第50話 夏川康太への復讐(中(4))
☆(糸魚川モナ)サイド☆
旅館の食事を楽しんだアタシ達は翌日.....というか。
萌葉がアタシと康太を2人きりにしてくれて何処かに行ってしまった。
アタシと康太は2人で久々に探索する。
デートみたいな感じだ。
「田中.....も結構変わったよな」
「アイツが変わったのは結構前じゃね?嬉しいんだけどよ」
「そうだな。結構前だよな.....もう何週間か経つか?」
「そうだな.....1年にしてみりゃ短いか」
「まあ確かにな」
そんな会話をしながらアタシは康太に寄り添う。
康太はアタシを見ながら笑顔になる。
アタシはそれだけで幸せだった。
それからアタシ達は.....射的を見つける。
「康太。射的があるぞ」
「そうだな。.....やってみるか?」
「お金が勿体無いな。眺めるだけでも十分だ」
「.....そうか?なら良いけど」
それから射的客を眺める。
そして暫くしてから動き出した。
でも射的したかったな。
思いながらアタシは「いけないいけない」と思いながらそのまま笑みを浮かべる。
すると康太がいきなり立ち止まった。
「康太?どうした?」
「やっぱり俺は射的がしたい」
「え?!.....あ、うん.....」
康太の力強い顔にアタシは赤面する。
それから俯いてモジモジしながらその場所に戻るとおじさんが「おや?さっきのカップルじゃねーか!」と笑顔で言ってきた。
アタシは少しだけ赤面する。
やはりカップルと力強く言われると.....そうなるよな。
「じゃあやってみるか」
「そうだな.....えっと.....料金は.....」
「はっはっは!実はカップル割しててな!二人分貰うのが当然だが一人分の料金で良いぞ!」
アタシは驚きながらおじさんを見る。
するとおじさんは射的の銃を康太に渡してきながら「彼女の為に良い物狙えよ!」と笑顔になってくる。
アタシは康太の姿を見る。
康太は苦笑しながら銃を構えた。
「おじさん。ありがとう」
「良いって事よ。っていうか割引しているだけだぞ」
言いながら康太は銃を構える。
そしてぬいぐるみを撃ってから落とした。
アタシは「凄いな康太!?」と愕然とする。
すると康太は「まあ.....無駄に遊んでいた訳じゃないしな。不良時代に」と話ながら苦笑いを浮かべる。
「あ.....す、すまん」
「いや。そんなもんだ。人ってのはな」
そして康太は銃を置く。
それから「モナはどうする?」と言い始める。
アタシはその姿に「落とせるかな」とぬいぐるみを康太に預ける。
そして構えてみた。
「お嬢ちゃん。落とせなくても景品はあるぞ!あっはっは!」
おじさんは高笑いでそう言ってきた。
アタシはその言葉に少しだけホッとしながらそのまま銃を撃つが。
何も落とせなかった。
やっぱり苦手だなこういうの。
考えながらアタシは苦笑いを浮かべる。
すると座っていたおじさんが立ち上がって拍手した。
「だけどナイスプレーだ。.....景品はこれで良いか!」
そしておじさんは何か.....2つのロケットペンダントのネックレスをくれた。
高そうな景品に見える。
(良いのか?)と思いながらアタシはおじさんを見る。
「少しだけでも役立ててもらえればな」とおじさんは言った。
「.....これ.....真珠とかですよね?」
「少しだけ高い感じだ。これは立派な高い景品だしな。でもアンタらに役立ててもらえるなら幸せだ」
「.....おじさん.....」
「まあ安物で申し訳ないけど。おじさんもアンタらと同じ感じでカミさんに出会った。アンタらの幸せを祈ってる」
そう言いながらおじさんはブンブンと手を振ってくれた。
アタシ達はそのネックレスを装着する。
そしておじさんに挨拶をしてから互いに笑み合い歩き出した.....その時。
康太のスマホに電話がかかってきた。
「.....はい。もしもし?石丸さん.....どうか.....」
そこまで言ってから康太は深刻な顔をした。
それから「.....それで田中は」と聞く。
アタシは真剣な顔で「?」を浮かべる。
何があったのだろうか。
「.....モナ」
「.....うん」
「田中が連れ去られたかもしれない」
「.....え.....」
「田中が居なくなったらしい。目の前からいきなり」
「.....!」
アタシは「待て。それじゃ警察に」と言う。
「警察には石丸さんが既に問い合わせたらしい。だけど俺達が行かないといけないかもしれない。時間に猶予がないかもしれない」と康太は答える。
アタシはその言葉に「.....康太。どうする?」と話す。
そうしていると康太のスマホにまた電話がかかってきた。
「.....はい.....」
『よお。夏川康太』
「.....お前.....遠藤邦彦(えんどうくにひこ)か。.....これは田中の電話番号だ。.....何でお前が出る」
『その田中さんって奴だけどよ。すぐに股を広げる女っていうじゃねーか。俺らさ。お前に昔の復讐、今の依頼も兼ねてお前をぶっ殺そうって思ってな。.....聞けばお前は有名人じゃねーか最近はよ。.....糸魚川モナと付き合っているんだって?』
「.....そうだな」
『お前らにはたんと恨みがある。.....田中を貰うぞ』
「貴様。何考えてんだ!!!!!」と絶叫する康太。
野次馬が立ち止まりながら康太を見る。
すると遠藤とかいう奴が『まあ落ち着けって』と言ってくる。
康太は眉を顰めた。
「.....テメェ.....」
『地獄に落ちてみろよお前も。お前が俺にした事とか過去が全て拭えるって思うな』
「.....」
康太は言われてから頭に手を添える。
それから唇を噛み締めた。
康太の昔の事?
何が起こっているのか分からないが.....。
「.....田中が無事じゃないならタダじゃおかないぞ」
『来れるもんなら来いよ。この場所でお前も地獄を見るぞ』
「.....」
『じゃあな。お前の望みの田中さんは1丁目の廃ビルだ』
「.....」
康太は真剣な顔のまま前を見据える。
そして目を閉じてから真剣な顔をした。
それからまた目を開いてから「お前は悪魔だな。.....待ってろ。直ぐに行ってから殺してやるよ」と康太は話した。
「待て康太。敵の罠だ!絶対に!」
「だけどこのままじゃ田中が救えない。.....それに俺の過去の事で.....危険な目にこれ以上遭わせられない」
「.....康太.....」
「.....行くよ。俺は」
そして康太は「すまないな。デートの途中で」と切り出す。
アタシはその姿に「当然アタシも行く」と言うが。
康太は首を振った。
それから「お前まで危険に晒せない」と言ってくる。
知った事か。
「康太。アタシはお前自身だ」
「.....え?」
「アタシの身も心もお前に捧げる。.....お前が死ぬ時も一緒だ」
「.....」
「.....だからアタシを連れて行け。康太が居なくなる世界ならアタシは死んでやる」
「ありがとう。そう言ってくれてな。.....分かった。一緒に行こう」
康太は渋々ながら納得してくれた。
それからアタシ達はそのまま駆け出して行く。
確かこの町の一丁目の廃ビルだったな。
絶対に康太を危険な目に晒してはならない。
思いながらアタシ達は駆け出した。
その遠藤とかいう奴は許さない。
そう思いながら。
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