第34話 (元)生徒会長

☆(夏川康太)サイド☆


アイツの.....田中萌葉の居場所が分かった。

翌日に俺達はその屋敷の前に立つ。

この場所がまさかアイツの家だったとはな。


場所はモナの家から1駅先。

そこの家だ。

夜が結構遅かったので翌日になってしまったのが.....不幸だ。


「.....だけど幸いにも今日は土曜日だな」

「そうだな。ひと暴れすっか」

「.....いや。暴れたらダメだろ」

「だけどめっちゃムカつくわ。.....アタシの親父を毒したしな」

「.....確かにそうだけどな」


そして俺達は呼び鈴を鳴らす。

すると『.....本当に来たの』と声がする。

それから屋敷のドアが開く。

そこに田中が立っていた。


「.....田中.....」

「.....康太。本当にありがたいけど帰ってくれる?.....私は居ても居なくても同じでしょ?」

「そういう問題じゃない。胸糞が悪いって言っている。その事とお前の恨みは別なんだよ」

「.....」


田中は眉を顰めながら俺とモナを見る。

モナも眉を顰めながら田中を見る。

そして田中は諦めた様に俺達に「入って」と促してきた。

俺達は驚きながら「良いのか」と聞く。

すると田中は「.....母親は居ないから。今日は」と話してくる。


「.....ブランドバッグを買い漁りに行ってる」

「とことんゴミクズだな。.....親父さんは」

「.....」


その言葉に田中は「.....居る」と答えた。

俺達は顔を見合わせて「それは大丈夫なのか」と聞いてみる。

「お父さんはお母さんよりかは話が通じる。.....会ってみたいそうだから」と言葉を発した。

汗をかく俺達。

だけどここまできたのなら引き返せないな。


「分かった。.....じゃあ会ってみるよ」

「.....そう。.....じゃあ入って」


そして田中に促されて部屋に入る。

シャンデリアがあったり皿の飾られている棚があったりした。

それから応接間と思われる場所に通される。

そうしてから目の前を見ると。

1人の男が居た。


「.....やあ」

「.....田中菊衛門(たなかきくえもん)さんですね」

「そうだな。.....久しぶりだね。夏川君」

「.....」


この人に会うのは.....久々だな。

愛花が死んで以来か。

思いながら俺は目線だけ動かして見ているとモナが「アンタが田中の親父か」と言葉を発した。

「そうだ」と答える菊衛門さん。


「.....君は例の女の子だね」

「そうだけど文句あっか?」

「.....無い。.....君は汚らしい子だとされていたがそんな事はないな。.....私の妻が申し訳ない」

「.....」


モナは警戒しながら菊衛門さんを見る。

俺はその姿を見ながら「菊衛門さん。.....簡単に言いますけど.....田中萌葉さんを解放してくれませんか」と聞いた。

すると菊衛門さんは「何故?」と言ってくる。


「.....取り敢えず座って」

「.....お構いなく」


俺達はそう言いながらも座る様に目線を動かされたので座るしかない。

そしてそれに応えながら「菊衛門さん。.....萌葉は苦しんでいます」と答える。

すると菊衛門さんは「そんな事はない。私の娘だ。鍛えてある」とぶっきらぼうな感じで回答した。

その言葉にモナは威嚇する様に見る。


「私の娘がそんなに軟弱だとは思わない」

「.....しかし貴方のやっている教育はもう教育じゃない。単なる脅威だ」

「それは連れ戻した事かね。これは仕方がないと思わないかね?.....成績を保つ為だ」

「分からんでもないですけど.....」

「私は萌葉には自由になってもらいたいのだよ」

「.....自由だ?アンタ達が変な事をしているんじゃないか!」


モナが堪らないという感じで言葉を発する。

「そもそもアンタが唆したか何か知らないけどアタシ達の家族にも危険が及んでいるんだからな」と言いながら菊衛門さんを見るモナ。

菊衛門さんは「その件については反省している。そもそもお金を貸したのは私の妻の知り合いだったからだったのもある。だが搾取するつもりではない」と答える。


「呆れてものも言えないなテメェよ!.....何で金なんか.....貨してしまったんだよ!アタシの親父はギャンブル依存だって知っているだろ!」

「その事は全く知らなかった。.....事業の為に貸したまでだ」

「.....」


歯軋りをして「クソッタレ」と言いながらモナは吐き捨てる様な態度をする。

俺はそんな姿を見つつ「菊衛門さん。.....取り敢えず借金の件と.....萌葉の件。全部.....もう少し色々と考えてくれませんか」と提案する。

そして頭を深々と下げる。

その様子を見ながら田中は「お父様」と言葉を発した。


「.....私、社会勉強がしたいです」

「.....社会勉強?」

「もう少しだけ自由にして良いですか」

「.....それはつまりあのマンションに戻るという事かね」

「そうですね」

「.....」


「そうだな」と返事をする菊衛門さん。

それから「考えてはみた。お前の友人達を見定め。.....借金の件を唆したのもある。.....もう少しだけでも自由でも良いかもしれない」と答える。

そして聞いていると「いやいや何良い雰囲気になっているの?冗談じゃないわ」と言葉が飛んできた。

見ると.....入り口に例のクソババアが立っていた。


「菊衛門。それじゃ何の為にこの子を連れ戻したか分からないわ」

「.....」

「.....汚らしいガキに手渡すつもり?」

「は?黙ってりゃテメェよ!!!!!」


激昂するモナ。

それから殴りかかろうとする。

俺はそれを必死に止めながら「落ち着け。モナ」と促す。

それを軽蔑の眼差しで見るその女に。

俺は「香奈さん」と言う。


「あら?自己紹介もしてないのに何で私の名前を知っているのかしら」

「実は貴方の事、全て聞きました。貴方のご友人の粉雪さんに」

「.....は?」

「.....貴方は昔。粉雪さんと友人だったそうですね?」

「.....」


香奈はジト目をしながら俺を見る。

それから盛大に溜息を吐いた。

そして「それが?」と睨む様な目をする。


俺は「それに貴方は昔は成績優秀で娘の通っている学校の元生徒会長だったそうですね」と言葉を発する。

田中は「え?」という感じで愕然とする。

香奈もイライラする感じだったが驚いていた。


「.....!?」

「.....親のせいですか。そこまで全てが歪んだのは」

「アイツ。余計な事を言いやがって」

「.....親のやった事は子に伝染するって言いますしね」

「私は何も関係ない。親の事はね。.....薄汚い野郎がよくそこまで知っているわね」


そして香奈は苛立つ様に俺を見る。

俺はその姿を見ながら「.....もう止めましょう。子供を縛るのは」と言葉を発した。「貴方が自らの経験で束縛しているでしょう」ともだ。

すると香奈は「.....」という感じで真顔で俺を見てくる。

そして鼻で生意気な感じに笑った。

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