第10話 人生ゲーム


「ほい、持ってきたよ」

「ありがとう」

「よしやるぞー」

「おー」

「さて私はこれ取ろうかな」

「なんで赤とんの? 私が赤取りたい」

「分かった。あげるよ。まあ駒の色なんてなんでもいいし」

「ありがとう」

「どういたしまして、妹ちゃん」

「誰が妹や!」

「銀行は詩織ちゃんに頼もっか」


そう、真由子が言った。


「なんで?」

「一番計算苦手でしょ」

「確かに詩織がやりなよ」

「分かったよ、仕方ないな」


数の暴力で何とかなったようだ。


「よしめんどくさい計算させてやろう」

「腹黒いよ美香ちゃん」

「いいじゃん、人のためを思ってんだし」


詩織の算数嫌いを直すためだ。私は優しいからね。


「じゃあいいのか」

「まあとりあえずやろ」

「うん」

「えっと指輪を買ったルーレットで出た数字かける給料支払うって、ええ!?こんな序盤に?」

「ドンマイ、諦めて」

「えー」

「でも一が出たらいいから」

「うん、回すねー」


詩織がルーレットを回す。すると、


「えーと九?」


 九が出た。あ、これ。


「えー何円払ったらいいの?」

「自分で考えて、銀行さん」

「えーけち」


 煽るけど、まあでもかわいそうだな。


「えーと三百五十万円かける九だからえーと。うん、計算めんどくさい、えーと三一〇〇万円」

「違う、三一五〇万円」


訂正する。


「くそー、え? 無理じゃん」

「どんまい」

「今六〇万円だから借金三〇九〇万円?借金届十六枚!」


今度はちゃんと計算できるんだね。


「ごめん、どんまいとしかいえない」

「真由子。全財産百五十万円頂戴」

「ごめん無理」

「貧乏人にお恵みを」

「詩織―そういう話じゃないでしょ、それに職業スポーツ選手だからいいでしょ」

「うるさい医者に言われたくない、てかスポーツ選手だからこんな借金背負うことなったし。そんなこと言うんだったら、美香があげてよ、私に」

「でも私お金五0万円しかないよ」

「いいよ、ちょうだい」

「無理」

「二人とも薄情な、いいよもう」

「いや、そう言うゲームだから」

「はーもう負けだ」

「いやまだ序盤だから」






「いやさ全然差縮まらないじゃん」

「詩織ちゃん運悪いね、本当に何回お金払ってるんだろう」


そう、真由子が詩織に同情した。


「ホントだよもう借金二千万あるんだよ、ひどくない?」

「ひどいね」

「うん、でも千万円持ってる人に言われたくない」

「うーんまあ、私運いいからなあ。もう真由子抜かしてるし」

「でもその真由子も六百万持っていると」

「うん」

「格差社会だー!」

「仕方ない仕方ない」

「むかつく」


と、詩織は私の腕をつかんで、引っ張った。それに対し「まあまあ、ゴール前のところで派手なマスがあるからそこで逆転のチャンスあるし」


と、慰めた。


「ここ、ギャンブルコースあるけど、どうしたらいいと思う」

「安全第一だと思う、大体ここ当たるとは思えないし」

「じゃあギャンブルコースいこ」

「真由子の話聞いてた?」

「うん」

「ならなぜ?」

「リスクを冒さないで何が人生なの」

「詩織ちゃん強気だね」

「攻めなければいけないよ、こんな状況だしね」


 そう言って詩織は真由子に借金手形五枚を見せた。


「しかし借金千万円のスポーツ選手ってすごいね」

「本当にね」

「うん」

「じゃあなおさらギャンブルコースだね」

「そうだね」

「さてとさっそくお金かけるか」

「まって私たちのターン飛ばさないでよ」

「あっそっかごめん」



「いくよー、千万円かける」


 そう言い借金手形を五枚とる。


「よく考えたらよく借金苦の人に貸してるよねこの世界の銀行」

「え、ダメなの?」

「ルール的にはいいってなってるけど」


返してもらえる保証なんてないのに。しかもギャンブル。


「じゃあ三と六にかける」

「えっとこれで詩織ちゃんが買ったら五〇〇〇万円か」

「行くよー」


 しかしその数字は五を示していた。


「ぐああ」

「これで詩織ちゃんの借金二〇〇〇万円か」

「無理じゃん、返せないじゃん、てか早くやってー」

「わかった」


 私と真由子はそれぞれルーレットを回す



「よし再び私の番、これが最後の賭けだー! 一億円かける」

「噓でしょ、やけになっちゃった?」

「自暴自棄はいけないよ」

「いやかける、私のすべてをー」


 そして詩織は三に駒を置いた。


「いけぇーーー!!!」


 そして詩織は全力でルーレットを回す。


「これは二? 三?」


 私も真由子もしっかりとルーレットを見る、ルーレットは力をなくし二と三を交互にさしている。


「当たる確率は2分の1、いけー――」


 詩織がそう叫ぶ。

 そしてルーレットは三で止まった。


「きたぁあああああああ!一〇億獲得!」

「えええ!」

「詩織ちゃん八億手にした!?」

「やばいじゃん生涯年収の4倍だよ」

「ギャンブル最高―ーー」

「これもう私たちに勝ち目あるかな」

「ハハハ大富豪に跪け」

「ははあ」

「実に最高の気分だ」

「くそー絶対あと五億稼いでやる」

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