第30話 大嫌いなアンタへ

☆(糸魚川モナ)サイド☆


アタシの家に借金取りが来た。

というのも親父が全て借りたものだろう。

あのクソ親父め。

絶対の殺してやりたい。

半殺しにしてやりたい気分だ。


だけどアタシには彼氏が居る。

大切な彼の為に裏切る事はできない。

思いながらアタシはどうするべきかを考える。

だけど具体的な対策は何も浮かばない。

正直に言って借金を返す事以外は。


「ゴメンね。私がこれ以上に働けたらまだ良いんだけど」

「.....母さんのせいじゃないよ。アタシがバイトのシフトを増やせば良いだけだ」

「それは止めなさい。彼の為にも学校を辞める事になるのは止めて」

「.....じゃあ正直言ってどうすれば良いんだ?」


アタシは実家に帰って来て母親と相談する。

すると母親は「今の所だけど母親の遺産が残っているから。.....それから400万円までは返せるわ」と切り出した。

だけどアタシは眉を顰める。

それは大切なお婆ちゃんの遺産だ。

という事は使う訳にはいかないしいずれにせよ.....。


「約束の日までに足りないよ。.....母さん。.....だったらやっぱりアタシが働くしかない。壊れるまで」

「.....」

「.....アタシは大丈夫だ。.....借金取りにお願いして待ってもらうから」

「.....私は愚かね。.....娘にもこんな事をしてもらうなんて.....」


言いながら咳き込む母親。

アタシは「大丈夫?母さん」と聞く。

すると母親は「大丈夫。死なないわ」と切り出した。

「いざとなったら貴方達だけでも遺産を持って逃げなさい」と言葉を発する。


「.....そんな馬鹿な真似出来るか」

「この家を売れば何とかなるでしょう。多分。.....貴方達の幸せの為よ」

「.....」


アタシは唇を噛む。

そうしていると.....電話がかかってきた。

その人物は非通知である。

アタシは「何だってんだこのタイミングで」と吐き捨ててから出る。

すると『この電話は.....糸魚川の電話ですか』と聞いてくる。

(誰だコイツ)と思った。

だけど次に察した。


「おい!!!!!大丈夫か?!田中!」

『黙って聞いて。.....ちょっと私も忙しいから』

「.....ああ」

『.....貴方の実家のポストに私の家のキーを入れてる。それを見て』


その言葉に驚きながらアタシは家から飛び出す。

それからポストを確認すると確かにカードキーの様なものが入っている。

何だこれは一体?


「田中。何でこんなものをウチの家に」

『.....アンタには世話になった。.....私はもう2度とあの家には戻れないから。だからその分アンタにプレゼントを置いていったから』

「.....どういうプレゼントだ」

『500万円置いてる。.....それを持ってから家を静かに離れて』


アタシは目をパチクリして「は!!!!?」と絶句した。

通行人がギョッとしてアタシを見るが。

そんな事を気にしている場合ではない気がする。

アタシは「何でそんな真似を!」と大声を発する。


『アンタには世話になったから。.....そして康太にも世話になった。康太にもプレゼントを置いているから。とにかくそれを持ってすぐに離れて』

「待て。そんな真似出来るか。お前の金だろうが?!」

『良いから静かに指示に従って。鬱陶しい』

「.....なら聞くが何でそこまでしてくれるんだ」

『私は貴方達に迷惑をかけてきた。.....そして貴方が.....言い辛いけど愛花とDNAが似ている事も知った。.....贈与税とかかかるとかいうけどそんなもの気にしないで今は受け取って。.....直ぐに私の家は捨てて。余計な真似をすると母親に察される』


アタシはその言葉に唇を強く噛む。

それから膝を曲げてから地面を見る。

「本当に良いのか」と聞くと。

「2度3度も言わない。私はアンタに世話になった。.....これでお別れだから」と言ってくる。

アタシは「待て田中!」と言うが田中は待たずに電源を切った様だ。

電話が繋がらなくなった。


「.....何なんだよクソッタレが」


そう思いながらアタシはカードキーを握っていたが。

ハッとしてカードキーを見る。

そこには住所の紙が貼られており.....パスコードも全て書かれていた。

顔認証は全て解除してあると書かれている。

アタシはその事に康太に知らせる。

すると康太も「一緒に行く」と話した。



マンションに着いた。

そしてジャージを着ているアタシと上着を着ている康太は見上げる。

それからマンションの17階。

田中萌葉の部屋に向かう。

そうしてから廊下を歩いているとずっと考え事をしていた様な康太が切り出した。


「.....お前にも連絡するとはな」

「.....何がしたいか分からん。アイツは」

「親に対して察される危険もあるのにな」

「それは確かにな。.....うん」


そしてアタシ達は部屋の前に立つ。

そこには田中萌葉としっかり書かれていた。

それからアタシ達はカードキーを使って中に入る。

全ての物品が整頓されている静まり返った部屋だった。


リビングに入ると.....札束が5つ。

つまり100万円の札束が積み上げて5個あった。

それからその横に手紙が2通。

そして更に横に何か知らないが綺麗な指輪が.....。


「何だこれは.....」

「.....?」


ダイヤモンドの様な綺麗なブランドものの指輪である。

アタシ達は顔を見合わせた。

それから短い文章で殴り書きの様な文字の手紙を読んでみるとこれまでの事が書かれておりそしてこれを置いた経緯が書かれており。

そして.....最後にこう書かれていた。


(これ置くんで好き勝手に使って)


とであるが。

アタシは歯を食いしばった。

それから「クソッタレ!」と叫ぶ。

康太も「.....はぁ」と溜息を盛大に吐いた。

忌々しい。


「ラストのラストにこんなクソみたいな真似をするなんてな」

「そうだな」

「.....お前は大丈夫か。モナ」

「.....ああ。まあ多少.....イラつくだけだ」


そしてアタシ達はそれらの物品を持ってからそのままマンションから離れた。

それから考えた。

(田中萌葉を.....何とかする事ができないか)と。

救出じゃないけど.....それなりに。

このまま黙っているのはアタシの性に合わない。

それにこんな事では全く嬉しくない!

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