第39話 将来
☆(田中萌葉)サイド☆
糸魚川モナが生徒会の書記にならないかと誘われている。
私はそんな糸魚川の姿を見ながら外を見る。
何というか。
私も生徒会だった端くれ。
仮にも生徒会長だった部分もある。
だから糸魚川の誘われた点に興味あるかと言われたら一応あるが.....だけど私はもう引退した人間だ。
関わりたくはない。
そう思っていたのだがマズイ事になった。
「田中。生徒会長ってのは.....良かったか」
「.....何でそれを私に聞くの」
「そりゃそうだろ。.....お前は生徒会役員だったんだから」
「私に聞いても答えようがない。.....高校は違うと思うし仕事内容が中学校と」
そんな会話をしながら私は矢住、康太、糸魚川とご飯を食べる。
4人で教室で、だ。
私は目線だけ動かしながら糸魚川を見る。
糸魚川は「やっぱり断ろうかな」と言っている。
「アタシには無理だ。.....田中がやってくれるよ」
「私もゴメン。.....もうやる気はない」
「そうか。.....まあそういう事もあるよな」
「そう。私なんかじゃ務まらない。迷惑をかけるばかりだし」
「.....」
私はそう呟きながら弁当を見る。
売店で買った弁当だが.....私の学校より美味しい気がする。
考えながら私は弁当を見る。
そして顔を上げてから糸魚川を見た。
「だけど人生経験にはなる。.....糸魚川。やった方が良いと思うけど」
と私は糸魚川に話す。
糸魚川は目を丸くしながら私を見てきた。
予想外の言葉だった様だ。
だけど私はそう思う。
思いながら「せっかく誘われているならやってみたら良い。アンタが後悔しない程度で」と話した。
「だけど」
「履歴書が白紙で何も書かず丸まったゴミになる。書かないよりかはマシになると思う。私は.....今までずっとそういう人生を歩んだから」
「田中.....?」
「.....」
(私みたいにならない様に)
流石にそれは過保護すぎるかと思い言葉に発しなかった。
そして糸魚川を見てからまた弁当に目線を向ける。
それから食べ始めた。
すると「変わったなお前」と声がした。
康太は苦笑いを浮かべる。
「まあ私は.....そういう経験し過ぎの人間だから」
「そうか」
「.....だから言える。.....将来で金を.....金儲けするなら履歴書の空欄は良くないって。.....特に糸魚川の場合は悪い事ばかりだろうから」
「.....」
私はそう言いながら糸魚川を見る。
「だけどこの人生はアンタのものだからどうするかはアンタが決めて」と私は言いながら弁当のケースを片付ける。
糸魚川は「そうだな」と言葉を発してからパンの粉の付いた手を叩く。
それから「そこまで言うなら私は生徒会に入る」と話した。
「.....!」
「ただしアンタのサポートを借りるぞ」
「.....勝手にすればいい」
「.....感謝する」
すると周りのクラスメイト達が「糸魚川は生徒会に入るのか?」という感じでザワザワし始める。
「それは良いかもね」ともあれば。
否定的な意見も聞かれる。
だけどその様子は(愛されているんだな)と思えた。
「アンタ愛されているのね」
「.....いや。そういうんじゃないけど」
「私から見ればそう受け止めれる。.....もっと頑張りなよ」
「.....田中.....」
そして私は立ち上がる。
それからゴミを片してからトイレに向かった。
そうしてからトイレから出て来ると康太が居た。
柱に寄りかかっており私を見るなり立ち上がった。
そして「ありがとうな」と言ってくる。
「.....何が」
「糸魚川の背中を押してくれて。お前はツンデレだな」
「私はツンデレじゃない。.....そして背中を押した覚えもない。私は経験を話してそれを実行しているだけ」
「.....良い加減に素直になれ。お前も」
「素直って何?私はいつも通りだけど」
「そうは思わないな。お前は猫被っている」
私は静かに康太を見据える。
すると康太は「お前も変わったな」と言いながら笑みを浮かべてから「教室に戻ろうぜ」と言ってくる。
私はその言葉に見開きながら目線を横に向けて「そうだね」とだけ返事をした。
それから私達は教室に戻ると.....如月が居た。
「.....あ。田中さんに康太くん」
「如月?」
「ありがとう。田中さん。モナさんの背中を押してくれて」
「.....私はそういう事をしたつもりはない」
そう。
私はそんな優しさ。
つまり優しいんじゃない。
情けでやっているだけだと思うし。
否定しながら私は席に腰掛ける。
それから4人を見た。
その中で如月はニヤニヤしながら「田中さん何かいい人になって素直になったね」と笑顔になりながら私を見る。
待て。何か勘違いしてないだろうか。
私は変なむず痒さを感じて盛大に溜息を吐く。
康太も「そうだな」と言いながら。
糸魚川も顎に手を添えて頬杖をつきながら「だな」と回答して私を見てくる。
矢住も強く頷いていた。
その様子を見ながら私は思い出した。
幼稚園時代のアイツの顔。
つまり愛花の顔を、だ。
愛花もこう言っていたのだ。
『確かに悪い側面もあるかもだけどでも田中ちゃんには田中ちゃんなりの優しい個性があるよ。この先も大丈夫だよ』
そんな優しげな笑顔の花の咲く様な言葉をだ。
個性.....か。
私は心底から溜息を吐きながら4人を見る。
そして少しだけ苦笑した。
変な感じがするもんだな.....。
むず痒いっていうか。
心底から呆れるっていうか。
そんなつもりでも無いのにだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます