第22話 ライバル

☆(糸魚川モナ)サイド☆


アタシが必死に看病したお陰か。

康太は予定よりも2日早く退院する事ができた。

嬉しくて舞い上がる気になる。


いけない。

こんなに喜んでいてはバカに思われる。

そう考えながら登校して来た康太を見る。


「ありがとうな。モナ」

「.....な、何がだよ」

「お前のお陰で予定よりも退院が早まった。お前が看病してくれたお陰だ」

「.....別に。お前に死なれちゃ困るだけだ」

「そうか」


アタシは嬉しくて心が踊る。

だけど(バカに思われてはならない)とそれも押し殺す。

何というはアタシは(アタシの性格を保たなければ)と思う。

このままアホ面をしていてはアタシでは無くなる。

そう考えていると外から女子の声がした。


「あの。.....糸魚川先輩は居ますか?」

「あ?」

「い、糸魚川先輩にサインが欲しくて」

「あ!?」


「何を言ってんだ!?」とアタシは絶句する。

康太は目を丸くしながらアタシを見てくる。

(何でサインなんか書かなくちゃいけない)と考えて否定をしようとした。

するとその前に矢住が動いた。


「良いよー。モナちゃんなら了承するから」

「え!?本当ですか!?や、やった!」

「馬鹿か矢住!お前は何を言っている!!!!?」


「サインなんか書いた事もねぇよ!!!!?」と大慌てになるアタシ。

っていうかまず最初に何故そんな事に。

アタシは1年棒?に聞く。

「何でアタシのサインなんか求めるんだ」とだ。

すると。


「今度、ミスコンに男勝りな女の方が出るって聞いて.....」

「そうそう!それで情報収集しています!」

「.....ありえねぇ.....」


そんな事を考えながらアタシは(収拾がつかないか)とそのままサインを書いた。

というか名前だけど。

そして女子達は興奮しながら帰って行った。

それからアタシは席に戻る。

すると康太がニヤニヤしていた。


「何だよお前」

「何でもねぇよ。.....ただ嬉しくてな」

「.....何が?」

「お前が人気になっていくのが」

「は.....?お前.....」


「お前以外に人気にならなくて良いっての.....」と呟く。

すると康太は「え?何か言ったか?」と言ってくる。

アタシは全力で否定した。

それから「何でもねぇ!!!!!」と怒る。


「変な野郎だな」

「うっせぇよ!」


そしてアタシは真っ赤になる。

それからアタシはホームルームになるのを待っていると。

また教室のドアが開いた。

そうしてから「糸魚川モナという方は居ますか?」とゆるふわウェーブな感じのお淑やかそうな女子が.....。

またアタシかよ!


「.....何だ。糸魚川はアタシだけど」

「宣戦布告に参りました」

「は?」

「私が勝ちます。今度のミスコン」

「.....い、いや。アタシはそんなにミスコンで勝負をしたい訳じゃないんだが」


「私の名前は八海って言います。八海七草(やつみななくさ)です」と言いながらメラメラ闘争心を燃やす八海。

いや。そんなにミスコンには興味はないんだが.....。

アタシは八海を見る。

「人の話を聞いているかお前?」と言いながらだ。

すると八海は「聞いてます。でもそれは余裕ぶっているだけですよね」と言う。


「そういうアレじゃない。.....お前は勘違いをしている」

「いいえ!!!!!貴方は八頭身で美少女です!!!!!だから.....見下しています!!!!!」

「.....」


(コイツぁ厄介な事になったな)と思いながらアタシは苦笑い。

すると丸メガネをかけた少女がアタシの背後から現れた.....いや?

矢住か.....何をしている。

アタシは唖然としながら「矢住?何をしている?」と聞く。

「私は今日からマネージャーだよ」と話した。


「.....は?」

「今度からモナちゃんに接する時は私を介してもらいましょう。ね?」

「.....ね?じゃない。.....お前な」

「良いじゃん良いじゃん。楽しい♪」

「楽しくねぇよ!!!!?」


教室が笑いに包まれる。

アタシは額に手を添えながら康太を見る。

康太は柔和な顔をして立っていた。

それから肩を竦める。

アタシはその姿を見つつ八海を見る。


「八海。すまないけど私はそんなにミスコンに興味があるんじゃない。その後に興味があるんだ」

「その後.....それはつまり告白大会ですか?」

「そうだな。それに興味がある」

「.....貴方には好きな人が居るって事ですね?」

「今は言えないけどな。.....ソイツに告白を改めてするんだ」


バレてしまったけど.....この気持ちを受け取ってほしい。

そんな事を思いながらアタシは康太を見る。

康太は赤面していたがそれを隠そうとしていた。

次に矢住を見る。

矢住はニヤァッとしている.....コイツ。


「.....糸魚川さん」

「な、何だ。八海」

「私は貴方と良い勝負ができるって思っています。.....だから負けません」

「.....まあそう思うならそう思ってくれ。アタシはそうは思えねーけど」


(もう好きにしてくれ)という思いで苦笑いを浮かべる。

すると康太が出て来た。

それから「八海。.....取り敢えずコイツのコンテストへのやる気をそれなりに引き出すから。.....君も頑張って」と話す。

八海は「.....はい」と頷きながら改めてアタシを見てくる。

そうしてからアタシは八海に握手を求められた。


「.....宜しくお願いします」

「.....ああ。分かった。宜しくな」


それから八海は帰って行った。

全くな.....今日は来客が多いな.....無駄に。

そんな事を考えながらアタシは溜息を吐いた。


そうしてから窓から外を見る。

(そうか.....。例え学校のミスコンであっても情熱を注いでいる奴も居るんだな)

外を見ているとそんな事を思えた気がした。

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