第20話 田中萌葉という人間

☆(田中萌葉)サイド☆


私は糸魚川に連絡をした。

アンタの妹が連れ去られているって。

偉いと思わないだろうか?


だけどやっぱり誰も褒めてくれない。

何故なのか。

そんな事を考えながら私は康太の入院している病院の前に立つ。


それから花束を持っていたが.....2人の姿。

糸魚川ともう一人の女。

誰か分からないけど病院から出て来たその姿を見てから花束を投げ捨てた。

そしてその場から離れて帰った。

私は何か間違っているのか?


「.....でも私は康太が欲しい。康太だけが生き甲斐だ。.....なら私は.....このまま諦めたりはしない」


そうだ。

諦めたりはしない。

私が原因で例え誘拐事件が起きたってそんなの関係ない。


だって私は康太が好きなのだから。

ただそれだけだ。

愛しいだけだ。

それだけであってそれ以上でもそれ以下でもない。


「.....絶対に諦めない。私は.....後悔させてやる。糸魚川に」


そんな事を呟いていると「誰に後悔させてやるって?」と言われた。

アタシは「ピャッ」と声を出す。

それからビクッとして背後を見ると糸魚川が立っていた。

静かに腰に手を当てて私を見ている。

さっきの女も(?)を浮かべて私を見ていた。


「.....なあ。もう止めようぜ。田中。こんなくだらない戦いを」

「笑いものだね。アンタ恨んでないの。私を」

「確かに恨むべき対象かもな。.....だけどアンタはギリで電話したろ。アタシに」

「.....それで恨んでないって?いやいやお花畑じゃないの?頭」

「お前もお前だ。それなりの人生を歩んでいるんだって思っている。.....だからもう止めようぜ。こんな戦い」

「私は別に止めない。アンタへの攻撃は」


「分からず屋だなお前」と糸魚川は見下す様に言ってくる。

私は「アンタが居なければ」と言いながら警戒する。

すると糸魚川は「.....呆れてものも言えない。.....お前がやっている事は身の破滅だよ。.....セックスに快楽を委ねたんだ」と話す。

ブチッと何かが切れる音がした。


「アンタみたいな泥棒猫に言われたくない!!!!!」

「お前は浮気して康太をゴミみたいに捨てただろうが!!!!!現に今は康太に近付く資格すらねぇんだよ!!!!!」

「.....!」

「.....お前は外道だ。.....だけどな。.....アタシの親みたいな完全なマジにイカれた外道じゃない。.....思考を直せ」

「.....」


「アンタなんかに何が分かるのか」と言いながら私は涙を浮かべる。

生まれた時からコンビニ弁当しか食べた事がない私なんかを分かる訳がない。

17年間、親の愛すらも受けなかった。

17年間、要らない子って言われ続けた。

そんな経験をしてない奴に.....。


「.....絶対にお前だけは許さない」

「仮にもお前を恨むのは癪だが。.....お前がもしまた変な感じで康太に近付くなら容赦はしない。張り倒す」

「.....」


すると「待って待って!」と声がした。

私は顔を上げて横を見た。

そこにさっきの女.....まあ誰か分からない奴が居た。

私は「何」と威嚇する様に聞くとその女は「初めましてかな。私、矢住。矢住望っていうの。貴方は.....もしかして田中萌葉さん?」と聞いてくる。


「何でそんなのに答えないといけないわけ。っていうか何で知っているの」

「貴方は有名だからね。.....夏川くんと親しいって話だから」

「.....はっ。別にどうでも良いけど。.....アンタ何なの。康太の」

「私はクラス委員だよ」

「.....ああ。そういう系?.....ちょっと黙っててくれる?」


「「黙っていてくれる?」と言われて私は黙らないよ」と言う矢住。

私はウザく感じながら「死んでくれる?アンタも糸魚川と同様に」と言う。

すると「田中テメェ!!!!!」と怒る糸魚川。

「何。死ねって事が悪い事なの?」と歪んだ笑みで挑発する。


「良くないね。.....死ねって言葉は。田中さん」

「は?」

「.....貴方はまだやり直せるよ。今の状況から。だから反省して生きて」

「.....いや。訳が分からない。キモいんだけど」

「私は貴方の気持ちにも寄り添いたい」


訳が分からないんだが。

(何だコイツ。気持ちが悪いな)とそんな事を思いながら怯む私。

すると糸魚川が「今だったらまだやり直せると思う。.....反省して生きろ。お前は」と私に向いてくる。

その言葉に「は!くだらない!」と吐き捨てた。


「.....私は私なりにやる。アンタ達なんかと同じにしないで」

「田中.....」

「田中さん.....」

「私はアンタだけは.....絶対に許さない。私から全て奪ったんだから」

「ああそうかい。なら勝手にしろよもう」


切り捨てる糸魚川を見る。

そして私は「じゃあ帰るから」と言った。

すると糸魚川が「待て」と言ってからさっき捨てた花束を見せる。

私はそれを見て「何」と聞いた。

糸魚川は花束を見る。


「これは捨てるな。届けろ。明日でも良いから。お前のせいで康太はああなったとも言えるんだから謝ってくれ」

「.....」


私は捨てた花束を奪い取る。

それから「一つだけ聞く」と私は2人を見た。

「アンタらマジに頭おかしいのか」と直に聞く。

すると矢住が「私達は頭がおかしいよ。.....多分ね」と答えた。


「.....ああそう」


そしてそのまま私は踵を返した。

それから花束を持ったまま帰宅をする。

メチャクチャにイライラする。

クソッタレが!

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