第9話
「
ドラゴニュートが凄まじい咆哮を上げた。空気がビリビリと震える。俺は咄嗟に目と耳を塞いだ。何だか言葉の様に聞こえたけど、気のせいだろう。
耳を塞ぎながら、恐る恐るドラゴニュートを見やる。
目の前に俺よりもはるかに大きなドラゴニュートが立っていた。いや、正確には宙に浮いていた。
俺を見下ろしたドラゴニュートの目は怒りに燃えている。思わずゴゴゴゴゴゴゴという効果音が脳内で再生された。
気迫に押された俺は、尻餅をつくようにトカゲモンスターから転がり落ちる。
どんっ!!
「いててて・・・」
地面に打ち付けた後頭部を擦りながら、俺は半身を起こす。打ち所が悪かったら死んでいたかもしれない。
涙目でドラゴニュートを見ると、爬虫類の冷たい目で三叉の槍の穂先を俺に向けていた。槍の先端が青白く光る。
「*+×¥!!!」
ドラゴニュートが何かを唱えると、三又の槍の先から尖った水が何本も放たれた。
ドスドスドス!!
M字開脚した俺の股間近くに着弾。水のくせに石畳を抉り、石片が俺の足や股間に当たる。撥ねた水滴ですら防塵着を切り裂く。
くうぅ・・・痛ぇ・・・下半身がビリビリする。と同時に生暖かい感触。・・・これが失禁ってヤツか。駄々洩れだ。
「フン!」
ドラゴニュートのヤツ、鼻で笑いながら俺に背中を向けてしまった。もう俺には興味がないってか?とどめを刺すまでもないってか?
く、悔しい。俺は何のためにここにいるんだ?俺が異世界なんかに呼ばれたのはバカにされるためだったのかよ?
悔しくて情けなくて脳みそが沸騰しそうだった。下半身がメチャメチャ痛いが、頭が熱くなっているので痛みも熱さとしか感じない。頭のてっぺんからつま先まで、燃えるように熱い。うおぉぉぉ~と叫びそうになった。
ふいに「ハートは熱く、頭はクールに」という言葉が頭に描かれた。
そうだ。冷静になるんだ。考えろ。
一服でもして一息入れたいところだが・・・ん?一服?
俺は胸のポケットを探る。そういえば
ニヤリ。
一泡吹かせてやる。クソの役にも立たちゃしねえ、なんて思って悪かった。役に立ちそうだぞ「サンプル」くん。
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