第35話 輪廻転生
☆(糸魚川モナ)サイド☆
結論から言って話し合いの結果。
田中とは通信をする事を許された。
あのクソ女の件だがクソ女は納得はしてなかったが.....康太がアタシの母親の名前を出した時。
一瞬だけクソ女はアタシを見た気がした。
「.....今日はありがとう」
「.....俺達は昔話をしただけだ。.....全て.....運任せだった」
「やっぱり貴方は貴方らしい。康太」
「.....」
その言葉を聞きながらアタシはその場から先に去ろうとした。
するとその時だった。
「待ちなさい」と声がした。
背後を見ると田中がアタシを見ている。
「.....アンタにも感謝する」
「アタシは何もしてない。借金の文句を言いに来ただけだ」
「そう言っているけど。.....アンタは愛花と同じ様なツンデレだと思う」
「.....は?不気味な事を言うな」
アタシはそう言いながら眉を顰めてその場を立ち去る。
すると背後から「来てくれてありがとうなモナ。今日は」と声がした。
見ると康太がアタシを見ながら笑みを浮かべている。
その姿に「別に」と言いながら前を向くアタシ。
「.....康太こそこれで良かったのか」
「今はもう何もできない。.....全てはそれぞれの親が決める事だ。だから俺からは何も言えない」
「.....そうだな」
「お前の親と.....田中の親.....。すげぇ繋がりだな」
「アタシは色々と初めて知ったよ」
そんな事を言いながら歩く。
すると康太が「この後.....時間あるか?」と話してくる。
アタシは「ああ。別にあるけど.....どうしたんだ?」と聞く。
康太は「とある桜の木に案内したい」と言葉を発した。
「桜の木.....?」
「.....お前は樹木葬っていうのを知っているか?」
「樹木葬.....聞いた事はあるけど。誰が眠っているんだ」
「愛花に決まっているだろう」
その言葉を発しながら康太はアタシの手を握る。
アタシは「.....愛花の墓か?」と静かに聞く。
すると康太は頷いた。
それからアタシに向いてくる。
「お前も.....いや。お前だからこそ来てほしい」
「.....」
「大丈夫。.....お前は歓迎されるよ」
「愛花に酷い事を言ったかもしれないのにか?」
「お前だからこそ待っているんだ。愛花は」
アタシは思いっきり見開く。
それから涙を浮かべる。
それを隠す様に「そうか」とそっぽをむいて返事をした。
そうしてから「康太が行くなら」と返事をする。
「.....なら今から行くか。一緒に」
「.....そうだな。ちょうど外出用の服だしな」
「ああ。じゃあ行こう」
それからアタシ達はそのまま駅からお墓に向かう.....というか墓地に向かった。
電車で一駅。
そしてとある高台に向かう。
そうしてから見下ろすと.....大きな煌びやかな川が見えた。
「.....しかしこんな場所があるなんてな」
「ここは樹木葬だけの墓地だ。.....木しかないから普段は気が付かないだろうな」
「.....そうか」
そしてアタシはナンバープレートを見る。
桜の木のそれぞれにナンバーが打たれ釣り下がっていた。
アタシはそれを見ながら「どこに眠っているんだ」と聞いてみる。
すると「こっちの方だった。8番目の木だ」と答える。
「.....何で8番なんだ?」
「8番はアイツが好きな番号だったからだ」
「.....?」
「中国では.....8は縁起のいいものとされる」
「.....愛花らしいな」
そんな会話をしながらアタシ達は8番目の木に向かう。
するとそこに.....誰かが居た。
それは奏さんだった。
奏さんは人の気配を感じた様に様に振り返った。
「あ.....康太さん.....とモナさん」
「奏さん?.....どうしたんですか?」
「.....いえ。.....今日は会社が休みなので来てみたんです。.....色々ありますから」
「.....」
アタシは静かにその姿を見る。
すると奏さんは「その。康太さんとモナさんは.....輪廻転生を知っていますか」と言ってくる。
アタシは考えてから「それって仏教で言う蘇り.....というか今とは別の姿になってこの世にまた生まれてくる事ですよね?」と思い出す様に言う。
奏さんは「はい。御名答です」と笑顔になる。
「.....私の娘はあなた方の子供になって生まれてくるって信じています」
「へ!?い、いや!?」
「私は本気です。.....本気であなた方の子供になって生まれて来たら良いなって思っているんです。だって良い娘だったから」
「.....奏さん.....」
その言葉に奏さんは8番目の桜の木を撫でる。
それから「その。もし良かったら今度は田中萌葉さんも連れて来てください。.....連絡してもらった子です」と言葉を発した。
アタシは「!」と思いながら奏さんを見る。
すると奏さんは「私は.....彼女にも会ってみたいです」と笑みを浮かべた。
「しかしこの場所には田中は来ないかもですよ?呼んだとしても」
「そうですね。.....だけど私は信じてます。.....いつか来てくれる事を」
「.....」
「.....愛花もきっと.....会いたいでしょうし」
「やれやれ。優しいですね。奏さんは」
「そうだな。康太」
「私は優しいわけじゃないです。.....進行していた病魔も見抜けなかった。母親失格です」と俯いてから悲しげな顔をする奏さん。
アタシはその言葉に「そんな事はないです」と奏さんを見る。
奏さんと康太はアタシを見てくる。
「.....愛花は.....頑張ったって思います」
「.....優しいですね。モナさん。.....やはり貴方は見かけによらず」
「アタシが勇気を持てたのは全ては康太のお陰です。.....康太がアタシを助けたから。勇気を持てた」
「.....良いカップルですね。.....あなた方は」
奏さんはそう言いながらアタシを見てから康太を見る。
康太はアタシを見ながら笑みを浮かべた。
するといきなり風が吹いた。
それもメチャクチャ強い風であり。
予想外の風だった。
「.....!」
「.....ははは。.....愛花も返事していますね」
「.....そうですね。康太さん」
奏さんは髪の毛を押さえながら苦笑しながらも柔和な顔をする。
アタシは突風の様な風のせいで揺れた桜に下がっている8番目の桜の木の看板を.....葉っぱを見る。
そして奏さんと同じ様に髪の毛を押さえながら複雑な顔をする。
だけど直ぐに笑みを浮かべながらそれから暫くアタシは空を見上げていた。
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