第53話 燃え尽きた世界と心配の心

☆(田中萌葉)サイド☆


康太の心が折れた。

正確に言えば康太自体が.....引きこもりになってしまった。

私はその事に本当に反省の思いしかない。

だってそうだろう。

私が油断しなければこんな目に.....遭わなかったのだ。


モナの視力も落ちる事もなかった。

全て私の責任だ。

だからこそ.....今までのことも考えて責任を取らなければと思うのだが。

考えながら私は眉を顰めた。

それから自室を後にする。


「お嬢様」


そうしているとそう石丸に声を掛けられた。

私は「何。石丸」と聞いてみる。

すると石丸は「お嬢様のせいではないです。.....私の責任です。全ては」と目線を私から逸らしながら外を見る。

私はその言葉に「そんな訳ない。あくまで私の責任。単独行動をしなければこんな事にはならなかったのだから」と告げる。


「.....お嬢様.....」


そんな会話をしていると「そうね。貴方のせいかもね」と聞こえた。

石丸と共に背後を見ると母親が立っている。

その母親は私を見つめていた。


私はイラッとしながら「そうですね」と答える。

だが次の瞬間。

母親は「でも果たしてそれが全てかしら?」と聞いてきた。

私は「?」を浮かべながらいると母親は「貴方は自分が悪いと抱え込みやすいから。.....周りを多少は見たら?」と言葉を発してから去って行った。


「.....」

「.....お嬢様.....」

「あのクソババア。.....でもまあそうかもね」


言いながら私は「石丸。私は全てを自分のせいにするのは止す。.....遠藤とかも悪いって思わないとね」と切り出す。

すると石丸は「そうですね」と柔和な顔をしてくれた。

それから満面の笑顔になる。


「.....私は自分のせいばかりにしていた。.....だけどそれは違うのかもね」

「そうですね。.....この世の全てがお嬢様のせいではないです」

「.....そう」


それから私は「石丸。今から送ってくれない?」と言葉を発する。

すると石丸は「喜んで」と答えてくれた。

そして私は準備をしてから車に乗り康太の家に向かう。

そうしてから康太の家のインターフォンを鳴らすと康太が出て来た。

私を見ながら目を丸くする。


「何だ?.....どうしたんだ?田中」

「.....お見舞いの意味で来た。家に上がっても良い?」

「.....あ、ああ」


そして私は石丸を見る。

すると康太は「石丸さんもどうですか?」と聞いてきた。

石丸は「いえ。お嬢様を任せます。康太様」と言いながら頭を下げて車に乗った。

私は「まああんな感じだから。石丸の本当の姿はね」と肩をすくめる。

康太は目を丸くした。


「.....そうか」

「.....康太。それよりも貴方は大丈夫?」

「.....誰かを傷付けるから家からは出たくないんだ」

「そんな訳ないでしょ。康太。.....貴方らしくない」


私はそう言いながら康太を見る。

康太は苦笑いを浮かべながら「サンキューな。そう言ってくれて」と笑みを浮かべながら私を見る。

私は「これでも貴方に好きって言った様な人間だから。.....貴方は自信を持って良いんだよ」と真剣な顔で反応する。


「.....サンキューな。そう言ってくれて。嬉しいよ」

「私はあくまでこういう事しかできないけど。.....だけど多少なりとも貴方の為になればって思うから」

「.....お前も変わったよな」

「私は変わったんじゃない。あくまで(貴方に変えられた)が正しいけど」


私は「寒いから中に入りましょう」と言った。

そして康太を促してから中に入る。

室内は.....少しだけむわっとしていた。

どうも本当に康太は引きこもっているらしい。

私は溜息を吐いた。


「衣類とか片付けて良い?康太」

「.....片付け?」

「うん。私こういうの許せないから。.....一人暮らしのサガで」

「.....じゃあ任せる。.....俺もう気力が湧かないから」

「そっか。.....まあそれも仕方がないね。.....病院とか行ったの?」


首を振る康太。

「じゃあ病院に行った方が良いんじゃない?」と私は提案する。

すると康太は「今探してる。病院を。多分鬱病だと思うし」と答えた。

「決めつけるのは良くないけど何らかの精神の病だろうから」ともだが。


「私もそう思う。このままじゃ良くない」

「.....そうだな.....ありがとう。田中」

「私は何もしてない。.....何も。力にならなかった」

「.....」


すると康太が私を抱きしめてきた。

それから頭を撫でてくる。

私は「ちょっと。彼女でもないのに」と言うが康太は頭を撫でてきた。

「多少なりなら良いだろ」と言いながらだ。

やはり康太の調子がおかしい気がする。


「.....康太。.....私は貴方が心配。.....こんな事をしていてそんな気分になる資格なんてないけど」

「そうか。.....そうか。まあでもお前は重々反省しているしな」

「それが?それが何だっていうの?.....私の罪は重いわ。.....今回もね」

「.....」


私は涙を浮かべる。

それから歯を食いしばった。

もう私には.....生きる資格もないのかもしれない。

全てを片してから死のう。

思いながら居ると「お前が死んだら困る」と見透かされた様に言われた。


「.....え?」

「.....俺はお前に死んでもらっては困るって思っている。.....良い友人.....じゃない。パートナーだぞ。萌葉」

「.....康太.....今、萌葉って.....」

「.....もう良いんじゃないかって思って呼んだ。萌葉。死なないでくれ」

「康太.....」


涙をハンカチで拭きながら私は衣類を拾った。

それから「じゃあ片そうか」と笑みを浮かべる。

その言葉に康太は「そうだな。久々に」と動き出した。

そして1時間ぐらいかけてからだが。

私達は衣類を散らかった部屋を片した。

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