第11話 人生ゲーム2

「噓でしょ、五〇〇万円払うって、さっきからまた払いっぱなしじゃん」

「どんまい」

「でもまだ五〇〇〇万あるから」

「いいなー私三〇〇〇万しか持ってない」

「詩織ちゃん私は二〇〇〇万円なんだよね、くれない?」

「最初断ったじゃん、無理」

「無理かー」


だが、そんな詩織の無双は長くは続かなかった。



「噓でしょ宇宙旅行なんて行きたくないよ、人生ゲームの中で、なんで二五〇〇万円払わなきゃならないんだー、せめて現実で行かせてよー、無重力体験だけでもいいからさ」

「え、もう詩織二五〇〇万円しかないの?」

「泣きたくなるよ、もう無理」

「まだ最後に決算あるしゴール順でもらえるお金変わるから、ね」

「うん一位目指す」


と、詩織を慰めた後、


「いくよー」


と、ルーレットを回した。


 その目は一〇を指している


「あ、ちょうどゴール」


慰めた直後だったのに……


「え、え」


案の定詩織はショックそうな顔をしている。


「なんかごめん」

「う、うんいいよ別に、うん、ね、ははは」

「詩織ちゃんの精神が壊れてる!? てか私もルーレットまわそ」


 その駒は七を指している


「えっと石油を掘り当てた、千二百万円もらえる!?、やったー」

「おめでとう真由子。はははそれに比べて私は宇宙旅行に行って、何してるんだろう、ギャンブルで当てたのに」

「どんまい」

「真由子も宇宙旅行に行けばいい」

「腹黒い!」

「ひどいよ詩織ちゃん」

「よし回すか、まあどうせ二着なんですけどね」


 その駒は一〇を指していた。


「なんでよ、さっき出といてよ」

「どんまい」

「私はゴールしているから、三を選ぶ!」


 ゴールしている人は数字を一つ決めてその数字に泊まれば五〇〇万円もらえる。


「パクった、美香パクった」

「いいでしょ、別に」


 そしてその駒はしっかりと三を指していた。


「よし五〇〇万円ゲット」

「ずるいー、私なんて宇宙旅行行ったのに」

「何回言うのそのネタ」

「いいじゃん! このネタ使わなかったら私死ぬし」

「死ぬの!?」


 真由子は突っ込む。


「うん、精神的にね」

「じゃあ私行くわ」

「6,6、6、6、6、6こい、こい、こい、こい!」

「詩織ちゃん宇宙旅行させようとしてるよね」

「うん、石油掘り当てたんでしょ、そのお金で宇宙旅行したらいいでしょ」

「いや、貯金する」

「あ、三出て豪華パーティ主催してもいいよ」

「腹黒すぎる、これ人の不幸を喜ぶタイプだ」

「いいでしょ、別に不幸物が人の不幸望んでも」

「ひねくれてる」

「てか早く回して」

「わかった」


 そして真由子は回す。


「3か6,3か6」

「やめてよ」


 そしてその針は七を指す。


「くっそーーーーーーー!!!!!!!!」

「悲しまないでよ」

「はーどうせ負ける決算するか」

「えっと私が七〇〇〇万で、真由子が五五〇〇万で詩織が三五〇〇まん」

「倍負けてるじゃん」

「詩織ちゃんギャンブルで運使っちゃったね、てか……もしかして……宇宙旅行行かなくても詩織ちゃん負けてたんじゃ」

「あー知らない知らない、でも真由子には勝ってたから」


「さて勉強に戻りますか」

「もうちょっと余韻に浸らせてよ」

「でも一時間ちょい使っちゃったから、はやくもどらないと」


時間が無くなる。


「こんな小学生いやだ」

「私も同感」

「え? 私だけ」


私って変な小学生だったの?


「もうちょっと話そうよ」

「うん」

「分かった、二十分だけね」

「美香やさしー」


と言って詩織が抱き着いてきた。


「抱きつかないでよ」

「えーいいじゃん」

「うざい」

「でさ人生ゲームちょっと金銭感覚おかしくなかった? 宇宙旅行の金額とか、指輪の値段とか、給料とか」

「確かに宇宙旅行二五〇〇万円は安すぎだし逆に指輪三一五〇万は家買えるじゃん」

「まあスポーツ選手だから」

「そのスポーツ選手の給料三五〇万円だけどね」

「それは安すぎる」

「ほんとにスポーツ選手とサラリーマンを比べると、給料差二〇倍は出るから仕方ないんじゃない?」

「まあそうだけど、何基準なんだろう?」

「楽しめる基準?」

「それ言ったら終わりじゃん」

「というかよく考えたら詩織ちゃんのギャンブルで当たったお金1億円って冷静に考えたら少なくない? 一〇〇〇万円もかけたのに」

「それに関しては私言えるよ」

「いってみなさい」

「子どもにギャンブルは意外に夢がないって教えるためだよ」

「確かに」


正論過ぎる。


「ギャンブルって代々損するっておじさんが言ってた」

「まあそれはそうだねうちでやるとき大体ギャンブルコース、損するし」

「そうなんだ。私運良かったんだね」

「うん」

「じゃそろそろ勉強戻るか」

「え? 詩織が?」


詩織がまさかそんなことを言い出すとは……成長したなあ。


「失礼な! そういう時もあるよ」

「意外だな」

「だって勉強嫌だけどさ、さぼり続けてるわけにはいかないし」

「もしかして美香ちゃんのまじめさが移った?」

「いやいや映らでしょ。この真面目モンスターから」

「そう? 真面目モンスターていうのひどくない?」

「ひどくないと思うよ別に。美香みたいなまじめすぎる人がほかにいるわけないじゃん」

「大人だったらいるよ」

「いや小学生で」

「じゃあいないか、私みたいな天才」


どさくさに紛れて、ドヤっとこう。


「少しは謙遜してよ」

「よくそんな言葉知ってるね詩織」

「舐めないでよ! 全部の言葉を知らないわけじゃないし」

「すごいすごい」


棒読みで言う。煽りだ。


「なめてるよねそれ」

「うん」

「二人とも落ち着いてよ」

「別にけんかしてないし」

「ていうか早く勉強始めようよ」

「そうだね、はじめよう!」







「今日はお疲れさま」

「うん。お疲れ様、楽しかったよ」

「私はは人生ゲームだけ楽しかった」

「勉強は?」

「結構地獄」

「そういえば詩織ちゃん一回も外に出ていかなかったね」

「確かに」

「昨日までの私ではない!!!!」


詩織はムカつくほどドヤった。


「昨日から覚醒してくれてたらなー」

「もうそのことは言わないで」

「いいじゃん、別に」

「悪かったよ、ごめん」

「まあいいけどさ」

「いいんかい」

「まあそれじゃまた学校で」

「うん」

「バイバーイ」

「じゃあね」

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