第43話 本当の幸せとは

銃刀法違反など。

基本的に包丁とかを鞄に入れて不用意に持ち歩くと.....こうなる。

まあ確かにその通りだが。

糸魚川の親父は相当精神を病んでいると思う。


思いながら警察署の待合室で待機しているとモナが駆け足でやって来た。

それから俺を見ながら歯を食いしばる。

「あのクソッタレ野郎は」と怒りを抑える事ができない感じで話してくる。

俺は「今は取り調べを受けているよ」と答えた。


「何なんだクソが.....マジに.....」

「分からなくもないけどな。本気で償いたい様に見えたし。.....追い詰められているんじゃないか」

「だから?.....だから情けで許すのか康太は」

「許したわけじゃない。.....だけどお前の親父を責めても.....もう仕方がないんじゃないかって思っている。彼は本気で自殺しようとした」

「いや。アタシは絶対に許せない。人様に迷惑もかけた。死んでほしい」

「何処まで行っても仮にもアイツはお前の親父だ。それは言うな」


俺はそう諭す様にしながらモナを見る。

モナは拳を血が滲む程握りしめた。

そして俺を見てくる。

「なあ康太。.....アタシはどうしたら良いんだろうな」と涙目で聞いてきた。

その言葉に俺は考え込む。


「.....正直よく分からない。.....だけどお前の親父にするべき事は.....心療内科とか受けないといけないんじゃないか。そこら辺は分野じゃないから分からないけど」

「ふざけた野郎だ。とっとと死ねば良いのに」

「.....まあその気持ちも分からんでもないな」


そう言いながら俺はモナを見る。

モナは手のひらに滲んだ血を見ながら「忌々しい」と吐き捨てた。

そうしていると.....奥から警察官に連れられて.....大吾さんが出て来た。

俺達を見てくる。

だけどその顔は.....正常な様に見えなかった。


「親父。.....マジに死んでくれよ。最低だな」

「.....すまない。モナ」

「すまないって思うなら警察沙汰になるな!最低か!」

「俺だって生きるのが疲れたから死のうとした。.....だから.....」

「だから!?だから何だ!!!!!死ねよ!!!!!」


そう暴言を吐きながら居ると女性警察官が「落ち着いて」と声をかけてきた。

怒号は室内の全てに広がっていた様だった。

俺はその空気を感じながら止められるモナを見る。

すると大吾さんと一緒に居た警察官がこう話してくる。

「今回はこのまま家に帰そうと思います」という感じで、だ。


「.....ですが入院した方が良いかと思います」

「ですか」

「はい。.....僕の今までの経験上ですが」


警察官はそう言いながらモナを見る。

モナは「もうしらねぇよ!アンタなんか!」と号泣し始めた。

俺はその姿を見ながら大吾さんを見る。


すると大吾さんはその場で土下座した。

警察官が慌て始める。

モナもだ。


「何をしているんだ!」

「.....モナ。もう一回だけチャンスをくれ。.....俺は変わる。必ず変わるから。.....お前らの目の前から消える。.....そして頑張ってくるから」

「.....そんなの信じられるか?今まで何度も裏切られたのに!!!!!」

「だからこうして土下座している.....頼む」


そうしている親父に対してモナは「しらねぇ!マジに勝手にしろよ!!!!!」と大声で吐き捨ててからそのまま立ち去った。

それから俺はその姿を見ながら「なあ大吾さん」と声をかける。

大吾さんは小さく返事をした。


「アンタの娘さんは願っている。.....アンタが変わる事を。.....だからもう裏切る様な真似だけはするなよ」

「.....そうだね」

「.....」


そして警察官に諭されながら大吾さんは家に帰った。

というか俺とモナが送った。

それからの帰り道。

俺はモナを見る。


「大丈夫か」

「.....大丈夫だ。.....全く信頼できないカスに.....当てられただけだ」

「お前の親父さんは変わると思う。.....一回死んだんだよ。刺さなかったけどな」

「どうかな。アタシは絶対に信じられない」

「.....」


俺はそのモナの肩を抱いた。

それから俺の横に引き寄せる。

するとモナは「うう.....」という感じで泣き始める。

俺はその姿を見ながら「よしよし」と言う。


「.....何だってあんなのが.....親父なんだ.....アタシの」

「そうだな.....」

「アタシは康太みたいな親父が欲しかった」

「.....俺は親父に向いてない」

「.....そんなの分からないじゃないか。.....アタシはアンタは良いパパになると思っている」

「何言ってんだはえーよ」


そんな感じでツッコミやツッコミ合いをする。

それから俺達は電車に乗ってからモナを送り届けてから帰宅する。

正直言ってこれから先も危険は伴うだろう。

だけど。

そう思いながら俺は自宅に帰った。


そして翌日。

とんでもない事が起こった。

それは.....大吾さんが失踪したのだ。

夜逃げと思われるが.....荷物が何一つとして無くなっていた。

何が起こったのか分からなかったが。

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