第20話 ララ・オルコット④

「で! で! できましたー!」


 ララは高らかに宣言すると、へなへなと机に突っ伏した。


「おめでとうございます!」


 フィーネは、疲労回復の効果が見込めるハーブティーを、そっと机に置いた。


 翌日の昼、ララはついにマフラーを作り上げた。灰色をベースに、おまけでもらった青い毛糸を差し色に使っている。


「すごい。これは売れますね」


「そうですよね!?」


 一日で作ったとは到底思えないほどの出来栄えだった。


「あ、紅茶ありがとうございます」


 ララは紅茶に気付くと一気に飲み干した。


「昨日も紅茶とスコーン、ありがとうございました。すごく美味しかったです」


「ふふ、良かったです」


 フィーネは笑顔になった。


 ララからカップを回収しようとして、腕を捕まれる。フィーネは何事かと彼女の顔を凝視した。


 すると、ララもそれに応戦するようにフィーネの顔を凝視してくる。


「すいません。今気付いたんですけど、フィーネさんって美人過ぎません?」


「えっ?」


「ああ、突然すみません。ちょっと……、いや、すんごいびっくりしちゃって、思わず」


「い、いえ。ありがとうございます」


 ララといると、フィーネの目は点になったままとなってしまうかもしれない。


 今度はカップの回収に成功し、流しへ持っていく。洗うのは後にして、ララとの会話をしに戻った。


「フィーネさん。マフラーも完成したことですし、私、もう行きます」


「……早いですね」


「私、決断が早いのが取り柄なんです!」


 ララはえっへん、と胸を叩く。


「会って混乱させるのも嫌ですし。このマフラーはフィーネさんから、ということに」


「いえ、それはさすがに……」


(他人からプレゼントなんて、普通受け取らないでしょう……)


 ララには、昨日の出来事は話していない。

 彼女の認識下では、フィーネと息子テオは他人、ということである。どのようにして、他人からのプレゼントを受け取らせようというのだろうか。


「でも……」


 ララは、どうしたらフィーネが受け入れてくれるか、それを考えているようだった。


「……なら、こうしませんか」


 フィーネはある提案をした。




* * *




「ありがとうございました。色々ご迷惑をおかけしました」


「いえ。楽しかったです」


 ララは嵐のようであった。しかし、それが彼女の良い部分である。短い間だったものの、フィーネを楽しませてくれた。


「ララ・オルコット様、クロッツのご利用、誠にありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました」


 フィーネはカーテシーでララを見送った。


 ララは腰を折り挨拶をした。振り返り、庭のアーチの門へ歩く。門はゲートになっていて、その行き先は階段だ。


 今回、階段はクロッツの門の外にはなかった。とすれば、死んだ場所にあるはず。

 聞けば、家の近くに階段があったとララは話した。ゲートは、階段のアーチの門と重なるように繋がっている。


 ララはしっかりとした足取りで、オレンジ色の髪をなびかせながらゲートをくぐっていった。

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