壊滅


「投降しろ、カイト・シュミット。シュヴァルツ・アシェの技術を企業に提供すれば、おまえは自由だ」


 俺はカイトに投降を促す。

 だが、カイトから発せられたのは苛ついたような声色だった。


『……なにもわかってない』

「なに?」

『企業が“俺”も狙う理由だ』


 その言葉と同時、シュヴァルツ・アシェは腕部と脚部から緑色の粒子を噴き出した。

 粒子が失った両腕と両脚を形作るかのように集束していく光景に、俺はがく然となる。


「なんだ? いったいなにが起きて……!!」


 突然、機体が大きく揺れた。

 何事だ、とモニターへ視線をやって、俺は息を呑む。


 シュヴァルツ・アシェが立っていた。両腕と両脚が再生して――。

 いや、再生じゃない。重量系だったはずのパーツは、鳥のような細身のデザインが特徴的な軽量系に変わっていた。

 先ほどの機体の揺れは、シュヴァルツ・アシェに蹴られた振動だ。


(軽量パーツになったから、スピードが上がったのか!!)


 俺が機体の体勢を立て直すのと同時、シュヴァルツ・アシェが上空へ飛び上がる。

 いつの間にか、シュヴァルツ・アシェの両肩には新たな武器が搭載されていた。

 細身の銃身をしたライフル型の武器。ふたつの銃口を基地へ向ける。

 銃口からは稲妻のエネルギー波が発せられ、互いのエネルギー波がぶつかり合い、巨大なプラズマ球体へと変化した。

 そのとき、機体の警告音が鳴り響く。


「強力なプラズマエネルギー……まさか!?」


 嫌な予感がした俺はオペレーターへ通信回線をつなぐ。


『どうした? まさか捕縛対象を取り逃がし――』

「いますぐ基地から脱出しろ!!」

『なにを言って……』

「説明してる暇はない!! とにかく基地から脱出しろ!! そこから離れるんだ!!」


 戸惑っているオペレーターにそれだけ伝えると、俺は機体のブースターを最大出力まで上げる。

 一気に加速させ、シュヴァルツ・アシェから距離を離していく。

 基地の敷地内から飛びだした瞬間、プラズマ球体が発射された。

 基地へ着弾した球体は、渦を巻き、轟音をたてながら大きくなっていく。

 建物を一瞬で瓦礫にし、逃げ遅れたパンツァーと人々を呑み込み、基地周辺にあった木々は衝撃波でなぎ倒される。

 俺は衝撃波で吹っ飛ばされ、機体が操作不能となり、地上へたたきつけられた反動で気を失った。

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