第37話 生徒会書記の不在
アタシの家は本当に貧乏だった。
そして今もそれは続いている。
全てはアタシの親父のせいだが。
だがそんな親父は.....あれだけゴミクズになったのには理由がある。
アタシが生まれた時には既に親父はゴミクズだったが結婚した当初はそうでもなかったそうだ。
では何故あんなゴミクズになっちまったのか。
「今日はお昼ご飯.....大根の煮物作ったから」
「.....」
「まだ.....その。もう大吾の事は考えないで良いんだよ。モナちゃん」
「アタシは.....アイツが嫌いだ」
「.....そうね。私も嫌いだわ。今の.....大吾は」
母親はそう言いながら深刻な表情のアタシに向いてくる。
それから「今日貴方が平手打ちしたの。あれはあの人には強烈なパンチになったと思うわ」と言葉を発しながら湯気の上がる煮物を置く。
アタシは「何であんな野郎になっちまったのか」とアタシは呟く。
側で食べ始めるナナを見る。
「.....ナナにも暴力を振るうし。あんな野郎は.....やっぱり許せない」
「.....端的に言うとあの人は昔はあんなんじゃなかったからね.....それを見抜けなかった私が悪いわ」
「母さんは何も悪くないだろ。.....あれは病気のうちだと思う」
「その病気になる様な人間を見抜けなかったのは私よ」
そう言いながら深刻そうな顔をする母さん。
アタシはご飯の手が止まるナナを見て「やめよう。.....母さん。ナナも居るし」と言葉を発する。
そして笑みを浮かべる。
それからアタシはがっつく様に煮物を食べた。
☆
月曜日になった。
今の時期だが.....9月も半ばである。
アタシはその中で康太と付き合い始めて.....はや1週間。
「早いもんだな」と呟きながらアタシは歩き出す。
それから電車に乗ろうと改札に行った時。
「あ」
と声がした。
顔を上げると.....そこに田中が居た。
アタシはビックリしながら「お前こんな早い時間に出ているのか」と言葉を発する。
すると田中は「今日は日直だから」とボソッと答える。
アタシは「そうかよ」とそっけなく答えながら歩き出す。
それから椅子に腰掛けると田中が隣に腰掛けてきた。
「.....ねえ」
「あ?」
「.....アンタなんで私の存在を否定しないの。私はアンタに酷い事を言ったししてきたし.....もうメチャクチャだけど」
「.....まあ簡単だ。.....アタシはもう面倒ごとは.....というか。失いたくない感じがするんだ。今という時間を。だからその分の役立つピースが欠けるのが嫌なんだろうな」
「意味分からない。それで私を助けたと?.....そんなの.....」
「お前も康太の一つのピースだ。だから欠けてもらっちゃ困るんだよ」とアタシは足を組みながら目の前を見る。
すると田中は「意味が分からない人間だ。アンタは」と私を見てくる。
アタシは「これ以上何かを失うのはゴメンだからな」と答えながら電車を待つ。
そうしていると田中が「そう」と答えて立ち上がった。
それから「電車来るから」と去ろうとする。
「.....そうか」
とアタシは答えながら田中を見る。
すると田中は途中で足を止めて踵を返す様に振り返った。
それから「アンタには世話になった」と言葉を発する。
そして「私と父親は.....アンタの親父さんに対して申し訳ない事をしたって思っている」と言った。
「.....まあアタシの親父は元からクズだったから」
「そういう所。.....アンタの良い箇所は」
「.....アタシの良い箇所?.....そうかな」
「私は.....過去の事は精算できないって思う。だから精算できない分は今恩返しするしかない」
「アンタには多大な借りがある様なものだから。だから何とか協力できたらと思う」と言いながら田中は去った。
アタシは目をパチクリしながらその姿を見送る。
それから盛大に溜息を吐いた。
そしてアタシは立ち上がってからそのまま電車に乗る。
☆
「初めまして」
「.....誰だお前は」
学校に登校するといきなり生徒会と腕章のつけた女子に話しかけられた。
見ると凛とした感じの少女である。
身長がアタシと同じぐらい高い。
(何だコイツ?)と思いながら康太と見ていると。
「私は如月南乃花(きさらぎなのは)って言います。生徒会長です」
「.....ああ。その生徒会長様が何用だ」
「単刀直入に言います。.....生徒会に入りませんか」
「.....は?.....はい!?」
「何でそんな事になるんだ!!!!?」とアタシは絶句する。
すると如月という名の女は「生徒会書記の.....メンバーが空席で居ません。なので書記を貴方にやってもらいたくて」と切り出してくる。
何でだよ!!!!?
「それは何故だ?如月」
「あ。すいません。夏川康太さんですね。自己紹介がまだでした。.....初めまして」
「ああ。初めまして.....。何でモナが生徒会のメンバーに勧誘されているんだ?」
「素行の良しを知っています。.....なので、です」
「しかしそれだったら康太が適任だろ」
「いやいや。お前の方が適任だろ。.....な?モナ。俺は.....人前に立てる程勇敢じゃない」
嘘ばっかりだ。
アタシはその姿を見ながら「康太。助けてくれよ」と言葉を発するが。
康太は「でもお前。将来にめっちゃプラスになるぞこれ」と言ってくるばかりだ。
アタシは「うーぬ」と思いながら如月を見た。
それから言った。
「.....少しだけ考えさせてくれ」
という感じでだ。
なんかまあ恐らく学校のヒーローって事でもお呼ばれしたんだろうけど今はそんな気分じゃないんだよな。
そんな事を考えながらアタシは如月を見た。
アタシなんか受け入れてもらえないだろうしな。
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