第16話 「好き」

☆(夏川康太)サイド☆


モナ.....アイツはもう帰っただろうか。

そんな事を思いながら俺は家事をする。

それからぼーっとテレビを観ていると.....電話が入った。

それはモナからだが。

ん?


「もしもし?モナ?どう.....」

『康太.....。すまねぇけど.....本当にすまねぇけど力を貸してくれ』

「.....どうした!?」

『アタシの妹が連れ去られたかもしれねぇ。不良の一味に』

「.....何.....」


俺はゾッとする。

それから持っていた皿を投げ捨てる。

パリィンと割れる音がしたがそんな事を気にしている場合ではない。

どういう事だ!!!!!


「モナ。落ち着け。何がどうなっている」

『アイツが。田中が教えてくれた。.....だけど全ての原因はアイツだから何も言えねぇんだけど。.....どっちにせよ連れ去られた』

「.....電話は?!」

『繋がらない.....というか安否が分からない』


そして俺は上着を羽織ってから直ぐに外に出る。

するとモナが涙を流して息切れして目の前に居た。

「頼む。康太。助けてくれ」と言ってくる。


俺は頷きながら「当たり前だ。.....まず前提としてこれは警察には言っているのか」と話す。

モナは「もう相談した。あとは警察に任せて待機していてくれって言われたけど。そんな事を今大人しく従っている場合じゃない。もう殺されるかもしれねぇ。アタシは絶対に助けに行く」と答える。

