第42話 自殺未遂

☆(夏川康太)サイド☆


何か知らないけど胸がザワザワする。

ザワザワっていうのは簡単に言えば(不安な心)だ。

俺は自室で考えながら居ると.....田中からメッセージが来た。

そこにはこう書かれている。


(糸魚川の事が心配だから警備を配属した)


と。

俺は目を丸くしながら(それで良いのか田中)とメッセージを飛ばす。

すると田中からは(これがせめてもの罪滅ぼしだから)と帰ってきた.....。

しかしそんな事をすればお金が。


(田中。お金がかかるだろ)

(私達はそれなりに反省している。だからこそこれだけやりたいの)

(.....しかし.....)

(気にしなくていい。私は何も思ってない)


そんな言葉を書いてきながら田中は(じゃあ)という感じで断りを入れてからスタンプを送り閉じた。

俺はその姿を見ながらほうっと息を吐き出した。

それから天井のシミを見る。


何だか.....シミが別物に見える。

心配なんだな俺は。

モナが。


「.....だけど何もできないな。これが限界.....ってやつか」


そんな言葉を発しながら俺は家事をする。

そうしていると今度はモナからメッセージが来た。

(康太。そっちは大丈夫か)と書かれている。

俺はその言葉に(死んでないしな。大丈夫だ)と答える。


(そうか。気を付けろよ。何かおかしいから)

(.....お前の家も気を付けろよ)


俺は食材が足りない事に気が付いて準備をしてから表に出る。

そしてスマホを見ながら歩く。

それから近所のスーパーに向かおうとした時。

目の前から男がATMから出て来た。

よく見ると手が震えているが.....コイツ。


「.....アンタ.....糸魚川の父親か」

「.....あ?.....あ、ああ.....」

「.....何をしているんだ?」

「し、知った事ではないだろう」


何を意味の分からない事を言っている。

そう考えながら俺は暫く見ていると糸魚川の親父は「悪い。急いでいるんで」と立ち去って行こうとする。

そんな背中に「アンタ娘の情報を売ったらしいな」と怒りを抑えたトーンで聞く。

するとビクッとしたその背中。


「それがどうしたんだ。金を貸してくれない奴らが悪いだろ」

「アンタ最低な事をしているって良い加減に気づいたらどうだ。.....ATMから出て来たのも.....借金の為だろう」

「.....もう遅いんだ」

「.....は?聞こえない」

「遅いんだ.....もう。.....情報を求めてやって来た不良達に売っちまったから」


俺はゾッとする。

それから糸魚川の親父に詰め寄る。

「それはどういう意味だ」と威嚇する様に聞いた。

すると糸魚川の親父は「情報を買いたい奴に売っちまった。.....3万円で」と答えながら俺を見る。


「.....アンタマジ最低だな。.....それでどんだけ苦しんでいると思っているんだ。もう抜け出せよそっから」

「俺はやり直すんだ。.....ギャンブルで一発当てて.....全てを返済.....」

「滑稽すぎるって.....!!!!!」


イライラしてきた。

この男はマジにクズだ。

赤の他人を孕ませた挙句.....金をこんなに無駄に使い.....。

もう立ち直れないだろ。

俺は考えながら糸魚川の親父を見つめる。


「.....アンタのせいで迷惑しているんだが」

「お、俺は知った事じゃない。俺のせいじゃない」

「アンタのせいだよ。3万円で情報を売った!?アンタ警察に捕まるぞ!」

「.....」


「そうかも知れないな」と悲しげに答える糸魚川の親父。

それから「だから俺はもう消えるつもりだ。娘にも言われたしな」と何を思ったかどっからか包丁を取り出した。

俺はビクッとしながら見ていると周りの人達が「アイツ包丁持ってる!」と叫び始めながら大騒ぎになる。


「.....死んで償うつもりだ」

「とことんクズだな.....。モナに対して申し訳ないとか思わないのか」

「思っているさ。.....だから死ぬんだ。でも死にきれなかった。電車から飛び降りようとしたし.....」

「.....」


「この場で死ぬんだ」と言いながら腹に突き立てようとする。

俺は「この野郎!!!!!良い加減にしろって!」と慌てて止めた。

それから包丁を弾き飛ばす。


そして俺は糸魚川の親父をねじ伏せた。

連れて逃げようとしたが少しタイミングが遅かった様だ。

警察が来てしまった。


「アンタか?この場所で包丁持っていた人って」


そうやって来た駐在所?の警察は言い始める。

それから糸魚川の親父は項垂れて「はい」と返事をした。

そして包丁を見てから自らを指差す糸魚川の親父。

そのまま.....親父さんは任意同行を求められてしまった。


「待てよ!モナになんて説明すれば良いんだよアンタ!」

「.....こうでもしない限り俺は.....クズのままだ。.....だからこれで良いんだ」


いや何が良いんだよ!?

言いながらパトカーに乗り込む糸魚川の親父。

それから警察は「君にも話を聞いて良いかい?」と聞いて来たので俺も警察署に向かい始めた。

そして警察署に入る。

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