第21話 モナと愛花

☆(夏川康太)サイド☆


アイツ。

モナが俺にキスをしたのを知っている。

寝たと思っていたのだろうけど俺は知っている。

俺は(愛している)のサインをずっと受けているが。

だけど俺は付き合う気はない。


何故かというと.....俺はそんなに良い人間ではない部分もあるが怖いのだ。

全てをまた失う気がしてだ。

そもそも俺が荒れた原因は全て過去に出会った大切な人を失って絶望したからだ。

だから俺は.....情けない人間なのだ。

モナが精一杯、等身大に俺にアピールをしてくれている。


「.....だが」


俺はそんな事を呟きながら夜の空を見る。

そして目を閉じた。

すると.....また夢を見た。


それは幼いモナ?らしき女の子と亡くなった女子が遊んでいる姿。

幼稚園を見ている感じだ。

俺は2人のその後ろ姿を見ながら「何故こんな事になっている?」と呟く。

そして俺は2人を見る。


「ねえねえ!愛花ちゃん!」

「何?モナちゃん」

「私達いつまでも一緒だよね?」

「.....うん。そうだね」


モナの相手の女子の名前は愛花。

飯場愛花.....。

俺は涙を浮かべる。

すると愛花は「モナちゃん。.....私ね。.....実は病気が身体にあるの」と告白した。

それは.....何か真剣な顔でだ。


「.....愛花.....ちゃん?」

「.....私ね。遠くに引っ越すの。その治療の為に」

「.....え.....」

「ゴメンね.....」


悲しげな悲痛な顔をするモナ。

そこまで夢を見てから俺は目が覚める。

俺は寝ている間に涙を流していた。

そして朝日に照らされて目が覚めた様だ。

それから横を見るとドアがノックされている。


俺は「はい」と答えると.....田中が入って来た。

糸魚川も入って来る。

(え!?)と唖然としながら2人を見る。

どうなっているのだ。


「糸魚川。どうなっている!?.....何故田中が.....一緒に」

「コイツは花束を届けに来たんだ。まあ逃げたけどな。.....だから私が引っ捕まえた。.....それで監視下に置いて連れて来たんだ」

「.....ああ。そうなのか.....」

「.....」


田中は目を鋭くしながら俺を見てくる。

(相変わらずだなこの目は)と思いながら田中を睨む。

「何しに来たんだ」という感じでだ。

すると田中は「お見舞い。.....康太の」と田中は答える。


「.....そうか。.....お見舞いね」

「そう。糸魚川の監視なんかなくても私は何もしないつもりだけど。今日は」

「そう言ってもお前は信頼できない」

「そう」


それから俺は涙の跡を拭ってから「田中。反省はしたのか」と聞く。

その言葉には「私は反省もクソッタレもないけどね。だけど反省は一応はした。.....多少だけど」と応えてくる。

俺は厳しい目で田中を見据えた。

すると田中は「ねえ。康太。私は何が間違っているの?」と聞いてくる。


「間違っているならこれまでの行動の全てがお前の場合間違っている」

「.....私は反省しているって言ったよね。前に」

「反省してどうにかなる問題じゃない事をしでかしたしなお前」

「.....じゃあどうしたら反省できるの」

「それはお前がこれから行動を見直して修正する事から始まる。土下座して済む問題じゃない」


いいながら俺は田中を見る。

すると田中は「そう」と返事をしてからグシャグシャの花束を置いた。

それから「じゃあ用事があるから」と田中はこの場から去ろうとしながら踵を返す。

俺はその背中に「待て」と声をかける。

そして「だけど今日は感謝する。来てくれて」と言葉を投げた。


「.....康太の為だし」

「.....そうか。だけどどっちにせよお前が来てくれた事は一歩前進という事だよ」

「.....」


田中はその言葉に何の返事もせず去って行った。

俺はその姿を見送ってから「.....お前はどうするんだ?」と聞く。

するとモナは「アタシはこの場所に居るよ。暫くね。.....今日は土曜日だしな」と言ってくる。


「.....そうか」

「ああ。.....何か泣いていたのか?お前」

「.....ああ。昔の夢を見てな」

「そうか。聞いても良いか?どういう夢だ」

「.....ああ。愛花の事だよ」

「愛花.....飯場愛花か?」


「そうだ」と答える俺。

するとその言葉に何か複雑そうな顔をするモナ。

俺はその顔に「どうした」と聞いてみる。

モナは「実はな。母親に聞いた事なんだけど」と俺に真剣な顔をする。


「.....アタシの親父の子供らしい。.....愛花は」

「は?」

「つまりどっかでクソ親父が勝手に浮気して女を作って産まれた女児らしい」

「.....な.....じゃあ何であんなに.....」

「病院の治療費とかはその女性と母さんが稼いで出していたらしい。300万円ほど.....それも夜の仕事をしてな」

「.....まさか.....」


「だからアタシと愛花とその女性とは関連性があるんだ」と困惑するモナ。

(何で今それを知ったんだ?)と思いながら俺は顎に手を添える。

するとモナが「今何で知ったかって思っているだろ」と言ってくる。

それから「ふとした疑問だった」と呟いた。


「アタシと少しだけ顔が似ていたからな。お前の部屋のアルバムと。.....アタシが持っていた写真を見てから思った」

「.....信じられない.....」

「アタシだってビックリしたわ」

「.....」


俺は愕然としながら目の前のモナを見る。

モナは悲しげな顔をする。

「親父はどこまで行ってもクズだったって事もあるが。だけど知らなかったのも.....大概だよな」と皮肉めいた言葉を発した。

「母さんは話したくなかった様だ」とも言葉を紡ぎながらだ。


「.....」

「.....」


俺達は考える。

するとモナが俺の手を握ってくる。

「アタシがそんなんでも愛してくれるか?」と言ってくる。

俺は「そうだな」と答える。

「お前はお前自身だ」と言いながらモナを真っ直ぐに見る。


「.....お前は愛花の事も抱えないといけないかもしれないけど。.....俺はお前を大切な存在って思っているから」

「.....お前は本当に優しいよな.....康太」

「優しいっていうか当たり前の事をしているだけだ」

「それは才能だと思うぞ。アタシは」


そして笑顔になるモナ。

その顔を見ながら俺は笑みを浮かべた。

それから窓から外を見る。

(そうか。そんな事が本当にあるんだな)と思いながら、だ。

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