その言葉に怯み考え込んでしまう。


「しかし.....バカの考える事だ。危険が伴うぞ多分」

「.....だけど一分一秒を争うかもしれねぇ」

「そうだな。.....分かった。取り敢えずなんとかしよう」

「ありがとう。康太.....場所はこの付近の廃屋だと思う」

「何で場所が分かるんだ?」


「この辺りで監禁出来る場所っつったらそういう所しかねぇからな」とモナは話す。

俺は顔を引き攣らせて汗をかきながら(何で知っているんだろうか)と思ったが(今はそんな事を考えている場合でもないか)と思って動き出す。

するとモナは俺の思考を読み取った様に「アタシは元不良だ。.....だからそういう場所は記憶しているんだ。色々あったしな」とクスッとしながら言葉を発した。


「康太。お前の力が絶対に要る」

「分かった。救出しに行くぞ」

「.....すまねぇな」

「.....良いから。行くぞ」


そして俺達は駆け出して2箇所の廃屋を潰していった。

それから3箇所目でビンゴした。

ちょうど.....不良の一味に囚われているナナちゃんが.....居た。

俺は静かな怒りが湧く。

殺したくなる殺意に満ちた怒りが。


「.....康太?」

「.....ああ。いや。何でもない」


いかん。

昔の事を思い出した。

俺が.....いや。


チンピラみたいな不良だった時代を。


誰にも話さない記憶。

これで.....モナに出会った記憶。

だけど今はそんな事はどうでも良い。


不良達に声をかける。

「おい。お前ら。何をしているんだ」という感じでだ。

すると不良達はニヤニヤしながら俺達を見た。

だが不良達はこんな言葉を発した。


「今回は実は糸魚川に用はねぇんだよ。多分こうなるって予測してな。用があるのはお前だ。夏川康太」

「.....へ?.....え?何で康太に」

「.....」

「お前どっかで見たと思ったら。あくまでこれは風の噂だけどよ。中学校時代に不良の番長していた奴だな?学校で」

「.....え?こ、康太が!?」


とんだところで嫌なものをバラされたな。

俺は静かに睨みを不良どもに効かせる。

「普通に筋トレしているヒヨッコがそんなに変に強い訳あるか?良い加減にしろ」と金属バットを取り出したリーダー格であろう元警官の野郎は言う。


「.....俺の過去なんてどうでもいい。俺はとある女の子に出会って変わったんだ。だからそんな過去なんてどうでもいい。精算しているって思っている」

「過去が簡単に精算できるって思ったら大間違いだぞ。お前」

「.....お前の様なカスに言われたら俺もおしまいだな」

「あー。そんな事を言って良いのか?今の状況分かる?お前」


そして不良が10人ぐらい影から出て来る。

それも量が増えている。

俺は汗をかいた。

それから周りを見渡す。


みんな角材を持っていたりする。

武器を持っていた。

そんな事よりも目の前のナナちゃん。

ナナちゃんは怯えている。


「モナ。ナナちゃんを救ったら逃げろ。今直ぐにな。今から俺はコイツらを倒すから」

「お前.....!そんな事できるか!お前の身が心配だ!」

「良いから大人しく従え。明らかに状況は異常だ。それに俺は死んでも良いんだ。お前とナナちゃんが助かればな」

「.....そっか」


不良達を見ながら俺を見るモナ。

それから「断る」と話した。

俺は「は?」と言いながら「オイコラ!何を言ってんだ!」と慌てた。

するとモナは「お前が死ぬぐらいならこの場でナナを助けて死んでやる」と笑みを浮かべる。


「お前は馬鹿か!」

「そういうお前もアホだろ大概!」

「.....ったく.....」


そして構えると.....不良達は角材とか意外に何かを取り出した。

それはスタンガンだ。

俺達は唇を噛む。

何だってそんなもんがある。


「死んでもらう2人とも。怪我負わせた分だけどな!!!!!」


それからスタンガンを振り翳してくる不良達。

俺は1、2、3という感じで倒していく。

するとそれを見ていた元警察の野郎もスタンガンを取り出してナナちゃんに押し当てようとした。

それを見てハッとした俺は戦うバランスを崩した。

スタンガン攻撃を喰らう。


「.....ぐ.....」

「康太!!!!!」

「はは。結局お前も人の野郎だな!夏川康太!」


そして俺は頭を角材で殴られた。

思いっきり殴られたせいで額から血が滲む。

視界が歪んで.....吐き気がする。

マズイ。


「.....」


(これは.....ヤバい)。

フラフラでそんな事を考えながら地面に跪く。

すると元警察の野郎とかが笑い始めた。

「ここまでか?」とかそんな事を呟く俺。

そして俺はモナを見る。


「モナ。逃げろ。今から何とかしてナナちゃんを先に助けるから」

「そんな事できるか!.....お前の事が.....」

「良いから。俺は良いから」

「嫌だ!」


モナは強く否定をする。

俺はそうしてから不良に立ち向かうモナに「おい!」と声をかける。

するとモナは「そんな事できるか。アタシはな.....お前が好きなんだ!だから残して行けるか!」と絶叫した。

それから不良に殴りかかる。

まさかの言葉に俺は目を丸くした。


「おいおい。惚気話かよこの状況で?死ねよ」


元警察の野郎はそう言いながら大笑いしながらスタンガンをまたナナちゃんに押し当てようとする。

奴との距離は3メートルぐらいか。

俺は直ぐに角材を手に取った。


それから思いっきりぶん投げる。

そしてその角材は計算した通り避けた奴の脳天にバキッと見事に直撃した。

何か体育の授業での投擲力はまだある様だな俺も。


「ぐあ!」


そして俺は怯んでいるソイツからスタンガンを取り上げてから思いっきり首筋に押し当てる。

それから元警察の野郎は痙攣して倒れた。

俺はその姿を見ながらゼエゼエ言いながらナナちゃんを救う。

ナナちゃんは号泣しながら俺に縋りついた。


「.....ゴメンな。遅くなった」

「良いんです.....でもその。おにーさん.....額から血が.....」


するとドシンと音がする。

解放した時にモナも倒したらしい。

そんなモナに駆け寄って行くナナちゃん。

涙を流しながらモナも目を真っ赤にしながらナナちゃんに駆け寄る。

俺はその姿を見ながらハッとしてモナに聞いた。


「お前.....俺を好きって言ったな?そういや」

「あ!?き、気のせいだろ!?」

「気のせいか?」

「そうだ!お前幻聴が聞こえるんじゃないのか!?」


そして慌てて真っ赤になって否定するモナの背後の入り口。

複数のパトカーがサイレンと共に停まってから救急車とか警察がやって来た。

俺は「良かった」と思いながら俺は盛大に溜息を吐く。

それから倒れている不良達を見た。

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