないで欲しかった」

「無茶言わないでよ」

「せめて謝って」

「ごめん」

「いい子」

「うるさい」



「でもさあ本当に恥ずかしい」

「どんまい」


と、真由子が言ったので「うん」と返した。

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