第18話 うふふ。母親は騙せないわよ?

アタシが家に帰って来ると母親が布団をかぶって寝ていた。

だけどアタシの気配にガバッと起き上がってからあたしを見てくる。

「お帰り」と言う母親。


その事に何か言い辛い感じがしたが「.....ただいま」という感じで反応を示した。

すると母親は「何か良い事があったのかしら?」と察した様にニコッとしてくる。

アタシはギクッとした。

そして慌てる。


「な、何もねぇよ」

「嘘ね。全く。母親は騙せないわよ。貴方の顔に書いてあるんだから」


その言葉にアタシは盛大に溜息を吐いた。

それからどかっという感じで床に座る。

そして母親を見る。


すると立ち上がって母親はこっちに来つつニコニコしながらアタシを見てきた。

その母親にアタシは聞いてみる。

赤くなりながら。


「.....なあ。母さん。アタシは人を好きになってい「良いわよ」」


話が無理やり途中でブツッという感じで切られた。

アタシは驚きながら母親を見る。

母親は手を合わせてから華やかな笑顔になってアタシを見た。

「そんな事を気にしていたの?」と言葉を発してくる。

「断然良いに決まっているわ」と言う感じでニコニコしながらだ。


「私は貴方には幸せになってほしいわ。.....あいつの様な奴は気にしないで」

「.....母さん.....」

「私は貴方が夏川くんと幸せになるなら何でもするわ。この命だって投げ打つわよ」

「.....待て!?い、いや!?何で康太が出るんだ!?」

「え?康太.....?」

「い、いや!?何でもない!!!!!」


アタシはボッと赤面しながら母さんを見る。

だが母さんはクスクスと笑った。

そして「夏川くんと名前で呼び合っているのね?」という感じで柔和な感じになりながら手を叩く。

アタシは真っ赤になった。

それから否定する。


「アタシはあくまでアイツとは.....」

「ん?」

「.....アイツは.....いや。.....もう隠さない。アタシはアイツが好きだ」

「.....そっか。大事にしなさい。あの子は.....絶対に逃しちゃダメよ」

「母さん.....」


「私は人生を間違えた気がするわ。.....だけど貴方は。大切な貴方は人生を間違わないでね」と母さんは言う。

「だけどアタシは」とそこまで行ってから涙が溢れる。

何故か分からないが涙が止まらなくなる。

すると母親はアタシを抱きしめた。

そばで話を聞いていたナナも。


「落ち着きなさい。.....大丈夫。貴方はもう大丈夫よ」

「.....」

「おねーちゃん。おにーさんが好きなんだね?.....じゃあ幸せにならないとね」

「.....」


アタシは涙を拭う。

それから手で顔を覆った。

そしてそのまま抱きしめられる。

幸せだった。

アタシは。


「貴方は確かに中学時代はミスを犯した。だけど今は反省して歩み出している。.....こんなに素晴らしい事はないわ」

「母さん.....」

「おねーちゃんは正解だけを歩んでいるから」

「.....ナナ」


アタシは布で涙を拭ってから立ち上がった。

それから2人を見た。

2人は笑顔でアタシを見ていた。

アタシはその姿を見ながら「頑張るから」と言う。

すると2人は「「うん」」と頷いてくれた。


「.....感謝する」

「.....大丈夫。貴方なら歩み出せる。.....もう鳥籠から羽ばたきなさい」

「うん。自由に生きる」

「.....寂しいけどね。その分.....私が手を伸ばさなくなるのが」


今度は母親が泣き始めた。

「貴方は立派になったわね。本当に」と言いながらだ。

「まるで幼かった貴方とは違う貴重な本当に大切な自慢の娘よ」とも言った。

恥ずかしくなるからな!!!!!


「恥ずかしいからやめてくれ。母さん」

「いや。貴方は自慢の娘よ。.....時折確かに暴走するけど。貴方の様な娘ならもう心配無用ね」

「.....母さん.....」

「康太さんを支えてあげて。そばで死ぬまでね」


母さんは言いながらアタシを見てくる。

アタシはその姿を見ながら「いや!死ぬまでって」とツッコミを入れる。

まだそんな関係になってない。

そして赤くなる私を撫でてくる母親。


「ところでそれはそうと病院で何をしていたの?こんな時間まで」

「.....へ!?い、いや。何もしてない!」

「.....怪しいわね?」

「怪しいね。おかーさん」

「べ、べ、別に!き、きすをし.....たわけじゃ.....にゃい!!!!!」

「ほう?康太さんにキスをしたって事ね?」


私はぐるぐると目を回す。

昔から隠し事が苦手だ。

だからこんな事に!!!!!

思いながら母親はクスッとする。


それから「それ以外はしてないわよね?」と聞いてくる。

アタシは「当たり前だ!!!!!」ともうこれ以上ないぐらいに赤くなる。

もう限界まで赤くなった気がする。


「(その時)が来るまではそんな事をしちゃダメよ」

「.....母さん.....ナナが居るから」

「そうね。でもナナにも言っておくわ。簡単に男に身体を寄せない様に」

「.....おかーさん?それって?」

「簡単に男の子の言いなりにならない様にって事よ。あはは」


そして母親はアタシ達を見てくる。

「まあそんな事にはならないと思うけどね」とも言いながらだ。

それからアタシ達を見てきた。


「でも自慢の娘だからそんな心配もしてないけどね」

「.....うん。母さん」

「はーい」


そしてアタシ達に教えながら母親は「じゃあご飯にでもしましょうか」と笑顔になってからアタシ達を見てくる。

アタシは「アタシが作るから」と言う。

すると「そう?じゃあまずはお赤飯を頼めるかしら?」と言葉.....オイ!!!!?


「母さん!!!!!」

「あれ?違うのかしら?」

「違う!!!!!キスしただけだ!!!!!」


(全く!!!!!)と思いながらアタシはふと思い出す。

それは.....過去の事を。

康太の大切な人を。

そんな経験をしているのに奪う様な真似をして良いのだろうか。

ふとそんな罪悪感を感じた。

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