第56話 友人という価値
☆(田中萌葉)サイド☆
私とモナが代わり代わりに康太の家に行く事になった。
正直(私なんかがそんな事をして良いのか)と思ったが.....まあこれも運命で仕方が無いだろう。
私はそう考えながら教室で教科書を読んでいると「はろぅ」と声がした。
顔を上げると.....確か矢住さん?が居た。
そんな矢住さんは私に笑顔を浮かべている。
「モナさんの行方は知らない?」
「.....私はモナの友人だけど知らない。最近の彼女の動きは把握できない」
「そっかそっか。残念」
「.....矢住さんはモナに用事?」
「そうだね。強いて言えば.....モナさんを襲撃したい」
目をパチクリしてから唖然とする。
(何て言った?)と思いながら。
すると矢住さんは「まあそれは冗談だけどね」と笑顔になる。
それから「モナさんが追われている身になっているから可哀想だなって思って」と柔和になる。
私は「ああ。人気ですから」と答える。
「彼女の色々な事は.....なかなか掴めないからねぇ」
「そうだね。確かに彼女はそういう事を披露する様な人間では無いから」
「.....田中さんは彼女と仲が良いんだっけ?」
「.....色々あったから一応は仲は深まったけど」
「そうなんだね。じゃあ彼女の事はパーペキに知っているんだ?」
「それは言い過ぎかな。私は知らない部分もある。例えば居場所とか」
そう言いながら私は教科書に目を通す。
すると「君もなかなかミステリアスな人間だけどね」と矢住さんが言う。
ミステリアスというかただ隠しているだけだ。
本性をであるが。
だけどそんなもんバラしても何の価値もない。
「貴方は何故.....お嬢様学校を捨てたの?」
「.....こっちの方が楽しそうだからって思っただけ。.....何処に行っても同じだから」
「そっか。.....でもきっと楽しくなるよ」
「.....そうね。楽しくなればいいけど」
「貴方は良い人だから」
「それは言い過ぎだね。.....私は悪夢を見せるだけだから」
「まさか。君は本当に良い人だよ。ツンデレ?っていうのかな」
「.....」
確かにこれはツンデレかもしれないけど。
それは言い過ぎだと思う。
思いながら私は矢住さんを見る。
すると矢住さんはニコニコしながら「ねえねえ。お友達になってくれない?」と話してきた。
「.....私はお友達はもういっぱいいっぱいなんだけど」
「まあまあそう言わず。私はお友達になってほしいな」
「.....そう。.....ならなろうか」
「そうだね」
こんな野郎と友人なんてそんな事をしても。
思いながら私は矢住さんを見る。
すると矢住さんは「貴方は生徒会長にならないの?もしくは役員とか」と聞いてくる。
私は教科書を閉じた。
それから矢住さんを見る。
「私にはそういうのは似合わないから」
「何故?逆に」
「.....家庭の事情もそうだけど.....今までやってきた事が薄汚れているから」
「.....そっか。じゃあ無理は言わない」
「.....」
周りを見る。
若干私の事を知っている様な感じが見受けられた。
やはり学校を超えてもこういう事は起こるか。
そう考えていると女子達が話し掛けてきた。
(もしかして)と思いながらその姿を見たが予想外の反応だった。
「田中さん。.....私達もお友達になってくれない?」
「.....何故?私は.....言った通りいっぱいだから」
「うん。知ってる。.....でも.....私達はクラスメイトだから」
「!?」
クラスメイトだから友人に?
そんな頭のおかしい事で友人に?
そんな事今まで一度も無かったのだが。
思いながら私は驚く。
「っていう感じだから。お姫さま」
「.....貴方達は頭がおかしい」
「私達はクラスを尊重したいから」
「本当に頭おかしい」
そんな事を呟きながら私達は友人になった。
そうして話していると康太からメッセージが届いた。
(今日は誰が来るんだ?)という感じでだ。
私はメッセージを飛ばす。
それから返事を待っていると矢住さんが「康太くんかな?」と尋ねてきた。
私は「まあ」と返事をする。
「そっか。.....康太くんにメッセージ送ってくれる?」
「それはどんなメッセージを」
「クラスメイトが待ってるよ。早く学校に来てねってね」
「.....」
このクラスは本当に違和感があるな。
思いながら私はその姿に少しだけ笑みながら「分かった」と返事をする。
それから康太にメッセージを送る。
するとモナが帰って来た。
「おー。モナちゃん」
「.....な、何だ。お前ら」
「田中さんと友人の件で談笑していたの」
「.....そうなのか?」
「まあそう」
そんな返事をしながらモナを見た。
するとモナは苦笑いで反応をしてから「良かったな」と話してくる。
私は「何が?」と聞いてみると。
モナは「私以外にも笑顔を見せれて」とニヤッとした。
私は「そうね」とだけ返事をした。
「.....笑えるんじゃないか。お前も」
「見ていたの」
「そうだな。.....丁度見ていた」
「.....そう」
私はモナにそう返事をしながらこの場に居る女子達を見る。
女子達は穏やかな感じで私を見ていた。
正直。
こんな私を受け入れるその事が信じられない。
だけど何だか悪い気はしない。
「なあ。お前ら」
「.....?」
「もっと田中を弄って良いぞ」
「え?本当に?」
「冗談でもよして。それは」
それからモナは笑う。
私はその姿に苦笑いを浮かべる。
そして私達は別れてからそのまま席に腰掛ける。
そうしてから次の授業を受ける。
体育祭がある事を知った。
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