第57話 終わる世界(上)
☆(糸魚川モナ)サイド☆
勉強してから休み時間になりトイレに籠っていると親父からメッセージが来た。
滅茶苦茶に久々で驚愕しながら開くと。
そこに(精神科病院に入院する事にした)と書かれていた。
アタシは驚きながらその言葉に(そうなのか)と返事を書いてから送信した。
(モナはモナらしく生きてほしい)
(.....アンタにとっては凄い事だよ。アタシは応援する)
(そうだな。ありがとう)
そんな短い会話だが終わった。
それからアタシは便座から立ち上がってからそのまま表に出る。
すると手を洗う場所に萌葉が居た。
少しだけ疲れた感じでだ。
「.....アンタも大変だな」
「.....まあそうね。.....だけどこれはこれで楽しいけど」
「そう思うなら良かったよ」
「だけどまあ疲れる。.....変わってほしいぐらい」
「.....そうだな。アタシが代われるなら代わってやっても良いけどな」
言いながらアタシは苦笑する。
すると萌葉が「?」を浮かべてアタシの顔をジッと見てきた。
それから「何かあった?」と言ってくる。
何かとは.....ああそうか。
「.....やけに元気そうね」
「ああ.....まあな。ちょっとだけ良い事があった」
「そう。.....その思いは大切にするべきね」
「有難うな。萌葉」
「.....私は何もしてない。励ましただけ。.....ただ.....貴方にも同じ思いはしてほしくないから」
言いながら萌葉は「でも周りがようやっと整ってきたから」と言葉を発しながら水の流れを見る。
そして水を止めた。
それから「モナ。これから先も色々あるかもだけど乗り越えられそう」と聞いてきた。
私は「そうだな。もう大丈夫だ。お前も居るし康太も居るしな」と返事をする。
「私は何の役にも立たないから」
「案外そう言うけどお前も相当だぞ。.....それに心配もしてくれたじゃないか」
「.....」
「気まぐれとは言わせないぞ」
「.....貴方は本当におせっかいね」
萌葉は顔を上げながら苦笑する。
「かもな」とアタシは同じ様に苦笑いを浮かべながらそのまま教室に戻る。
それから放課後になり.....康太の家に向かう。
するとこの時に知ったのだが康太の家の周りで不審火があっていた。
嫌な予感が一瞬したが。
(まさかな)と思いあまり気にしなかった。
☆
「よお」
「.....よ。学校はどうだった」
「学校か。まあまあだな」
「ぼちぼちね」
そんな会話を康太の家でする。
そして玄関から中に入った。
するとテレビが点いており例のニュースが報道されていた。
不審火。
つまりゴミ捨て場とか燃える火事だ。
「酷い事をするもんだ」
「.....そうね」
「そうだな.....」
その事に肩をすくめながら康太はアタシ達を見てくる。
そして座る様に促された。
アタシは「サンキュな。康太」と言いながら腰掛ける。
すると萌葉が「紅茶淹れようかな」と言いながら立ち上がる。
「適当にやってくれ」
「ありがとう。康太」
「アタシも貰えるかな」
「分かった。モナ」
そしてアタシは康太を見る。
康太は上の空になる感じで居た。
アタシはその顔を見ながら「大丈夫か康太?」と聞く。
すると康太は「まあ死んでないからな」と言いつつ口角を上げた。
「そうだけど.....」
「.....俺は大丈夫だ。お前の心配する程じゃない」
「そうか?なら良いけど.....」
「.....だけどそうは言うが心は折れているけどな」
言いながら康太は苦笑いを浮かべながらまた肩をすくめた。
アタシはその言葉に「まあな。アタシのせいだな」と自分をあざけた。
康太は「油断するもんだろ。あの時は。お前を守れなかったのが.....本当に痛恨だけどな」とまた悲しげな顔をする。
康太の心が折れた原因だ。
「.....なあ。康太」
「何だ?モナ」
「.....アタシはお前に学校に来てほしい」
「.....行けないな。.....俺にはそんな価値はないよ」
康太は深刻そうな顔をする。
それから自分をあざけた。
アタシはその顔を見ながら涙を浮かべる。
そしてアタシは康太を抱き締めた。
「康太。気持ちは分からなくもない。今度実は体育祭があってな」
「そうなんだな。.....ああ。そういう時期だな」
「その日だけでも来ないか。.....多分頭がすっきりするぞ」
「.....そうだな」
「ああ。きっと来いよ」
そしてアタシは康太を見る。
康太は複雑な顔をしながら「そういえば矢住とかは?」と聞いてくる。
アタシは「ちょっと遅れて来る。モテモテだな康太は」とジト目をした。
康太は「そうか?」という感じで見てくる。
最近、康太にジョークが通じない。
少しだけ寂しい感じだ。
「.....まあ後で来るから。期待してな」
「そうだな。そこそこ期待するよ」
康太は言いながら笑みを浮かべる。
少しだけ疲れた様な笑みを。
その姿を見るのがアタシも苦痛だった。
元気になってほしい一心だが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます