第49話 夏川康太への復讐(中(3))

☆(夏川康太)サイド☆


空がこんなに綺麗だとは思わなかった。

そんな事を思いながら俺は露天風呂に入る。

しかし本当に良い温泉だな。

何だか銅の力とか聞いたが.....その点はよく分からないが。

でも良い湯だ。


「よし」


そんな事を呟きながら居ると露天風呂にお爺さんが入って来た。

それから俺を見ながら「おや。先客の方が」と言いながら浸かっている。

俺はその姿を見ながら景色を見ていると「ここの景色は絶景のいい景色でしょう」と声がした。

俺はお爺さんを見る。


「はい。絶景です。本当に良い景色ですね」

「私は30年ぐらい通っていますが本当に良い景色です」

「そうなんですね」

「そうですね。.....まあだからなんだという話なのですが」

「いえいえ。人生の先輩だ」

「そんな大袈裟なものではないですよ」


お爺さんは苦笑しながら湯船にしっかり浸かっている。

俺はその姿を見ながら上がろうと思ったが止めてからまた浸かる。

それから目を閉じて考えているとお爺さんが「貴方はもしかして夏川康太さんですか?」と声がした。

顔を上げて驚愕する俺。


「ああ。やはりですね。.....覚えていますか?私は当時の校長だったのですが」

「いや。.....えっと.....」

「そうですよね。普通は校長の顔なんか覚えてませんよね。あはは。でも私は覚えています。貴方は.....有名な人でしたから」

「そうなんですね.....」

「私は貴方の顔を見てから「ああ。彼だな」と思いました。.....でも成長しましたね。貴方も」

「身も心もという訳にはいかないですけどね」


そんな言葉を発しながら俺は苦笑い。

すると校長先生は「いえいえ。悪い事。犯罪にならなければ大丈夫ですよ」と校長先生らしからぬ事を言った。

俺は更に苦笑いを浮かべながら「校長先生がそんな事を言って良いんですか?」と言った。

すると校長先生は「私の息子も荒っぽかったのです。.....思春期だったからだとは思いますが。.....だからそんな彼に言いました。.....犯罪を犯さなければ何でもして良いと。人生は一度きりだってね」と話す。


「.....人生は一度きりですか」

「そうですよ。.....青春も一度きりです。.....後悔のない様に動いて下さい。貴方はもうそんな顔つきでもないですけどね」

「それは.....」

「今は悪い状況かもしれませんけどね。.....思春期で。.....でもきっと晴れは来ますから信じて動いて下さい」


校長先生はそこまで話してから「ではお先に」と立ち上がってから会釈をしてそのまま去って行った。

俺はその顔を見ながら「.....」と考える。

それから「そうか」と呟きながら俺も上がろうと思いそのままその場を去った。



「コーヒー牛乳美味いな」


そんな事を言いながら俺はコーヒー牛乳を飲む。

それから走って行く子供を見ながら浴衣姿で卓球がある場所に行ってみた。

身体を動かすのには最適だが.....。

そう思いながら見ているとそこに田中とモナと石丸さんが居た。

俺を見ながら手を振っている。


「よお。大丈夫か」

「大丈夫だ。.....お前はいい湯だったか?」

「そうだな。.....ちょっと昔の知り合いにも会ったしな」

「昔の知り合い?」

「.....昔の教員だ」


そう言いながら俺は苦笑いを浮かべる。

モナは驚きながら田中と顔を見合わせる。

それから卓球の球と板を置きながら「どんな話をしたんだ?」と聞いてくるモナ。

俺は肩をすくめてから「色々な。.....殆どが俺の人生相談みたいな感じだった」と答えながら卓球の板を手に取る。


「そうなのね」

「.....そうだな。田中」

「.....んじゃまあ良い話ができた所で勝負しないか?康太」

「そうだな。.....せっかくだから何か賭けるか?」

「何を?」


「そうだな。なら誰かに好きな事をできるっていうのは?」と言ってみる。

するとモナは「なんでも!?」という感じで反応した。

モヤモヤと何かを浮かべて赤面するモナ。

俺は「犯罪にならない程度でな」と苦笑い。


「そして性的じゃないものでな。俺達はまだそんな年齢じゃない」

「そ、そうか。.....確かにな。.....じゃあ指名した相手に何か奢るとかは?」

「そうだな。それ良いかもな」

「じゃあ私も参加する」

「お嬢様が参加されるのでしたら私も」

「それじゃあみんなでやってみますか.....」


そして条件の中、試合をした結果。

意外にも田中が運?もあって勝利した。

俺は田中を見ながら「何をするんだ?」と聞いてみる。

すると「そうね」と言ってから田中は「石丸」と石丸さんを見る。


「.....はい?お嬢様」

「私は貴方に日頃の感謝を伝える。.....だから」


そう言いながら浴衣から何かを取り出す田中。

それから頬を掻きながら「.....ありがとう。日頃いつも頑張ってくれて」と田中は大きいハンカチを石丸さんに渡す。

その姿に石丸さんは驚いていた。

「お嬢様.....」と言いながらであるが。


「ゴメンなさい。今渡す事になるとは思ってなくて。.....包んでない」

「.....良いんです。.....お嬢様。ありがとうございます」


俺達も意外性を持ってその姿を見る。

そして俺とモナは顔を見合わせてから田中を見た。

何か良い景色に微笑みが浮かんだ。

それから.....翌日になったのだが。


田中が1人で歩いていて温泉街で誘拐された。


そして.....。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る