第47話 夏川康太への復讐(中(1))
気が付くと俺は病院のベッド上に居た。
これは夢?
俺は痛みに少しだけ悶えながら起き上がる。
待てどうなっている。
思いながら俺は点滴を見ながら周りを見渡す。
「.....?」
蛍光灯の光が見えた。
そしてICUっぽい部屋が見えた。
そこでは.....田中がICUに入っている姿が見える。
俺はゾッとした。
それから(これは夢だよな?)と再確認しながら俺は点滴を外しながら立ち上がる。一歩ずつその場所まで歩くが辿り着くところは遠くなっていく。
つまり近付けない。
「まさか.....そんな馬鹿な」
そんな事を呟きながら俺は手を伸ばす。
だがその場所は消えて無くなっていった。
俺は「田中ぁ!!!!!」と叫ぶ。
でも届かない。
何が起こっている.....!
☆
悪夢だった。
何が悪夢かといえば田中が倒れて入院している悪夢。
一体何でその場所が俺の瞳に映ったのかが分からないが.....だけど。
本当に悪夢だった。
俺は冷や汗で濡れたシャツを見ながら目の前を見る。
「.....旅行前になんて夢を見ているんだ俺は?」
そんな事を呟きながら起き上がる。
約束の時間まで3時間もある。
今の時刻は午前6時である。
俺はゆっくりと起き上がった。
それから盛大に溜息を吐く。
もう寝れる自信はない。
「.....気晴らしに外でも歩くか」
そんな事を呟きながら俺は着替えてから上着を羽織る。
それから歩いているとマラソンをしている人や。
ラジオ体操をしているお爺ちゃんお婆ちゃんを見かけた。
俺はその姿を微笑ましく見ながら歩く。
しかし何だったのだあれは。
「マジに嫌な予感しかしないな」
そんな事を言いながら歩いていると。
目の前から黒髪の少女が.....っていうか。
田中萌葉が歩いて来た。
俺を見てから驚く。
「何をしているの康太。こんな朝早くから」
「それはこっちのセリフだ。何でこんな時間に.....」
「.....私はちょっと悪夢を見たから」
「.....奇遇だな?俺も悪夢を見た」
そんな会話をしながら居ると萌葉は目を丸くした。
それから「そう」と返事をする。
そして公園に目をやった。
「座りましょうか」
「え?ああ.....まあ良いが」
「夢の話がしたい」
「.....そうか。なら良いけど.....」
そして俺達は爺さん婆さんがラジオ体操をしている中。
公園のベンチに腰掛ける。
それから「大丈夫?」と聞いてきた田中に「ああ。死んでない」と答えた。
そうしてから「お前こそ大丈夫か」と聞いてみる。
「私も死んでないから」
「.....そうか。.....因みにどういう悪夢だった」
「.....私が入院している夢だった。.....死にそうになっている夢」
「.....」
同じ夢に近い。
俺は(うーん)と悩みながら田中を見る。
田中は「康太はどんな夢だったの」と聞いてくる。
その言葉に包み隠さず話した。
すると田中は「.....そっか」と反応する。
「私が入院している夢か。.....やっぱり何かおかしいね」
「お前は怖くないのか?そんな夢を見て」
「.....怖いっていうか。.....私への天罰だと思えば怖さはあまり感じない」
「.....天罰?」
「私は康太に酷い事をしたしね」
「それと死ぬ事は話が別だろ」と俺は言うが。
田中は「そうかな」と肩を竦めるぐらいの反応しかしない。
俺はその様子に「お前はもうちょい危機感を持て」と説得するがその言葉に田中は「どっちかと言えば死ぬ運命だった。だから康太に救われたって感じだから」と苦笑した。
「.....」
「.....それを考えるとね。だけど世界はそんな簡単には反転しないよ。大丈夫。正夢とかじゃないんだから」
「.....まあな。.....でも.....自分を大切にしろ」
「優しいね。康太は」
「俺は優しいんじゃなくてお前の危機管理が足りなさすぎて絶句している」
「でも康太が守ってくれるんでしょ?昔みたいに」
俺は盛大に溜息を吐いた。
それから「まあな」と言葉を発する。
田中は目の前の爺婆を見つめながら「時には無慈悲になるのも大切だよ。康太」と俺に説得してきた。
「まあでも無慈悲にはなれないな。俺の性格上」
「康太は優しすぎる部分があるから。だから気を付けないとね」
「.....」
「優しさだけが全てじゃない」
「.....」
その言葉に田中を見る。
すると田中は前を見るのを止めてから「これは私の親から教わったから」と言いながら立ち上がった。
それから田中は俺を見ながら「康太。行こうか」と手を差し伸ばしてくる。
俺は「そうだな。まあ.....座っててもどうしようもない」と手を握る。
そしてそのまま立ち上がってから公園から出た。
「康太はこの後どうするの」
「俺か?俺は.....コンビニに寄ろうかと思って」
「そうなんだね。じゃあ一緒に行こうかな」
「お前も何か買いたいのか?」
「私はコーヒーが欲しい。.....ブラックの」
そう言いながら田中は笑みを浮かべる。
俺は(ブラックか.....)と思いながらその姿を見る。
そして俺は田中に少しだけ柔和になってから俺達はコンビニにやって来る。
俺もブラックコーヒーを買ったが情けないが甘くしないと飲めない。
味蕾がまだしっかりしているしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます