第28話 娘への洗脳
☆(田中萌葉)サイド☆
余計な事に気がついてしまったな。
そう考えながら私は公園のベンチに糸魚川を座らせる。
それから私は飲み物を買いに行った。
すると糸魚川がやって来る。
「何を買うんだ」
そう笑みを浮かべて聞いてくる糸魚川。
私はそっけなく「別に。何でもいいでしょう」と言いながらコーヒーを買う。
糸魚川も同じ様なものを買った。
私はそれを見ながらベンチに戻った。
すると早速と糸魚川が聞いてくる。
「愛花とどういう関係だったんだ」
という感じでだ。
私は目線をずらしながら「友人だった。.....だけど喧嘩別れした」と話す。
糸魚川は「そうか」と返事をしながら缶コーヒーを開ける。
そんな糸魚川に「私を疑わないの」と聞く。
すると糸魚川は首を振った。
「それをしてどうなる。それにアタシは今のお前なら信頼しているしな」
「.....バッカじゃないの」
「馬鹿かもな。それは言える」
「.....くだらない。.....私を疑ってもらって構わない」
「そういう人間じゃないから。アタシは」
「そう」と返事をしながら私は公園で遊ぶ子供を見てから「私はアイツ。愛花とは正反対の荒れくれ者だった。だけど愛花は私すらも助けた。.....だから私も愛花と心を通じ合わせた。.....そしたら最後の最後に人形の貸し借りで喧嘩しちゃって。そして愛花は病気で転園した。私は.....何も言えなかった」と告白する。
すると糸魚川は「そうか。.....お前も大変だったな」と向いてくる。
私は「別に。.....そういう別れ方をしたから胸糞悪いってだけ」と言葉を発した。
「.....お前は愛花のその後を知っているか」
「別に。.....元気に暮らしているんじゃないの.....」
「亡くなったそうだ。.....康太によれば」
「.....え?」
私は唖然としながら糸魚川を見る。
それは.....知らなかった。
私の元に入って来た情報と違う。
糸魚川は「それで康太は荒れたのもあったんだけどな」と話す。
缶コーヒーを見ながらだ。
「.....そうだったんだ.....何故康太は話さなかった.....」
「康太なりの配慮じゃないのか」
「.....」
季節用の熱いコーヒーだったが。
痛みも感じない。
というか何故康太が話してくれなかったのか。
その事を.....知っていれば。
いや?何も変わらなかったか。
「.....康太はお前を本気で幸せにしようとした.....それを全て裏切ったのはお前だ。.....反省してくれ。キチンとな」
「.....」
「私はお前ならきっと回復するって思っているから」
「.....馬鹿じゃないの。そんな事はない.....」
そこまで話した時。
黒い車が目の前に停まる。
それから貴婦人が出て来る。
いや違うか。
私の母親がヒールでやって来た。
「あら。そちらは?」
「.....糸魚川モナさんです。.....知り合いの」
「そう。そんな薄汚い格好の知り合いが居たの?萌葉」
「.....あ?」
糸魚川が言葉に思いっきり母親に対して睨みを効かせる。
すると母親の周りに黒づくめの男が2名やって来る。
私はその様子を真顔で見ながら「何のご用ですか」と言う。
そうしていると母親は「成績を聞こうと思ったらこんな庶民の薄汚い場所に居たからビックリなのよ」と言葉を発する。
「.....」
「当然成績は良いのよね?萌葉」
「.....言われなくても1位をキープしています。.....それ以外に用件は?」
「口答えがなってないわね」
「.....いや。貴方に用事は今は無いですので.....」
「は?」と威圧してくる女。
ブランドモノのコートを翻しながら「誰のお陰で今の高貴な学園に入ったと思っているのかしら?貴方の様な頭の悪い凡人を入れるのは大変だったのよ?」と話す。
私は盛大に溜息を吐きながら頭を90度下げる。
それから「申し訳ありません。お母様」と言葉を発した。
「それで良いのよ。貴方は」
「.....」
そうしていると。
いきなり空き缶が高い音でグシャッと潰れる音がした。
それからぬらっという感じでゆっくり立ち上がる糸魚川。
私は「?」を浮かべる。
母親も真顔で薄汚い様な面で糸魚川を見た。
「オイ。さっきから聞いてりゃテメェ何様だ。アタシは良いが自分の娘に対して」
「はい?貴方誰です?」
「アタシは糸魚川モナだ。さっき聞いたろうが名前を」
「.....はあ.....覚えてないわね」
「.....あ?」
糸魚川はその態度にイラつきながら「つーか何でも良いけどお前母親だろ?何でそんな態度なんだ」と話す。
すると「知りませんよ。私たちの事に口を挟まないでくれます?」と母親は軽蔑の眼差しで糸魚川に言葉を発した。
「はぁ!?」と怒った糸魚川が詰め寄りその言葉に母親に掴みかかろうとする。
そうしているとボディガードの男達がそれを止めた。
「醜いですね。貴方の様なカスにこの神聖な体を触らせるとでも?」
「さっきから聞いてりゃ全てにおいてムカつくな!!!!!おい!田中!お前もコイツに何か言ってやれよ!何だよお前も立ち止まったままって!」
私はその言葉に糸魚川の手を払った。
それから糸魚川を睨む。
糸魚川は「は?」という感じで私を見る。
私はその様子を見ながら真顔で糸魚川を見据えた。
「糸魚川。.....アンタは何をしているの?」
「.....待て。「何をしている」ってのはどういう意味だ」
「.....」
「何でこの女の味方をするんだ!?」
「何で」と言われたら簡単だ。
私はお母様から生まれた(物品)だからだ。
今.....行動を見て自覚した。
だから私は正常な事をしている。
お母様は神様だ。
だから糸魚川程度にお母様を触れてほしくない。
思いながら私は糸魚川に怒る。
「汚い手で触らないで。お母様に」
「いや待て!?お前はそれで良いのかよ!?こんな変な女の言.....」
すると糸魚川の右手が思いっきり扇子で叩かれた。
それから腫れて出血する。
だが糸魚川はそんな事がありながらも厳しい目をしたまま私の母親を見る。
そして母親は「貴方こそ何様?本当に薄汚いわね」と吐き捨てる。
「さあ行きましょう。萌葉」
「はい。お母様」
私はお母様の背後を付いて行く。
その中で人目も憚らず糸魚川は「オイ待て!話は終わってねぇぞコラァ!!!!!」と絶叫する。
私はその言葉を聞きながらそのまま黒い車に乗る。
どうも今日はお父様の所に行くらしい。
覚悟しなければ。
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